第79話 名演技
ブルテリア王国。
オークはコボルト達を連れ、大急ぎでやってきた。
『・・・・・・犬様から重大な任務を与えられてしまった・・・。うむ! 』
ぶつぶつと独り言を呟くオーク。緊張気味のコボルト。オーク達は気合いを入れ直し、ブルテリア王城に入って行った。チワワに玉座の間まで案内される。
『おぉ、オーク殿! お久しぶりですな! ・・・どうかされましたかな?調印式はもう少し先だと思いましたが・・・。』
ブルテリア王のバーナードは歓迎してくれたが、急な訪問に少し不思議そうにしている。
『突然の訪問申し訳ありませぬ。この度ブルテリア王に報告が。・・・・・・犬様が他国の勇者に討たれました。暫くは私がシバ王として代わりを務めることとなりました・・・』
オークがバーナードに簡潔に報告する。
なかなかの演技力を発揮するオーク。
『・・・』
『・・・・・・なんですと・・・?』
バーナードは驚きのあまり固まる。
オークからの報告に考えを巡らせている。
『どこの勇者かは不明。そこで頼みがあるのだが・・・何が起こっているか調べて貰えないだろうか・・・。』
オークがバーナードに頭を下げた。仮とはいえ、ワンコ亡き後の王である。簡単に頭を下げて良いものではない。
バーナードにとってはそれ程、オークが必死なのだと伝わった。このオーク、それにしてもノリノリである。コボルトはウルウルしているが、涙は流れていない。
『わかりました。直ぐに情報収集します。とりあえず調印式は少し遅らせましょう。』
バーナードはその頼みを引き受け、オークは自国へ戻っていった。。オークが去ったあと・・・
『さて・・・。シバ王が死亡した情報を他国に流せ。その後の動向を調査しろ。』
バーナードはオークの頼み通りに情報を収集するように隠密に指示をした。
『・・・・・・』
『あと・・・、オーク殿がなんでそんな嘘をつくのかも調査しろ。』
・・・全然騙せていなかった。オークの名演技とコボルトの大根演技に違和感しか感じなかったようだ。
◇
ヨークシャー王国 玉座の間
『計画は順調だ。今度はケルベロスの時のような失敗は許さないぞ・・・。シュナウザー。』
『はっ。申し訳ありません。シバ王の掌握、必ず成功させます。』
ヨークシャー王はシュナウザーを呼びつけ計画の進捗報告を受ける。ヨークシャー王は封印石で今までに掌握できたモンスターを使い、シバにいるワンコをも手中に収めようとしていた。前回の失敗でワンコにターゲットを変更したようだ。
その時、兵士が急ぎで伝令にやってきた。
『・・・失礼します。たった今、バーナードの密偵より報告がありました。シバ王が勇者との戦闘により死亡したとの事です。』
兵士の報告に王とシュナウザーは顔を見合わせる。
計画がこれからという時に出鼻を挫かれた形だ。
恐らく他の国もこの情報を得ていると推察できるため、2人は計画を断念せざるを得なくなった。
悔しさを滲ませる。
『け・・・計画が。これでは大手を振ってシバに攻め入ることができない。やってくれたな・・・。勇者め。シュナウザー・・・。計画は練り直しだ。どこの国の勇者の仕業か調べろ。』
『承知しました。恐らく・・・我らをこそこそ嗅ぎ回っているバンドッグ王国かと。良いモンスターが居ます。私にお任せ下さい。』
シュナウザーは不敵な笑みを浮かべた。
こうして、ワンコの知らないところで、シバへモンスターが攻めてくることはなくなった。
バンドッグの女王プードルは、余計なことをして、ヨークシャーの怒りの矛先となってしまったのであった。
その頃オーク達は・・・
『ふはははは、見たか、おれの演技力!犬様ー。やりましたぞー! 』
『オークさん! 流石です。 あとでお犬様にも一緒に褒めてもらいましょう! 』
バレてるとも知らずに調子に乗って浮かれていた。
次回へ続く
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