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第十話 母成峠に舞う武士の魂

二本松の戦いからしばらくして新政府軍が母成峠まで侵攻してきたと斥候から知らせが入る。

紗月たちは装備を整えて母成峠に向かった。


青豹隊は紗月たちの後ろにつき進軍する

暁ら精鋭隊のほかにも少年兵らの姿もあった。


「暁、此度は無理な突出はするなよ。」


その紗月の言葉に


「わかってます。あなた方の指示で行動します。」


暁は反論することもせずに素直に従った

その姿に紗月も冬十郎もフッと笑った。


母成峠に到着すると新政府軍はすでに陣取っていた

陣形を組み今か今かと旧幕府軍を待ち構えている。


紗月たちは窪みに隠れて様子を見る。


「奴らはまだこちらには気付いてないようだな…よし。鉄砲部隊は気取られないように注意しながら一列に並べ」


紗月の合図で鉄砲部隊は素早く、そして気付かれないように一列に並び隠れる。

 「体勢を低くしたまま構えろ」


鉄砲部隊はかがんだまま銃を構え、狙いを先の新政府軍に向けている。


「よし放て!!」


その一言を皮切りに銃の激しい轟音が鳴り響く


バァァァァンッ!!


ドォォォォンッ!!


新政府軍は突然の銃撃に混乱して隊列が乱れる。


紗月は手を挙げる。


「全軍進め!!!!」


冬十郎と征二郎がそれぞれ号令を掛けると

いよいよ戦が始まった。


銃撃により混乱している新政府軍に全軍が襲いかかる


「鉄砲部隊は射撃を止めるな!!」


征二郎は叫んだ。


「前線部隊はそのまま押し返せ!!」


冬十郎は自ら前線部隊を指揮して押し上げていく


「はぁっ!!たぁっ!!!」


紗月は手薄になったところに素早く突撃して目の前の敵をなぎ払い仲間が通る道を開く。


「今だ!!進め!!」


暁率いる青豹隊が紗月が開けた突破口から攻め込む


戦場は更に苛烈になる

新政府軍は立て直すことが出来なくなっている。

いよいよ旧幕府が新政府軍を倒すときが来た


そう思っていたのも束の間

鉄砲部隊を指揮していた征二郎の背後から味方の偵察がやってくる。


「申し上げます!我等の背後より新政府軍の新手がこちらにやってきています!このままだと挟撃の可能性が!」


「なんだと!?あれが主力では無かったのか…くそっ…このこと前線に伝えろ!!」


「はっ!!」


偵察は紗月や征二郎たちにこのことを伝えると頭を下げて下がっていく。

征二郎は遠くで紗月たちを見ていたが明らかに悔しいという態度を取っているのが見え歯を食いしばる。


冬十郎と紗月は急いで離れる指示を出そうとする


「挟撃されては不味い!私が退路を開く!その隙に撤退しろ!!」


紗月は仲間の退路を確保するために斬り込む


遂に後方から新政府軍がやってくる。


征二郎はその姿を捉えると鉄砲部隊の射撃を止めさせて紗月が道を切り開いた退路に一直線に走る。


「暁!俺たちも退くぞ!」


冬十郎の言葉に暁は首を横に振った。


「行って下さい冬十郎殿!」


「何を言ってる?」


突然の暁の言葉に驚く冬十郎


「後ろは俺達が」

暁の傍には暁を含む精鋭隊がいた。


「俺達が後ろを押さえます!どうか皆様は生きて撤退してください!」


「バカを言うな!言っただろう…命の捨て所を誤るなと!お前たちは無駄死にしたいのか!?」


暁の提案を否定する冬十郎だが暁はこう言った。


「無駄死にではない。誰かのために役に立つことが我等の役目なのです」


暁は冬十郎の後ろにいる青豹隊の少年兵たちを見る


「この先の会津はこの子たちが導いてくれる。俺はそう信じてます。」


冬十郎は後ろを振り向き少年兵を見る

すると一人の少年兵の少年が前に出て言った。


「それならば私たちも!!」


少年の言葉に暁は首を横に振る


「ならん。お前たちはこの人たちと未来を守るんだ。俺達はここを命の捨て所と決めたのだ。未来のために…仲間のために俺達は死ぬつもりだ」


それを聞いた冬十郎は頷いて少年を連れて行こうとするも少年は離れようとしない。


暁は少年たちの未来を案ずるようにフッと笑って背を向けて走って行った。


「彼らの思いを無駄にしてはいかん。退くぞ」


そういって少年の肩を抱きながら冬十郎と少年兵たちは戦場を脱した。



母成峠を抜け城下に戻ってきた紗月たちは新政府軍の脅威が仙台に向いていると知り仙台に向かうことを選んだ。


そんな時冬十郎は言った。


「紗月、征二郎…お前たちは先に行け。」


「冬十郎なにするつもりだ?」


紗月は言った。


「俺はこの地で武士の魂を見た。未来や仲間のために命をかけて戦った奴らを見た。今度は俺が未来を繋いでやりたい。」


冬十郎の脳内には暁の姿があった。

暁は立派に戦いそして散っていった。


「どうやら俺は暁に毒されたらしい…この国が好きになった。」


紗月たちの方を見てフッと笑う冬十郎に紗月はこう言った。


「分かった…だが決して死ぬなよ。生きてまた会おう」


「先に行って待っているぞ」


征二郎は冬十郎の肩を叩いた。



こうして紗月と征二郎は仙台へ向かい

冬十郎は会津に残り青豹隊を率いて会津に駐留していた新政府軍と戦っていった。


「新政府の奴らよ!これ以上貴様らの好きにはさせんぞ!我等青豹隊参る!!」

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