宇宙人を助けた結果 レプティリアンの場合
幽界はいつも静かだ。青年はそこで寝転がっていた。
やることも、やる気も、特になかった。
金属が焦げるような匂いが漂ってきたのは、そんなときだった。
――ドンッ。
「うわ、なんだ」
顔だけ上げると、円盤型の機体が地面に半分めり込んでいた。
ハッチが開き、煙の中からトカゲ型の宇宙人が這い出てくる。
レプティリアンだ。
「ここに突っ込んでくるとは珍しいな」
「すまない。行き先の指定がうまくいかなくてな」
「あんたらのUFOって、目的地イメージすれば勝手に飛ぶタイプだろ。迷うなんてないはずだが」
「グレイとの大事な会議があってな。どうしても行かなきゃならんのだが……」
青年は億劫そうに立ち上がり、躊躇なく機体へ乗り込んだ。
装置をひと通り叩いて回り、舌打ちする。
「……あー、これはだめだな」
「どこがだ? パッと見、普通に見えるが」
「全部ちょっとずつズレてる。座標も補正も同期も、全部だ。意図的にやってるな。陰湿だぜ」
「もしかしてグレイと仲いいやつらがやったのか」
「さあな」
興味なさそうに肩をすくめ、装置をいくつか雑にいじる。
「よし。治ったはずだぜ」
「ほんとうか?」
「行ける行ける」
レプティリアンは一瞬だけ迷い、頷いた。
「恩に着る」
「いいってことよ」
UFOが浮き上がり、幽界を突き抜けて消えた。静寂が戻る。青年はまた寝転がった。
なお、あのレプティリアンはグレイとの戦争を推し進めようとしていた将軍だったらしい。
穏健派のレプティリアンとグレイが組んで、絶対に会議に辿り着けないよう仕組んでいたのだ。
幽界で暇をしている神の隣に突っ込んだのが、運の尽きだった。
グレイの会議室。
着席するなり、レプティリアンが吠えた。
「だからキライなんだよ、グレイのやつらは陰湿でよお!」
「なんだとお!」
「祖先同じのくせにどうしてこうなっちまったんだかなあ!」
「貴様は一線を越えた」
グレイの灰色の体がぶるぶると震える。
「やるか?」
「許さん」
殴り合いが始まった。テレパシーが飛び交い、精神汚染攻撃へと発展する。
止める者は誰もいなかった。
あっという間に拡大し――グレイとレプティリアンの宇宙戦争へと発展した。
現在は和解している。ただし、大きなしこりが残った。
幽界。青年は茶をすすりながら、のんびりと空を眺める。
「今回は宇宙人を助けてしまった。あー、人助けは気持ちがいいなあ」




