第62話 異世界召喚者
sideワンコ
オークをダンジョンに放置してから8日後
そろそろ迎えに行かねば
おれはマイルーム(犬小屋)で寛いでいた。そろそろオークを迎えにいって、ブルテリアに行かないといけない。
明日にはシバを出発したいと思っている。
『失礼します! 』
おれが欠伸をしているとラグが大慌てで帰ってきた。
『犬様、頼まれていた異世界召喚者の件ですが・・・おそらくブルテリアかシバのどちらかに紛れ込んでいる可能性があります。』
ラグから詳しく話を聞いたが、どうやらグレートデーンで召喚された異世界召喚者は1人。
ラグが探りを入れようとしたが、グレートデーン軍とは別行動で、敵国視察と言って出て行ったとの情報を得たらしい。
・・・・・・まずいな・・・
どんなやつかわからない。危険なやつであればシバへの侵入は勘弁してもらいたい。
最近は他国から移住してくる人や冒険者も少しずつ増えて来ているため見つけるのは困難だ。
どうしよう・・・
◇
『がっはっはっは、おもろい! おお、いぬちゃん!どした。がっはっはっは』
・・・・
ケルベロスに異世界召喚者の話をしに来たんだが、笑い声が響いていた。部屋に入るとケルベロスがミニチュアになって、コボルト達とワイワイやっていた。
・・・なんなんだ。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・コイツ、この前あげたアマゾンポイントでマンガ買ってやがった。
しかもおれも先が気になって仕方なかったやつも結構ある。
・・・やられた。必要備品ばかりに気を取られて、まさかマンガを買おうなどとは思わなかった。
ケルベロスのやろう。
これはケルベロスにガツンと言ってやらねばなるまい。
「おい!ケルベロス」
「・・・・・・」
「・・・・・・おれにも貸してくれ」
誘惑に負けてしまった・・・・
オークを迎えに行くのが遅れそうだ。
◇
side〇〇
『あのー、ここのヌシのお犬様とはどういう方ですかー?』
おれは今冒険者としてシバまでやってきた。隠蔽の魔法も使っているためおれがグレートデーンから来た異世界召喚者だということは、鑑定持ちにも早々見破られないはずだ。
『お犬様ですか! とても素敵でお強いかたですよ!』
宿屋のコボルトが教えてくれた。
やたらと強いらしい。お犬様と言うのだから、恐らくコボルト系のモンスターで間違い無いだろう。
この世界に来て初めて楽しいと思えるかもしれない。
この世界に来てからというもの戦いばかり。
モンスターを倒す日々。最初は新鮮だったから我慢できたが、すぐに飽きた。
周りの奴らが弱いのだ。城にいる奴らは大したスキルも持っていない。宮廷魔術師や騎士団長ですらすぐにおれの敵ではなくなった。ダンジョンもグレートデーンにあるダンジョンは簡単でまんねりした。
そんな毎日を過ごす中でようやく吉報が訪れた。となりのブルテリアとかいう国に戦争を仕掛けるというのだ。以前から争いが絶えなかったらしいが、今が最大の好機だという。
そしておれにとっての好機はグレートデーンの領地ブルドッグを壊滅に追い込んだ"お犬様"とやらの存在だ。戦争になんか興味はないが、お犬様には興味がある。
おれから"趣味"を取り上げたこの異世界には恨みしかないが、せめてもの憂さ晴らしで、この世界で強いと言われている奴らをぶっ倒すのだ・・・。
・・・テクテク
『・・・・・・ここか』
・・・・・・ここがお犬様がいる家か。とりあえず村のヌシに挨拶するのはそんなにおかしい事ではないので様子見がてら中に入ってみるか。おれが中に入り要件を伝えるとコボルトに案内された。
・・・・・・小屋がある。なんか元の世界で良く見た覚えのある小屋だ。
・・・出てきた。
・・・・・・柴犬だった。しかもその柴犬、コボルトと何やら話をしている。思わず声が出てしまった。
『・・・し・・・柴犬。しかも・・・柴犬がしゃべった! 』
「・・・・・・」
『・・・えーと・・・初めまして。冒険者をしておりせっかくなのでご挨拶をと思いまして・・・』
おれは急いで平常心を取り戻し挨拶する。
「・・・・・・」
『・・・・・・』
・・・・・・沈黙が辛い。目の前の柴犬は俺のことをジッと見つめた後、口を開いた。
「お前異世界召喚者だろ」
・・・・!!
なにぃ・・・何故ばれた!
速攻でバレたのであった。
次回へ続く
異世界召喚者とワンコが喋れる理由は次回です。
いつもありがとうございます。
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