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なまいきさかり  作者: 小坂あと
第一章

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第4話「奇妙な法則」












 わたしと姉の間には、奇妙な法則が存在する。


 なんの因果関係があるのかまでは不明。ただ、その法則に気が付いてからは積極的に利用している。


「ゃ、あ……神楽ちゃん、まって」

「動かないで。大丈夫、痛いことしないから」

「いたくないけど、それ……ぅう」


 服の裾を雑に掴んで持ち上げる。


 現れた細く白いお腹の、おへその下辺りに唇をふんわり当てた。


 くすぐったいんだろう、ビクついて逃げる腰の動きに興奮した心が、密かに鼻息を荒くさせる。バレたらさすがの姉も引くだろうから、細心の注意を払って平静を装いつつ。


 言い訳をするとしたら、これは別にしたくてやってる訳じゃない。わたしの欲を一方的にぶつけたい訳でもない。まあ、邪な思いが100%無いかと聞かれたら、嘘にはなるけど。


 一応、姉のためだ。体裁上の理由とかじゃなく、本当に。


 見えざる理を掴んだのは、だいぶ昔。


 まだ、わたしが姉を素直に慕う妹だった頃。


『おねえちゃん、ぐあいわるい?』

『うぅ〜……うん。あたま、いたいの…』

『かぐら、おまじないしてあげる』


 偏頭痛に悩まされていた姉の気が少しでも紛れるようにと、額にキスをしたら、


『ん……なんか、いたくないかも』

『ほんと?』

『うん!かぐらはすごいね。まほうつかいみたい』


 瞬く間に痛みが引いていったことがある。


 効果は持って数日程度。だけどその後何度も、同じ現象が起こった。


 偶然の重なりが続いて、もしかしてと勘付いてからは意識してやって見るようになったけど、都度見事に効果は現れてくれた。


 キスをすると、姉の体調に変化が現れる。


 不調な部分の近くにすると、より効果が現れやすい。


 狂言の一種と思われるかもしれない。けど、気のせいでは済まないほど如実に快調へ向かう。


「ふぅー……なんか、落ち着いてきた。かも」

「だから言ったじゃん。おまじない信じてないの?」

「そうじゃ、ないけど…」


 今日も今日とてありがたく使わせてもらった結果、無事に生理痛で苦しんでいた姉を救えた。


 わたしもついでに日頃溜め込んでいる欲求不満解消になるし、まさに一石二鳥。毎回、ちゃっかり舐めたり撫でて、ありがたく楽しんでいる。


 姉はあまり好ましくはない反応で、自分のお腹辺りを触りながら静かに唇を尖らせていた。……この口は、不貞腐れた合図。


「なに。不満なの?」

「だ、だって……神楽、たまに変な触り方するから」

「……変な触り方?」


 意外だ。


 鈍いから気付いてないだけと思ってたのに、察した上で黙ってたんだ。


 それに、なに?その、あからさまに意識しちゃってる顔。かわいいんだけど。


 いじめたくなる、無性に。


「わたし、どんな触り方してた?」

「ど、どんな……って」

「教えて、祈里姉」

 

 膝に乗せた手を、早々に捕まえられた。姉の言うところの“変な触り方”をされるかもと危惧しての回避行動だろう。


 人の指をモミモミといじくりながら、動揺した瞳を長いまつ毛で隠す。


「教えてよ、お姉ちゃん」


 姉は、この呼び方が大好きだ。


 故に呼ばれると弱く、今も驚きと喜びで伏せていた顔をこちらへ向けてきた。目が合うとすぐ、羞恥心が再熱したのか落ち着きなく瞬きを繰り返しながらまた逸らされちゃったけど。


 かわいいな、いちいち。


 反応が、存在が、全てが。


 愛おしくて、不快だ。


「おまじない……嫌い?」


 何があっても手に入らないと分かった相手にヤキモキしていたら、苛立って八つ当たりしたくなっちゃう。


 だから、堪えた。


 喉元まで上がってきていた“愛してる”は、ゴクンと飲み込んで胃に落とす。消化されないまま、ぐるぐると体内を暴れ回ると分かっていて。


 傷つけたくは、ないからさ。


「嫌なら、もうしない。やめるよ」


 意地悪でも駆け引きでもなんでもなく、純粋な姉への配慮として提案した。


 困り果てて下がりきった眉と、潤んだ瞳が織りなすあどけない色香に当てられながら、正気は保つ。理性がなければ今頃、薄い布を引き裂いて襲っていた。


「どうする、祈里姉」


 選択肢を与えているようで、追い詰めてしまったかもしれない。


「どうしたい?お姉ちゃん」


 怖がらせないよう温かく包んだ手を僅かに震わせて拳を作った姉は、“悔しい”と“恥ずかしい”の間で揺れ動く素振りを見せて、


「いやじゃ、ないよ…」


 最後には降参した。


「じゃあ、これからも続けていい?」

「ん……少し、なら」


 少しって、どこまで?


 聞こうとして、やめる。あんまり、いじめすぎも良くない。


 というか、やめなくていいんだ。嫌じゃないんだ。


 もしかしたら姉も、期待してたりして。


 荒れ狂う欲望に、拍車がかかる。都合のいい解釈が、悪魔のように囁いて惑わせてきたおかげで、理性の糸はほつれかけていた。


「ほ、ほんとに……少しだけ、ね」

「ん?」

「やりすぎは、やだよ」

「フリ?」

「っち、ちがう」


 不服そうな表情がたまらなく欲情をそそってくるけど、我慢しないとね。


 だってほら。


 今はまだ、生理中だから。










 

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