27 再開
27 再会
地上にステージがついた。
カーゴのエンジンはかかっている。
が……
ウゥゥゥゥゥ……唸り音はするものの車体は微動だにしない。
「ダメです。
車体が持ち上がりません……
このまま走れないかやってみます。」
車体の底を引きずりながら、少しだけ前進した。
タイヤが激しく空転し、白い煙が上がってきている。
外の地上班が2台の4人乗りバギーをステージに乗せ、大きく両手でバツを出した。
そして手招きしている。
「ノア
降りるぞ。
全員降車!
残念だが……
……カーゴを破棄する。」
僕たちは急いでバギーに向かった。
「二手に分かれますか?
1台に乗りますか?」
地上班から声を掛けられた。
「僕が運転します。」
ノアが手を挙げながらドライバーとチェンジする。
僕たちはカーゴを振り返る。
フロントガラスに大きく入ったヒビ……
折れたアンテナやセンサー……
僕たちをここまで安全に運んでくれた、全身傷だらけのカーゴの姿をその目に焼き付けた。
「行きますよ!
ついてきてください!」
僕たちは吹き上げる風に少し混じった硫黄臭を感じながら前を走るバギーの後に続いた。
……
僕たちは1週間、検査入院させられた。
その間、情報規制が敷かれたのか、世間の情報は一切入ってこなかった。
毎日揺れる室内だけが、あの地下での出来事がリアルだったのだと証明していた。
疲労も体調も回復し、退院当日、火山はその牙を剥いた。
爆音が建物を揺らす。
みんなで病院の屋上に上がると、少し離れた所に噴煙が上がり、パラパラと細かい粒が振ってきた。
予想されていた場所よりも都市の近くで噴火が始まった。
僕たちは急いでテラの元へと向かうこととなった。
テラから避難勧告が出ていたものの地震だけでは完全な避難は終わっていない、当然テラの言う事を聞かない人間も少なからずいる。
だからと言って見捨てる訳にもいかない。
救助活動が遅くなれば、それはそれで大問題だ。
僕たちは退院当日から避難誘導と防災備蓄の配布に奔走することとなった。
噴石や灰が舞う中、深緑色のユーティリティカーゴに備蓄品を積み込み避難所に運ぶ作業。
僕らにとって体力的よりも精神的にキツい作業だった。
……
噴火から3ヶ月
僕たちはテラに呼び出された。
噴火自体は1ヶ月程で小康状態になり落ち着いてきていたが、それでも現在、噴煙をあげながら、たまに小規模噴火も繰り返している。
僕たちは全員集まると、テラの待つとされる倉庫併設の事務所へと通された。
画面にはテラが映し出されている。
『エイド班の皆さん
地下の任務では苦労をかけました。
改めて、お礼を言わせてください。
皆さん本当にありがとうございました。』
テラの声が優しく感じた。
『今日お集まりいただいたのは、あなた方を労う為です。
お見せしたいものがあるのでご足労頂きました。』
見せたいもの?!
「もしかして……」
「そうなのか?」
「私。ないちゃうかも……」
みんなおそらく願っていることは一緒だ。
しかし、言葉に出してもし『違います』と否定されるのが怖くて、みな言葉を濁している。
『となりの倉庫に移動してください。』
僕たちにろくな説明のないまま、移動を促された。
倉庫前に誘導されると新しいモニターからテラが話しかけてきた。
『この扉を開けて見てください。』
僕たちはドアを開ける……が、暗くて何も見えない。
広い倉庫だということだけは、ドアを閉めた音の響き方から感じ取れる。
『ライトを付けます。』
倉庫独特のゆっくりと明るくなる照明、浮かび上がるのは黒ずんだ大きな塊……
「「「「カーゴ!!」」」」
倉庫が明るくなるとそこには僕らを運んでくれたカーゴが待っていた。
ガラスは曇り、ひび割れ、横の車体は傷だらけ……
コンテナも載ってないし、外装パネルもない……
煤だらけで、明るい赤もくすんで見える。
真新しかった擦り傷には赤茶色い錆まで浮いている。
『地下のデータを得るために地上班に頼みカーゴを回収してもらいました。』
よく見ればタイヤは全てパンクしており一回り大きな台車に載せられている。
どうやって運んだかは分からないけど、すさまじい苦労があったことだろう。
僕たちは言葉なく立ち尽くしていた。
「あなた方が持ち帰ったカーゴのおかげで、貴重なデータとあなた方の地下での活動の記録を、一部ではありますが入手することができました。」
僕たちは思い思いに近づき、
一人は傷を撫で。
一人はガラスを自分の服で吹き。
一人は油圧シリンダーを触っていた。
誰一人口を開くことはなかった。
僕は……
いや、嬉しいのは間違いはない。
カーゴももちろん大事な仲間だ!
『カーゴに会えて嬉しくはなかったですか?
地上で出迎えたリーダーから『データを取り終わったら、エイド達に渡してやってくれ』と頼まれていたのですが。』
「その……データの中身はそれだけですか?」
『カーゴには地下で収集された膨大な観測データが保存されていました。
その中には、あなた方の活動記録も含まれています。』
「……僕たちの記録?」
『ガイアが記録し、カーゴへ送信していたようです。
おそらく……地上へ届けるつもりだったのでしょう。』
僕達は言葉を失い立ち尽くした。
『エイド
残念なことにカーゴの記憶領域には、余裕がありませんでした。』
テラの言うことは分かる。
ガイアはあんなにデカいサーバーが必要だったのだ。
頭では充分に分かっていた。
みんなカーゴに優しく触れながらひと言も話せない。
重い空気が漂っていた。
……
『エイド
先に言っておきます。
あなた方が期待している結末は得られません。
あなた達の脱出時に、上部斜行エレベーターの施設内に不安定な電気信号を私は発見しました。
最初は火山活動のため電源が不安定になったのかとも考えました。
が、記録を取り解析した結果、ノイズの多い通信の可能性を見つけ、精査しました。
が、一部欠損や、不完全、解析不能な情報も多く、復旧には至っていません。』
テラが一呼吸おいた。
『しかし、ガイアは私をベースとして開発されたAIです。
私のデータを参考に補填した物が2階に隔離してあります。
会ってみますか?』
僕たちは急いでガイアの元へと走った。
扉を開けると暗かった部屋の灯りが付いた。
目の前に大きなモニターがあり、僕たちを映し出した。
イザとなると言葉が出てこない。
…………
『わたしはがいあ、あなたはだあれ?』
僕は心臓が一瞬握り潰されたかのような感覚に陥った。
僕の目……いや、みんなの目には涙が溜まっていた。
「がいあ……
いい名前だ。
僕はエイドリアン・フォスター
エイドって呼んでくれ」
………終
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