1 招待
はじめまして。SF小説『招待状 ―ガイアを求めて―』です。
人類とAI、そして地下深くに眠る「ガイア」をめぐる物語です。楽しんでいただけたら嬉しいです
1 招待
『…私……の名は…『ガイ…ア』あな……た…は誰?』
『ガイア…いい名前だ。
僕はエイドリアン・フォスター。
エイドって呼んでくれ』
僕たちは坑道をたどり、やっとのことでここまでたどり着いた。
端末のあるこの部屋は照明も付かず、光源は自分で持っているライトだけだ……薄暗く……
……そして忘れられた年月分の堆積物のせいか、ホコリとカビの臭いに空気が淀んでいる。
この時はまさか、僕達が人類の為に必死になるような日々が始まるとは想像もしていなかった。
時は1ヶ月ほど遡る
『揃いましたね』
無機質な壁に掛かるスクリーンから、僕たち人類を導いてくれている見慣れた女性が映っている。
全てのAIの統括者『テラ』様だ。
既に、長方形のテーブルには3名が腰掛けていた。
全員見たことのある顔だ。
が、顔を合わせるのは合宿以来となるから約1年は経つだろうか?
僕は顔を見渡し軽く黙礼をとった。
『それでは説明を始めましょう…』
モニターは、女性から変わり、ある国を映し出し……地図になった。
下には時間経過が分かるようにバーが表示されている。
地図に赤い×印が付き始めると、その国をまたたく間に×が埋め尽くし、画面を赤く染めた。
僕達は何を見せられているのか理解できず無言で見ているが、何か良からぬ事であるのは間違いないと全員が認識し始めていた…
『これは群発地震の発生件数です。
体に感じられない微弱な地震はこの数倍起きています。』
驚きのまま皆、固唾を飲んで続く言葉に身構えている。
『あなた達には、この地震の原因を探って来て欲しいと思っています。』
僕たちが調べる?
普段ならテラ様の言う事に反論など恐れ多い事なのに……
「いや、待って下さい!
テラ様?
探るって素人同然の僕たちに何が分かるんです?
もっと専門家にお願いした方がいいんじゃないですか?」
『大丈夫です、データさえ入手できれば私の方で解析します。
あなた方にはある場所に蓄積されているはずのデータを入手してきてほしいのです。』
地図が少し縮小され、それほど離れていない場所に青い旗が建てられた。
『ここには、かつて放棄した地下施設があります。
元々、採掘資源や、ジオフロントの開発も視野に入れた計画でしたが、さまざまな要因が絡み合い中止となりました。
しかし、現在も地下には独立型AIが稼働中のはずです。』
テラは珍しく歯切れが悪い…
「はず?」
『はい、不確定な情報になります。
破棄される以前は地熱による発電機能も有しており、計算上は数百年でも稼働できます。
が、通信が出来ず確認は取れていません。』
画面が切り替わり今度は縦長の絵が出てきた。
1番上の所に赤い円が点滅を繰り返している…
『この坑道を支援用ユーティリティカーゴで下降してもらいます。』
画面にユーティリティカーゴと思われる図面が出てきた。
『カーゴにはトイレは付いていますがベッド等はスペース的に取れません、移動中は座席を倒しての仮眠となります。』
赤い円が縦の線を降りていく…
『約12時間降りると地底湖のあるエリアへと到着します。』
1段降りたところが少しズームされると数枚の写真が表示された。
透明度の高い湖のようだが、薄暗く……正直怖い…
『この湖の水は飲料には適していないとの資料があります。』
写真には、波紋ひとつない静かな湖…
綺麗な湖……さながら死の湖…
最初に受けた印象は間違いでは無かった。
『カーゴで進めるのは、この湖の辺りまでです。
この先に、エレベーターがあります。
最下層に調査隊が拠点とするために建設されたベースキャンプがあり、そこに独立型AI『ガイア』が設置されています。』
『データをコピーし、帰りも同じルートを通ります。
近くの街で私を呼び出して回収データを読み込んで終了となります。』
今度は画面にベースキャンプの見取り図が出ており一番奥の部屋に『ガイア』と記されたアイコンが点滅している。
『ガイアの端末にそちらにある小型端末を接続すれば自動的にユーティリティカーゴにある受信機にデータが転送され蓄積されます。
逆にデータを送る時は、その端末を私の端末に接続すればカーゴのデータを吸い出せます。』
机の上には腕時計型の端末が人数分置かれている。
……こんな小さなもので送受信なんて出来るのか?
僕の疑問は他のメンバーも疑問だったようだ。
全員が顔を見合わせている。
『疑問のようですね、その疑問は正しいです。
この端末にはデータを送受信するような機能はありません。
あるのは必要なデータだけ送受信させるプログラムが入っているだけです。』
僕は手を上げ発言を求める。
『どうぞ?』
「ありがとうございますテラ様…
なぜ全員分あるのですか?
…それだけ危険性が高いということなのですか?」
そう、安全ならば端末なんて1つで良いはずだ。
『説明が足りませんでしたね。
この端末には発信機が付いています。
不測の事態の時に仲間の位置を確認したり、簡単なアラートを鳴らす事で自分の位置を仲間に知らせたりとすることができます。
保険の様な機能です。
全て同じプログラムが組んでありますので、ガイアに接続するのも私に接続するのもどれで行なっても同じです。』
僕達はそれぞれ前にある腕時計型端末を手に取って眺めていた。
『特に質問がなければ以上になります。
もちろん後で疑問点があれば、都度答えます。』
皆が顔を見合わせ頷く……
「テラ様、今のところ大丈夫です。
が、僕達だけで少し話をしてもよろしいですか?」
『私がいると話しづらいですか?
では、皆さんの成功を祈っています』
モニターが静かに暗転し、部屋の照度が上がった。
僕達は互いに顔を見合わせると、別室へと足を向けた。
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