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死んでも終わらない


「そちらの過去はどうなんですか?」


幽界の片隅で、ランが何気なく聞いた。


「人間だった頃の話とか」


「大したことないよ」


彼は肩をすくめる。


「不死身って噂のある巫女と仲が良かった。

 それを面白く思わない貴族のボンボンに殺された。それだけだよ」


「……悲しいですね」


「だから大したことないって言ったろ?」


そのときだった。


白い着物の女が、ふらつくように姿を現した。

足を引きずり、焦点の合わない目をしている。


「ここに尖兵とは、珍しいね」


「噂をすれば、だな」


女が、ゆっくりと口を開いた。


「……お久しぶりですね」


彼は目を細める。


「まともに喋るとは、さらに珍しい」


「……アンジュさん」


「名前、覚えていてくれたのですね」


一拍、間が空く。


「……意識が戻ったんですか?」


「たまたまだと思います」


杏寿――アンジュは、彼の顔をじっと見つめた。


「あなたを殺せという声が、止まらないのです。

 ……私の魂は、ずいぶん手を入れられていますね」


アンジュは、空を仰ぐ。


「あなた、天界で何をしたんですか?」


「そこの悪魔に煽られて、ちょっと殴り込みを」


「僕のせいみたいに言わないでくださいよ」


「ノリノリで殲滅してただろ」


「天帝にとどめを刺したのは、あなたでしょう」


「とにかく」


アンジュが、銃を空に向けて発砲した。


浮遊していた餓鬼が、音もなく弾け飛ぶ。


アンジュは、そのまま彼に詰め寄った。


「……あなたのせい、ですよね?」


「半分くらいは」


「あなたのせいですね」


「……はい」


「何か、言うことは?」


「ごめんなさい」


しばらく、沈黙が落ちた。


やがてアンジュが、静かに言う。


「……そろそろです。

 わたしを、斬りなさい」


「え」


「いつまで意識が続くか、分かりません。

 あなたが始めたことです。けじめをつけなさい」


「でも――」


「早く」


彼は、迷った末に剣を振るった。


アンジュは、微笑んでいた。


「……これで、よいのです。

 最期に、あなたに会えて……よかった」


その身体は、静かに消えていった。




「……おい」


彼は、背後に向かって声をかけた。


「いるんだろ。出てこい」


「やっぱり、バレてましたか」


現れたのは、赤紫の装束をまとった女だった。

侍に化け、彼を撃ち殺した――あのアンジュ。


「彼女は? ぱっと見、アンジュさんに見えますが」


ランが尋ねる。


「アンジュさんだよ。

 俺の刀は魂そのものは斬れない。でも、細工されてるところはべつだ。

 きっと彼女は、俺が斬ったことで天界の洗脳から解放されて――」


アンジュが、彼に向けて発砲した。


すんでのところで、彼は身をかわす。


「……じゃあ、今のは?」


「あれえ?」


「というか、さっき殺されたんだよね? 彼女に」


アンジュは、恍惚とした表情で口を開いた。


「不死身って、暇じゃないですか」


ゆっくりと距離を詰めてくる。


「あなたと、殺し殺されるのも悪くないかなって」


「……はあ?」


彼は、即座に背を向けて走り出した。


「あはは、まてまてー」


バン。

バン。


「これも愛の形なんですかね?」


「多分ね」


「ふざけんな! 俺の憧れのアンジュさんを返せ!」


「私がアンジュです!」


「絶対認めねえ!」


「ひどい!」


幽界に、彼の叫びと乾いた銃声が響いた。

――自業自得である。

どうやら、この追いかけっこは終わらないらしい。


一旦ここまでになります。

また思いついたら随時追加予定です。

お読みいただきありがとうございました!

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