第100話 狡猾
ラグーンはようやくそこでため息をつくと銃をしまう。だがディアはラグーンに駆け寄ると、困惑しながら聞く。
「ラグーンさん! 生きてたんですか...!?と言うか止血...!止血してください...!って...あれ....」
ラグーンの服には穴が空いてるものの出血の様子は見られない。それを見たディアは訳が分からず困惑するが、ラグーンは笑う。
「ははは、イリュージョンさ!」
「え....?」
ディアはキョトンとするが、ラグーンは地面に落ちるカードを指差して言う。
「戦闘中拾ったんだよ。君が最初に投げたあの[強膜]を貼ったカード。銃弾を服で防いでたみたいだから仕込んどけば盾に使えると思ってね。実にエレガントだろう?」
「よく気づかれませんでしたね...そうだったんですね....でも気をつけてくださいよ、それ結構切れるので...」
「まあそこら辺は心得ているからね? 一応バレないように撃たれる直前にトランプを撒いて出血や着弾を見にくいようにしたしね」
ラグーンはそう言ってカードをパラパラと地面へ落とす。そんな中でディアは気になったことを口にする。
「あの....一瞬見えたあの人...あれは一体....」
「あー、おそらくだがリーワン・C・レラーストだろうね」
「えっと...[瞬間移動]でしたっけ....」
「ああそうだね。でもあの挙動だけでもわかったことはあるかな」
ラグーンはそう言うとディアは首を傾げる。
「どう言うことですか?」
「あの時、彼らがあっちに逃げるときは姿を目で捉えることができた。行きと違ってね、つまり重量が重いほど遅くなるんだよ」
ラグーンの言葉にディアはハッとして目をキラキラさせる。
「すごいですね!あの一瞬であんなことが!?」
「まあ仮説だけど、観察力は大切なのさ?」
ラグーンは相変わらずポーズを決めながらそう言う中でベッツも到着する。
「ようやく....戻りました.......敵は....!?」
ラグーンは首を横に振り、それを見たベッツはそのままへたり込む。
「そうですか...まあよかったです....こっちは相手の魔法を一つ手に入れましたよ....」
少し落ち着いたベッツの後ろから兵士の肩を借りながらメロも歩いてくる。
「すごくッ.....疲れた....!」
メロは足を揺らしながらそう言って息を吐く。ディアは苦笑いをして労うが、ベッツはそのまま体育座りの姿勢になるとうつむきブツブツと1人反省会を始め出す。
「えっと....とりあえず...お疲れ様です...!」
*****
シグマ国の車両の中でエウレカはため息をつく。
「はあ.....まさか1人失うとはね。失態....」
エウレカは残念そうにして自身の手のひらを見つめているとバースは悔しそうに拳を振るわせ目を瞑る。
「ああそうだ....!リンクを失うなんて...!いいやつだった!」
「俺ら、そこまで仲良くない....感傷的になりすぎ.....」
「そんな!今日戦えばそれはもう仲間だぜ!」
ガーランドの言葉にバースは顔を上げると少し怒った口調で言うがガーランドは聞いてないと言わんばかりに外を見つめる。
「でもピースピースって感じ。言ったでしょ、作戦完了って」
そう言ったのはリーワンであった。抑揚はなく無表情なのに両手でピースを作りおちゃらける彼の言葉を聞いてエウレカは問う。
「1人失ったけど、これは必要な損害ってことでいいの? 魔法、そして二級者だよ?」
リーワンはその問いになんと答えるか迷うがその時、無線が響く。それはレッドの声だ。
「よーよー!お前らにしては随分活躍したじゃねーかー? いやー、まあ一級者いるなら当然っしょ?被害出したけどまあ許容してもいいし、俺寛容だから」
エウレカはその声に若干の苛つきを覚えるがすぐに深呼吸すると、エウレカは怒りを鎮める。
「まあ冗談は置いといて〜。お前らの活躍で随分と進んだぜ? デルタ国しかわかってなかったが援軍駐屯地を発見したし。その距離と方向が一つわかりゃあとは十分だろ」
レッドはクスクスと、無線機を持ったまま笑う。
本当に想像通り行ってくれたぜ? たしかに敵陣営の場所はデルタしかわかってなかった。
じゃあどうやって他の敵対国の場所を炙り出せばいいのって話だけど。
答えは簡単。まず唯一判明してるデルタを攻める。
そしてこっちはギリ攻略できる難易度を提示することでデルタ側は援軍を向かわせれば打破できると判断し、援軍を馬鹿正直に向かわせてくれる。
戦力に裂かなかった兵士たちを全て斥候にすれば場所を見つけるなんて超簡単。
その方向と時間の逆算から位置を特定してしまえばいい。駐屯地にしろ本陣との距離なんて、たかが知れてる。
確かにデルタは見つかってる分防御を強固にするってのはふっつう考えだけど。
だけど位置が見つかってない国はそこまで防御に戦力は裂かねえよな? 落とす準備は整った。情報戦1は、まずこっちの勝利って訳だ。
さあ、始まりだぜ。




