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人類vs ;  作者: M.com
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プロローグ

 もし仮に、君が信じる世界が偽物なら。君は明日をどう生きるのだろうか。君を囲む周囲の世界は全てが偽物だとすれば、君は明日目覚めることができるのだろうか。


2018年 冬 

私は変だ、人とは違う。いや、単純になにか変な性格の持ち主だとか、そういうことではないと思う。あくまで私の主観的なものではあるが、私は普通だ。普通なのだが、それでも変なのだ。私は、私しか持ってないものがあるんだ。私はやはり変だ。

 私には聞こえるんだ“声(それ)”が…。

「またですか…」

そう呟くと、ドクターはカルテを机の上に投げ置いた。

「最近は日増しに強くなっている気がするんです、」

私は困った顔をしてドクターに思いを伝える。

「はぁ、困るんですよねーうちは相談室とかじゃないんですよ。病院なんですよ、びょ・う・い・ん」

「…。」

「とにかく、睡眠導入剤と耳鳴り用の薬出しますから、またしばらく様子をみてくださいよ」

「すいません」

軽くお辞儀をして診察室を出る、待合室のひとり座席にゆっくりと腰掛ける。受付の看護婦たちは怪訝そうな顔でこちらを見ている。

「また、あの子来たの?」

「何度もなんども大変ね、」

私は目を手のひらにある小さな画面に向けた。ポケットからイヤホンを取り出して自分の耳に付ける。素早く画面を操作すると私だけの世界が始まった。

思えば、私にだけ聞こえ続ける声(それ)は、幼少の頃からの付き合いだった。幼い頃に両親を事故で失ってから、私は里親を転々としていた。同じところに長くて一年か半年か、だいたいはすぐに別のところへと動いてしまう。周囲の目線は冷ややかなものだった、私には友達や家族など全く無縁の存在だった。まさに天涯孤独の身だ。冷たかったのはそれだけじゃない。親がいないことは私を周囲の人間に対して弱い人だと思わせるのに十分な要素だったらしい。ひどい暴力もいじめも受けた。そんな中、私には声(それ)が唯一の繋がりだった。私は声(それ)とともに生きて来た。声(それ)はいろいろなことを話していたが、決して助けてはくれなかった。声(それ)は一方通行なのだ、私の脳内にずっと話しかけては来るが、こちらからの話には全く反応を示すことはない。ある時、閉じ込められた倉庫の暗闇で何度も何度も話しかけたが、返答は一切なかった。そればかりか、翌日には何事もなかったようにまた話し出すだけだった。周りの人にとって、それは独り言のように感じたらしい。私に対するいじめの一つにも声(それ)が聞こえるというのがあるのだろう。おかげで散々だった。いつしか声(それ)に慣れた私は、もうなにも気にしないで生きようと決めた。

だが、高校に入ってから事態は急転した。私が借り上げ寮に帰宅する最中に、突然声(それ)が話した。

「と…な、り。へ…や、ひと、、んでる」

いつものように聞き流そうとしたが、寮に着いて階段を上がった時に異様な臭いが二階の踊り場を満たしていた。私の部屋は一番奥だったがその手前の部屋の扉が不自然なように開いていた。恐る恐る覗いた時、私は絶句した。

「し、しんでる?」

死因は窒息死だったとあとから警察が話してきた。隣の部屋に住む女性は何者かによって襲われたのだと。私も気をつけたほうがいいと念を押された。それからは声(それ)が予測するたびに、私の周囲に不幸が起こった。しかもその回数はどんどんとエスカレートしていった。事故や殺人、強盗、強姦、小さな窃盗に至るまで、あまりにも恐ろしくなった私は、どうにかしてもらうためにこうして病院に通っている。しかし声(それ)のことを話しても誰一人として信用しようとしてくれる人はいなかった。

「カエデさーん、カエデさーん!!」

パッと目を開くと目の前に看護婦の大きな体が、

「はっはい!」

「お会計ですよ」

「すいません、」

焦りながらも会計に向かう。薬と領収書を受け取り外に出た、12月の中頃になっていた街にはクリスマスムードが漂っていた。若干ではあるが雪が散らつく。

「帰ろう…」

人の流れに逆らいながら寮へと歩き始めていたがその矢先、声(それ)が話しはじめた。

「そ…、、ひ、…だ、ぃ…」

声(それ)に反応して思わず立ち止まる。後ろから痞えたスーツ姿の男性が、追い抜きざまにこちらを睨み付ける。

「すっすいません」

背中を小さく曲げて頭を下げると、すぐさまイヤホンの音量を上げる。

「おねがい!黙って、だまって」

「…ひ、、ぁ…り、そ、、げ」

イヤホンの音量はすでに鼓膜の限界にまで来ていた。いつもならごまかせるのだが、声(それ)の音はやまない。どうやら、声(それ)は私に左を見ろと要求している。

「…。」

落ち着きを取り戻し、深呼吸してからイヤホンを耳から外し、ゆっくりと左側を見上げる。

「…骨董品?」

普段通っているはずなのに、今まで一度も見たことないお店がそこに建っていた。店前のショーケースにはいろいろな壺や、茶器などが並ぶ。

「なんだ、どういうことだ」

違和感しかなかった、それまで何かの現象を予知して伝えていたことはあったが、声(それ)が私の行動を指示して来ることは今まで一度もなかったからだ。なにかこの店にあるのかもしれない。声(それ)の正体かヒントがあるのかもしれない。そう考えた私は店に入った。

「こ、こんにちは。」

店内は薄暗く、人気はまるでなかった。外からは見えなかったが、中には日本刀や甲冑、巻物や絵画、なんか教科書でしか見たことないような品々が広がる。少し奥まったところをのぞいた時、戸棚の中に薄く光る何かを見つけた。

「え、?なに」

光の方角へ近づくと、そこにはひとかけらの緑色に光る石があった。紛れもなくただの石だ。手にとると見た目の割にかなりズッシリとした重さがあった。光るのは反射などではなく、一定の間隔で光っていた。

「これ、不思議だな」

「…、そ、それ、が、こんかいの、ターゲット」

「…ん!?」

突然脳内に飛び込んだあまりに自然な人間の声に驚き、店内で転んでしまう。

「え?え!?」

「こんら、ん、してるけど。じか、…ぁいから、いしもっ、ぇすぐもどれ、りょうに!」

「…!?」

まったく状況の把握もつかめないまま、とりあえずレジらしきところにお札を何枚か置いて、石を持ち店を出た。さっきよりも雪の量は多くなっていたが、構うことなく走って寮に向かった。

息を切らして部屋に飛び込む。結局手に握った石は今だに光ったり光らなかったりを繰り返していた。寮に着くまでの間、声(それ)からの反応は一切なかった。

「お腹、すいた」

制服のままベットの上で寝転んだ私は、スマホの画面から流れる普段と変わらぬニュースを眺めていた。ふと先ほどの石が気になってしまう。テーブルの上に置き直した石は、同じリズムで点滅を繰り返す。

「まじでなんだろこれ」

よくよく眺めていると、光るたびに石の中に小さな文字列のような何か、亀裂のようにも見える不思議な構造をしていた。

「そう言えば、さっきこれがターゲットだとかなんとかって…」

頭の中に意識を集中させるが、相変わらず声(それ)からはなんの返答もない。さっきあれほどまではっきりと声(それ)の音が聞こえるようになったのはこの石のせいなのか、そもそもこの石はなんなのか、聞きたいことは山ほどあった。

『ドンッ』

玄関から突然ドアを叩く音が聞こえた。今更だが私にとってこんなのは日常だった。隔週一回はこういう宗教への勧誘をさせるため、一人だと不安にさせるような怖い体験をわざとする連中がいる。初めこそ驚いたが、今やもうどうでもいい。だが今回の件は訳が違った。

『ドンッドンッドンドンドン!!』

「…。」

まるで扉の向こうに数人いるかのように何度も扉を叩く。勧誘にしてはかなりやりすぎだ。しかも時計の針はすでに11時を過ぎていた。

「めんどくさいな」

一人呟くと、台所に置いてあった部活道具から木刀を取り出す。少し脅かしてもう二度とこなくさせてやる。そう意気込んで扉の前に立つ。

「…だ、め、、あけ…るな」

ドアノブに手をかけそうになった時、脳内に懐かしい声(それ)が聞こえて来た。

「だ、っしゅつしろ!、はや…く」

一瞬ためらったが、ドアからのノックオンは音立てるのをやめない。私自身も我慢の限界だった。だが声(それ)の忠告も気になるのは確かだった。私はドアにチェーンをかけて扉を開くことにした。ゆっくりと扉を開くと女性の顔がこちらを覗き込んで来た。

「こんばんは。塚川警察のものです。これ見えますか?」

女性は横腹あたりに警察手帳を広げていた。

「なんのご用でしょうか?」

私は恐る恐る話した。警察と話す時は悪いことをしていなくても緊張してしまうのが常だ。女性警官は答えた。

「少し、捜査のご協力を頂きたいのですが。」

「はい、あ、えっと…」

私が戸惑う様子で答えると、女性警官が続ける。

「とりあえず、この扉を開けてもらってもよろしいですか?」

「…。」

無言で頷き、一度扉を閉めようと手をかけた時だった。外から激しいプロペラ音と光が差し込んだ。部屋に映り込んだ影には、すでに6~7人と警察犬までもが私の家の玄関前に集結していることがすぐにわかった。それだけではない、その光が通り過ぎると今度は赤色灯の明かりが自分の寮や周辺建物を照らし出している。

「早く開けなさい」

女性警官の口調が激しくなる。私はとっさに今までの出来事を振り返っていた。だが怪しいと思う点は一つしかなかった。あの石だ。

「すぐ開けます」

私は扉を一度閉めると、そのまま下駄箱をなぎ倒して即席のバリケードを作った。木刀を構えて準備していると、玄関の扉から異様な音が聞こえ始めた。

「えっ、なに!?」

「…、逃げろ!!今すぐに‼︎早く‼︎」

脳内に響いたその声(それ)はまぎれもなく人間に近く、これまで聞いた中で最もよくはっきりと聞き取れることができた。だがそんなのはすでに遅かった。

『ズドンッ!』

激しい爆発音と爆風、加えて玄関から眩しいほどの閃光が当てられると、数人の人影が中に侵入して来たのがわかった。玄関ドアは衝撃で半分外れかかっている。私は爆風でリビングまで吹き飛ばされた。

「戦え‼︎それしかない‼︎脱出するときは石を忘れるなよ!」

声(それ)は私にむかってそう叫んだ。私はそれに応える形で、急いで木刀を握り構え直した。私は部屋全体をイメージし五感を集中させる。さながら試合前の空気に似ている。ゆっくり深呼吸すると、突入した警官たちの人数と場所に目星をつける。足音、肌をすり抜ける風、おそらく突入したのは5人と警察犬。

そして一番先に突撃して来るのは、

先ほどの閃光と煙幕で視界はほとんど見えていないが、部活動で鍛え上げた意識をさらに集中させる。強くなりたいと思ってやっていた部活だったが、まさかここで役に立つとは思わなかった。少し間合いを取るとすかさず大きく振り切る一撃。

『ズゴッ!』

「キャインッ、キャインッ!」

ビンゴだった。最初に入って来たのはやはり警察犬だった。部屋のクローゼットにぶつかったのか、大きく破れる音がして犬の鳴き声が聞こえる。そのまま次は後方へ綺麗に木刀を突き刺す。木刀自体に大きな負荷がかかり、何かが突き刺さったような重さを得た。剣先から何かうめき声が聞こえる。木刀を引き抜き今度は近くの足音のする方角へと大きく踏み込み、下から一撃。木刀の先から赤黒い液体が流れて来る。

「クソッ!援護だ、援護をよこせ!!」

「一旦引け、後続と変わるぞ!」

煙の奥、おそらく玄関の方角から声と数人が引き返すのが影から見える。

「はぁ、はぁ、」

息を切らしながら玄関を睨みつける、相変わらず外から差し込む眩しいほどの明かりに嫌気がする。

「今だ!逃げろ!!今しかない!」

声(それ)が私に叫んだ。私は周囲を見回す、まだ少し視界が安定していないが、財布とスマホ、木刀そして例のあの石をつかんだ。石は未だ点滅を繰り返す。

「脱出ルートを説明する!とにかくそこから逃げよう。まずはベランダへ出るんだ」

部屋の奥へと走り、窓ガラスを蹴り破って外に走り出る。

『バサッ!』

ベランダの手すりの上に黒い人影が現れた。先ほどの警官たちとは違ってかなり武装していたが、こちらの突然の出現に圧倒されているようだった。ベランダに置いてある小さな脚立を蹴り上がり、影の喉元に向かって両手を強くぶつける。

『ンッ!』

呼吸に詰まった一瞬を見逃さず、腰を掴んで体制を固定しそのまま地上1階まで落下する。

『ドンッ!!』

激しい衝撃と音がクッションになった隊員から伝わる。目の前に握られた短機関銃を奪い取ると近くのパトカーへ向かって走り出した。予想外の少女の行動に警官たちも慌てているのか、パトカーに向かう少女を誰一人止めることなくただ呆然と眺めている。私はただそれを好機とだけ認識していた。パトカーの運転席に飛び込むと声(それ)の通りに車を操縦した。人生初めての車の運転であったが、慣れると大したことはなかった。あれだけ騒ぎを起こしたのにも関わらず、大通りはとても静かだった。

「そのまま北へ向かうんだ、看板は“葉輝奈”を目印にしてくれ。」

それを最後にしばらく声(それ)は何も言ってこなかった。私は言われた通りに“葉輝奈“という地名を目指し北に進んだ。どれほど進んだのだろう、気がつけば車内にあった時計は2時を指していた。雪の壁の高さはどんどんと増えていき、対向車もなくなり、ついには乗ってたパトカーの燃料が切れ、運悪く凍った路面に飛び込み、雪山に突っ込んでしまった。

「…、私は、一体何を…」

凍りついた窓ガラスに反射する血だらけの顔を眺め一人呟く。このままここで死んでしまおうか、もう今更あの生活へ戻ることはできないし、そもそも戻りたくもないし、ここで終わりでいいか。虚ろな目を助手席にある短機関銃に向ける。あまりの冷たさに手に取ることが苦痛でしかなかった。

「もう、いいか」

銃のトリガー上部に描かれたマークを頼りに、おそらくこうではないかとセーフティーの解除を行う。機械関係は得意な方だった。ゆっくりと喉元に銃口を向ける、雪に埋れていく外を眺めながらゆっくりと引き金に手をかけた。

『カチッ』

「?」

もう一度引いてみるが、銃口から何も出てこない。何度も何度も引いてみるが結局動かなかった。

「作動不良かよ」

銃を助手席へ投げ捨てる、いよいよ死ぬことすら許されなくなったのか、本当にここは生き地獄だな。そんなことを思いながら、運転席に深く座り込む。外は暗く閉ざされていた、照らすのはわずかなヘッドライトの明かりのみ、それもバッテリーの電圧が安定していないのか、明かりの光量が不安定だ。

「おい!生きてるか!」

声(それ)だ。私は少しホッと安堵して皮肉混じりにそれに応える。

「今から死のうとしてるんだ、少し黙ってて」

「脱出の算段がついた。今から言う通りに動いてくれ」

「此の後に及んでまだそんなこと言うか、今度は誰殺すんだ。雪しか相手してくれねーぞ」

「そうかい?相手にしちゃ、人間なんかよりちょいと厄介だと思うけどね」

「んっ?」

向こうが自分の応答にきちんと答えていることがあまりに衝撃すぎて言葉が出なくなってしまった。

「え?私の声わかるの?」

「ん?ああ。ずっと聞いてたよ、やっとそっちの無線機が治ったんだね。いや、通信範囲に戻ったと言うべきか」

私にはよくわからなかったが、どうやら私も通信機というのをどこかに持っているらしい。

「とにかく、こっちに戻ってからだ。今はそこから出るんだ。脱出する。」

「わ、わかった」

「まず車から出るんだ、石を忘れないで」

声(それ)の言う通り、パトカーから外に出た。扉は凍ってしまったのでフロントガラスを木刀で突き破った。外から入り込んだ死ぬほど冷たい風と雪の粒、車内に落ちていた警官用のジャンパーを羽織ると、石とスマホ、財布だけつかんで出ようとした。

「ああ待った!ダッシュボード、車の助手席前にある扉を開いてみてくれ。きっと使えるはずだ」

「ん?」

タイミングをよく読んでほしいと若干不満を覚えるが、パトカーに戻ってダッシュボードを開く。中には拳銃が一丁と弾薬が入っていた。

「これを持っていけって?銃は壊れて使えないよ。さっきそうだったもん」

「いや、そいつはリボルバーだ。部品が少ないから動作不良も起きないはず。全体には傷が多く目立つけど、火薬の付着がほとんどない、おそらく今回まだ使われてないけど、きちんとメンテナンスされた往年選手だと思うよ。不安なら銃弾も少し持っていくといい。銃も弾薬もなるべく暖かいところに入れておくんだ。」

「わかったから、そんな細かいこといちいち言うな」

拳銃と弾薬を取り上げると、そのまま自分の胸元に差し込んだ。

「うぅぅ」

突然の冷たい金属の塊が襲来したことで体全体が冷えたように感じた。すこし気持ちが悪い。

「じゃあ、そのまま進もう。真正面を12時とした時計方向で、今7時の方向だ。」

「いや、わかりずらい」

頭で考えるのもめんどくさくなった私はとりあえず振り返って進んだ。声(それ)は何も言ってこないから多分正しかったのだろうと勝手に自己解釈して進んだ。パトカーのヘッドライトの明かりも届かなくなるほど歩くと、遠くから代わりに波の音が聞こえた。鼻先に着く潮の香り、間違いない海だ。

「そこだ。着いた」

暗闇で細かくは見えなかったが、海に面した岸壁に立っていた。

「いいかい?今から言うことを驚かずによく聞いてくれ」

「今更なんだ?こっちは寒いんだ早くしてくれ」

寒さで思考力を半分ほど失っていたが、それでも次の命令は信じられなかった。

「ここで、死んでくれ。」

「え…、」

全く理解できなかった。死んでくれって、今まで生かすために協力してくれてたんじゃ?それに今更ここで?パトカーの車内の方がもっと楽に逝けたのに。そんなことが思考力の低下した頭の中をかき回す。追い討ちを掛けるように声(それ)が加える。

「ただ死ぬだけじゃダメだ。できるだけ跡形もなく、石も一緒に死ぬんだ」

「へ?」

此の期に及んで死ぬことにインパクトでも求める気か?爆散しろと?え?ダイハードみたく?訳がわからず、混乱する脳内。

「ちょっとごめんよ、あーあー聞こえるか?」

「!?」

その時、声(それ)の音が変化した。女の人の優しい口調に変化したのがはっきりわかった。驚く暇もなく声(そいつ)は淡々とやり方を説明した。

「岸壁に向かって身を乗り出す形で、石は胸元に抱えて、拳銃は顎でなく口に咥えて脳幹を狙う。身分証とかそっちの世界でのあなたの情報はできるだけ廃棄して、手段は選ばない。大丈夫。あなたは死ぬけど本当のあなたが死ぬ訳じゃない。また会える。すぐに。だから今は信じて、お願い」

もはや信じると言う言葉が理解できなかったが、おとなしくそれに従うことにした。財布とスマホを拳銃で撃ち抜くとそれぞれ海に向かって投げ入れる、最後に胸元に石を当てて拳銃を口で咥えた。

「また後でね」

よくわからなかったが私は今から死ぬんだ。躊躇なんていらない。寒さと不安から逃れるために容しない。私は拳銃を握る手をゆっくりと引き金に当て、強く引き抜いた。

『パアァァン!!』

暗闇の海に少女の体が飲み込まれていった。


頑張ります。

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