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どうしてこうなっているのか…
「千尋はオレを頼らない」
「それは、年上だし…」
自分でもよく分からないけれど、ソファに座った宮…葵君の膝の上に抱っこされている私。
「年上っていっても2歳だけだろ」
「そうだけど…」
りんごを剥こうとしていたのに、葵君が剥いてくれてそれを二人で食べている。
「遅くなったら連絡を寄こせって言っても寄こさない」
「…」
「心配だから連絡しろ」
「ごめんなさい」
所謂、バックハグ。
イケメンのバックハグは心臓がいくらあっても足りない。
それくらいに私の心臓はさっきから煩いままなのに、葵君は私を抱きしめながら小言を言っている。
遅い時間に一人で歩くな。とか具合が悪いときはすぐに呼べ。とか…
クラブでお持ち帰りされそうになっていたことも叱られ、松田先輩の友人に嫌がらせをされていることもどうして何もしないのかと怒られた。
おまえはお人好しすぎる。そう言ってため息をついていた。
「冬休みが終わったら…バイトが無い日は図書館」
「え?」
図書館?
「千尋は大学の課題と資格の勉強。オレは受験勉強…それでいいだろ?」
「いいけど…」
「けど?」
何か文句があるのかと言いたそうな声で聞かれ、ぎゅうっと抱きしめられた。
葵君はさっきから私の肩に顎を置いているから、彼のサラサラな髪が首にかかって少しくすぐったい。
「どうしてかなって…」
「千尋…」
「なに?」
「鈍すぎ」
葵君はそう言うと私の顎に手をかけて自分の方へ向かせて、ジッと私の目を見た。
「葵君?」
「千尋は自分が年上だって言うけど、こういうところは年下だな」
馬鹿にしたように笑われて、ムッと見返すと綺麗な顔が近づいてきた。
伏せられた目が綺麗…見惚れていると唇が重なった。
「でも、千尋はそのままでいいよ」
不敵な笑みを浮かべた彼にちょっとだけ不安になったけれど、もう一度キスをされてその不安もどこかへ消えてしまった。
甘くてうっとりとするようなキスに酔っていると、体がグラリと揺れて自分の背中がソファの座面についた。
押し倒されたままキスをしていた葵君が唇を離すと、私を見降ろして私の頬を撫でた。
「…イロイロとオレが貰うから」
悪い笑みなのに綺麗で艶っぽくて年下とは思えない色気にクラクラと眩暈がしそうになった。
「千尋、覚悟しろ?」
「…」
何を覚悟するのか…
もっと反抗すれば良かったと後悔する事になるなんて、このときは思わなかった…
〜おわり〜
お付き合いいただきましてありがとうございました。




