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雅に痺れたね(A Brocade Scene Program)  作者: 枕木悠
第二章 ドロップ
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第二章⑦

 錦景第二ビルの地下一階、ミリタリーショップ、中古レコードショップ、百円均一ショップの並びの先に、小さな画材屋がある。ミヤビと丈旗は安賀多と斑鳩とマクドナルドの前で別れ、二人でその画材屋に向かった。画材屋は縦に細長く、通路が一つしかなく、その両側に所狭しと画材が並べられている。奥にカウンタがあり、丸眼鏡に髭面の店の主人はパソコンに向かい、キーボードを叩いている。ミヤビはニシキに頼まれたものを探していた。ニシキが頼んだのはペンキを塗ったり、版画に使用するローラだった。巨大な壁に色を塗る計画でもあるのだろうか。

 ローラを購入し、店を出た。駐輪場に向かう。道中、ミヤビは静かだった。またキネマのことを考えているんだろうと思っていたら、どうやら違ったみたいだ。

「綺麗な二人だったね、」駐輪場に着いて、自転車を回収してから、ミヤビは口を開いた。「丈旗のお友達」

「ハルカとスズメのこと?」

 マクドナルドで偶然に会った二人はすぐに帰っていった。ハルカとは二言三言、言葉を交わした。この前会ったばかりだし、別段話すこともない。スズメとは話していない。スズメはずっと丈旗のことを睨んでいた。丈旗も攻撃的なスズメと会話をする気はなかった。未来にもスズメと会話をすることはないはずだ。二人ともお互いのことが嫌いならば人間関係は簡単だ。会話をしなければいいだけだ。お互いの存在を無視し続ければいい。簡単だ。そんなことより、と丈旗は迷っていた。二人よりもミヤビの方がずっと綺麗だと言うべきか、迷っていたのだ。二秒考えて、言おうと決めた。「二人よりもミヤビの方が、」

「仲良さそうだったよね?」ミヤビは丈旗の顔を覗きこんで言う。「あの二人と、仲良かったんでしょ?」

「仲がいい、というか、」丈旗は悩んだ。ミヤビがそんなことを聞く心境が分からない。分からないが、もしかしたら、と思う。もしかしたら嫉妬しているのだろうか。二人と仲がいいのが気になる、ということは、二人に嫉妬しているということだろうか。そうなると言葉には気を付けなくちゃいけない。「三年の時、二人とは同じクラスだった、ハルカとはそれなりに仲がいい関係だったと思う、スズメはきっと、俺のことが嫌いだ、悪いやつじゃないんだけど、俺が少し気に入らないことをしたみたいで、ああ、とにかく、二人とは付き合っていたとか、そういう関係ではなかった、いいか、ミヤビ、ハルカとスズメとは何もない、何もないんだ」

「へ、へぇ、」ミヤビは少し、丈旗から身を引き、苦笑しながら視線を丈旗から逸らした。「ふうん、そっか、そうなんだ」

 安心した、という雰囲気がミヤビから滲み出ていた。

 もしかしたら、本当に、嫉妬、していたのかもしれない。

 可愛いやつ。

 途端に彼女のことを抱きしめたい衝動に駆られる。

 丈旗はミヤビに近づき、告白は今だと思った。「ミヤビ、実は俺、」

 そのタイミングでするりとミヤビは丈旗から離れた。

 すでにミヤビは自転車の車輪を回転させていた。「じゃあ、また明日っ」

「お、おう、」丈旗はすでに遠いミヤビに手を振り、小さく言った。「じゃあな」

 タイミングが合わなかった、と少し後悔。

 しかし、と丈旗は夜空を見上げる。

 ミヤビとは着実に近づいている。

 ただ、後は、タイミングの問題だ。

 それだけだ。

 それだけ。


 

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