第一話Cの5 締出侍
【左翼迂回騎兵、第二騎兵連隊の姫園千生大佐】
私は姫園千生。東洋撫子江瑠左芙にして、はるばる東の最果て日出国大和より南蛮見聞中、鎖国令に故郷を締め出された、トホホな女侍にてござる。
我が第二騎兵連隊:締出侍は、そう言う境遇の者共が、慈悲深いダンジョン辺境伯爵の下に集まって出来た武士の隊にてござるのだ。それ故に、義を重んじ、恩義を返すべく戦場で奉公するに至る次第にて候……。
『姫ぇぇ! 左手の森から奇襲にござりますぅ!』
「なにっ!?」
私達に降りかかる雑な矢の雨! 森から打って出るは敵右翼のゴブリンウルフライダー! 私達は敵を包囲せしめんと敵陣右翼を大きく迂回していた。しかし、流石は奇襲好きのゴブリンよ! ディンゴ准将の言う通りであったか! だが、そんな射撃で私は倒せぬぞ! 毒なんぞ気合で何とかなるわっ!
「あやつ等を放置したら自軍本体が十字射撃に側面を突かれてしまう! 迎撃する!」
『御意に!』
私達はすぐさま左旋回しゴブリンアーチャー一団を、勢いを殺すことなく叩きのめす! 馬が巻き上げる土と同様、ゴブリンのバターも宙を舞った……!
『『『オビャァァ~!』』』
次いで追随してきたゴブリンウルフライダーと戦闘となる!
「やぁやぁ我こそは姫園千生! 我が“卓袱台切り”の錆としてくれるわ!」
私の愛する槍“卓袱台切り”を馬上でブンブン振り回し敵を威圧する!
『ウギョギョ~!? マズイ! あの槍は! 姫園千生だぁ~!』
この槍の名は、私が庭で鍛錬中、わけあって槍先に乗っかった“卓袱台”が、自重でスパッと割れた事に由来する! ──其れ程までにこやつは鋭い!
『──貴様が姫園千生かぁぁぁ! 相手に不足無し! いざ尋常に勝負!』
「ゴブリンにしては猛々しい! 名を名乗れ!」
『我の名は、ジョウワンニトウのマッスル! ゴブリンではない! オークだ!』
「なに!? 流れのオークか! 面白い! では、お相手仕る!」
『──推して参る!』
巨大な猪に跨るジョウワンニトウのマッスルは私へ突進を開始した! 私も負けじと手綱を握り、馬を走らせる! 迫る両者! 決して引かぬ両者! 私の卓袱台切りとマッスルの長刀らしき得物は交錯する!
──カッヒューン!
すれ違う両者! 私の兜が粉砕される!
──バゴーン!
「うぐっ!」
が──
『無、無念……』
──ドサッ。
ジョウワンニトウのマッスルは力を失って“落猪”した。
「流石はオークよ。兜が無ければ私がやられていた……」
『グゲゲゲゲ!? やはり奇襲するにはタイミングが早すぎたゲゲ~! 撤退~!』
──プオォォ! プォプオォォ!
鳴り響くゴブリンの角笛!
『姫ぇ! ゴブリン共めが撤退しておりますぞ! 追撃なさるか?』
「捨て置け! 冒険者共の稼ぎを取っといてやろう! 続け! 敵本体を攻撃するぞ!」
『御意!』
「者共! 紅森山家への義! 忘れでないぞ!」
『『『オォォー!』』』
『姫ぇ! なぜ東洋のエルフは”江瑠左芙”と書くのでありまするか?』
「おう! まずドワーフは”努倭右阜”と書く!」
『はぇ~当て字でござるか?』
「当て字だ! 因みに女子は撫子、男子は大和と付く!」
『なるほどぉ~! では、”江瑠左芙”の”左”は何ゆえでござりまするか?』
「東洋では”右”より”左”の方が格上だからな!」
『嗚呼ぁ~……左様にござりまするか……』
(エルフの傲慢さは世界共通にて候……)




