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ダンジョン辺境伯爵と公爵令嬢  作者: もやい
第一章
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第一話Cの7 戦列歩兵

【正面戦列歩兵右翼、第一歩兵旅団のミラ大佐】


 私の名はミラ・ワーグナー大佐である。


 第一歩兵旅団、重装剣士団の鉄薔薇:アイゼンシュティッグを指揮している。

 そして迫るゴブリン達。


『『『ウゲゲゲゲゲッ!』』』


 だが無慈悲に叩きのめす鉄薔薇。


『『『…………!』』』


 ──ザシュ! ドシュ! ブシュ!


『キキキー! だ、ダメだ! まるで歯が立たないキー!』


 怯むゴブリン。我等は確実に前線を押し上げる。ゴブリンは重量が無い。前線保持にはまるで向かないので押しやるのは容易い。すると後方で強烈な爆発音が聞こえてくる!


 ──ドッゴーン!


『『『──ッ!?』』』


「──怯むな!」


『『『──ッ!』』』


 後方の爆音に一瞬動揺する我が旅団を私は一喝し統制する。司令部の方を見れば耳を気にしているディンゴ様と、こちらに向かって無事をアピールするナウスス様。


 ──見るまでもない。


 あんな魔法を使えるのは鳩羽鼠のナウスス様ぐらいだ。そして想一郎様は先陣切って戦っておられる。重装した騎士達とはいえ、ゴブリン歩兵の集団にほぼ正面から突撃したのだから流石に疲労と損害はきついものがあるだろう。なので、我々がそれに取って代わらねばならない。


 ──だが焦ってはいけない。


 歩兵同士の戦闘は最後まで陣形と統制を保持した側が有利となる。


「敵は浮き足立っている! だが調子に乗るな! 隊列を維持し前進せよ!」


 ──ザッザッザッザッザッザ!


 一糸乱れぬ歩調は敵を一層恐慌の渦へ追い立てる!


『ウグググググゥ……! つ、強い!』


 敵は、苦し紛れに毒矢の雨を降らせてくるが、盾を持たずとも、隙間の無い黒鉄の鎧を装備する我が旅団はなんでもない。むしろ被害の殆んど無い様に、敵はより動揺するだけだ。


 ──カンカンカンカヒューンッ!


『『『ウ、ウゲゲゲ!?』』』


 ──だが何かある。


 ゴブリン一匹当りの戦力は人間のそれに及ばない。今までの歴史的戦闘を学べば、ゴブリンは数と奇襲勝負である。にもかかわらず正面の数が随分劣っている。両翼の奇襲は失敗しているようだ。と、言う事は……。


 ──間違いない。本体は正面の森奥に潜んでいる!


 そう、だからこその陣形維持なのだ! 敵は恐らく乱戦に疲労を待っているのだ!


「全体止まれ! 左翼が遅れている! この地点を保持するぞ!」


『『『──ッ』』』


 ──ザンッ!


 我が旅団は一糸乱れず停止する! 我が旅団は無駄な声を出さない!



【正面戦列歩兵左翼、第二歩兵旅団のジュリア・ナポリターノ大佐】


 おわわわわわぁ~! さっきの爆発は流石にびっくりした! ふぉ~……。私は額の汗を拭う。って、今度は矢の雨だぁぁぁ!


『──テストゥードー!』


『『『ハァウッ! ハァウッ!』』』


 ──ガシャガシャガシャ!


 百人隊長の勇ましい掛け声と共に整然と頭上に大きな長方形の盾が並ぶ! そして大量の矢が降ってくるが、耐え凌ぐ……。


 ──ガガガガガッ!


 私は百人隊長に首根っこ捕まれ盾の屋根で保護された!


「た、助かった……」


 “テストゥード”、別名“亀甲(きっこう)隊形”は盾を側面頭上と隙間無く並べる対飛び道具の隊形で、はたから見ると“亀の甲羅”に見えるのが由来らしい。


 ──因みに“だし汁”は取れない。


 そんな事より、弓矢から保護される私。情けない事に、私はこの旅団ではお飾りなのだ……。


『“トラットリア”、お怪我は?』

「あ~……大丈夫みたい!」

『お気をつけ下さい。貴方がいないと美味いパスタが食べれなくなるので……』

「う、うん……ありがとう」


 私はニコッと笑顔で返した。


『──隊形を解け! 前進する! 右翼から遅れを取ってるぞ!』


『『『ハァウッ!』』』


『──前進!』


 ──ザッザッザッザッザ!


 私はジュリア・ナポリターノ。


 私は元々父と共に軍隊の“飯炊き”士官に過ぎなかったの。父は引退して冒険者相手の店を出しているけれど、軍隊に残って愛想を振り撒きパスタを煮ていた私は、気づいたら大佐になっていた……。


 だから“トラットリア”、つまり“ラフな感じのイタ飯屋料理長”と言う意味のあだ名が付いている……。それもこれも責任感の強い優秀な百人隊長達のお陰かな……? 彼等は旅団を形成する六つの大隊をそれぞれ独立して指揮し、私の代わりに仕事をしてくれる……。


 私がここに居る意味とは?


 私は軍団兵の両肩を勝手に借りて背伸びをし、戦場を見渡す。最前列で飛び交うバター……。あ~なんて勿体無い。あんなんじゃ後で美味しくスタッフが頂けないじゃない。そもそもゴブリンの頭に乗っていたバターなんか食べたくも無いけど……。


 ──ピッピーッ!


 百人隊長の合図の笛が鳴る。


 長時間体制の職場なら交代制にしないと疲れちゃうよね? 戦場も同じかな。最前列の兵が疲れたらすぐ後ろの人と交代して最後尾で疲れを癒す。最前列の兵はそうして常にフレッシュな状態で戦えて、敵は腐っていく。


 ──鮮度って大事だよね?


 千生が言ってたけど「これってまるで“車掛(くるまがかり)りの陣”見たいだ」って。


 何のことか私にはわからないけども……!


「ミラの部隊は強いねぇ~!」

「ジュリアの軍団兵も中々である」

「そ~お?」

「ジュリアが第一なら私は第二だ!」

「あれ? 旅団の話? 反対じゃない?」

「──そしていずれ第三帝国をっ!」

「あっ! それはだめぇぇぇ!」

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