表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雅に痺れたね(A Brocade Scene Program)  作者: 枕木悠
第二章 ドロップ
16/47

第二章⑤

 美術室で絵を描くニシキに「画材を買いに行く」という嘘を付いて、丈旗とミヤビはその日の部活を休んだ。「あ、お遣いを頼まれてくれる?」

 ニシキのお遣いを引き受け、丈旗とミヤビと、それから安賀多と斑鳩はキネマについてのミーティングをするために錦景市駅の南の位置する錦景第二ビルの地下にあるマクドナルドに向かった。ミヤビの帰り道の途中であることと、ポテトが無料増量中だったからだ。ミヤビは意外と食いしん坊なところがあった。ミヤビの食いしん坊には中学の時のクラスメイトの森永に比べて極端さがなくて、可愛らしいと思える食いしん坊さ加減だった。食べるところを見るのが愉快なほど、可愛いらしい。だから丈旗は昼食の際、必ずお菓子を購買で購入して持っていくことにしていた。

 四人は錦景市駅前の立体駐輪場に自転車を止めて、錦景第二ビルの地下に位置するマクドナルドに向かった。店内は空いていた。いつも満席にはならず、どこかに程良い席が空いているのが、このマクドナルドの長所だ。そう教えてくれたのは確か、ハルカだったと思う。

 四人でまとめて注文した。安賀多が奥のテーブル席を確保し、笑顔で椅子を引き、ミヤビを座らせる。ミヤビはぎこちない笑顔で安賀多に言う。「別にこんなことしてくれなくてもいいんだけどな」

 丈旗はミヤビの隣に座り、テーブルの向かいのソファ側に安賀多と斑鳩が座った。

 ミヤビがクウォータ・パウンダを頬張る。男子三人はミヤビがクウォータ・パウンダを食べる様子を黙ってじっと観察していた。

 そんな三人に対してミヤビは不審な目をする。「……皆、食べないの?」

 そう言われて、同じタイミングで三人はハンバーガを食べ始めた。そんな三人に向かってミヤビは言う。「変なの?」

 それから沈黙が続いた。丈旗はそういうのは気にならない。ミヤビも気にしない質だ。斑鳩も同様だろう、ずっとニコニコしている。ただ安賀多だけがそわそわと落ち着かない感じだった。沈黙に恐れているのだろう。何かを話さなくてはいけないと考えているんだけれど、何も思い浮かばないという感じで、安賀多はハンバーガの包み紙をきちんと折り畳んでいた。

「それでキネマの話なんだけど、」クウォータ・パウンダの四分の三を食べたところでミヤビは口元をナプキンで拭い、キネマの話を始めた。「ジャンルはラブ・ストーリィって聞いたんだけれど」

「そうです、」安賀多はぱぁっと笑顔になった。「恋の物語を」

「話は出来てるの?」

「いえ、まだ、なんとなく構想はあるんですけど」

「私が考えてくるから、」ミヤビは言った。「その構想はひとまず忘れてくれる?」

「え?」安賀多の表情は困惑していた。「いや、そんな、悪いですよ」

「私が話を作りたいの、」ミヤビはコーラを飲み、視線を安賀多から話す。「そういう意味なんだけどな」

「ああ、それなら、もちろん、」安賀多は笑顔に戻る。「御崎さんが作る物語で、映画を作りましょう」

 ミヤビは安賀多にニッコリ微笑んだ。「ありがと」

「どんな話にするの?」斑鳩が前のめりになって聞く。

「自転車を漕ぎながら考えていたんだ、」ここまで自転車を漕いできたのだが、その道中、ミヤビは一言も喋らなかった。なるほど、あの真剣な目は物語を考えていたんだな。「考えると、意外と色々思い浮かぶものなんだよね、今は内緒、きちんとキーボードを叩いてまとめてから話すね」

「えー、気になるな」

「締め切りはあるの?」ミヤビは安賀多に聞く。

「五月十日までです、上期の予算をもらうためには、その日までにキネマを作って生徒会長に見てもらって感動してもらって、キネマ研究会を認めて頂かねばなりません」

「一ヶ月ないね、ちょっと忙しそう」

「すいません」安賀多は額を押さえて謝る。

「なんで謝る?」

「すいません」安賀多は嬉しそうに笑っている。

「なぁに、笑ってんの?」

「キャストはどうするんだ?」丈旗は口を開いた。「ミヤビと、他に誰が?」

「キャストは、そうだね、」ミヤビはそれぞれに目を向けて言う。「アンタたち」

「え、僕達?」斑鳩は髪を人差し指に絡ませる。

「それは一体、」安賀多は斑鳩を一瞥、ミヤビに聞く。「どういう話を考えていらっしゃるのでしょうか?」

「だからまだ、内緒だって、」ミヤビはストローを齧りながら楽しそうだ。「あ、丈旗も出てもらうからね」

「ミヤビの物語に俺が必要なら構わないけれど、」丈旗はミヤビがどんな物語を考えているのか、とても興味があった。それは全く想像出来ない一つのことだと思った。「演技には期待するなよ」

「カメラは誰か持ってる?」ミヤビは聞く。

「安心して下さい、」安賀多は本日一番、自信のある顔をした。「俺が持ってます、世界のキャノンです、安心安全のキャノンです」

 そのときだった。

「あれ、丈旗?」

 振り返ると、ハルカがいた。その隣にスズメ。それぞれ違う制服を着た二人がいた。「あ、やっぱり、偶然だね、そちらは、中央の友達?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ