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定義不能の正義  作者: SAN
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プロローグ(定義破壊)

人は、生まれたときから“何か”ではない。


名前を与えられ、役割を与えられ、期待を押し付けられることで、

ようやく「何者か」になる。


優しい人。

正しい人。

強い人。


だがそれは、本当に“その人間”なのか。


誰かにとっての優しさは、

別の誰かにとっての残酷さであり、


誰かにとっての正しさは、

別の誰かにとっての間違いである。


ならば、その人間は何者だ。


優しいのか。残酷なのか。

正しいのか。間違っているのか。


――その答えは、どこにもない。


あるいは、こう言い換えるべきかもしれない。


答えは存在する。

ただしそれは、“一つではない”。


世界はある日、その事実を受け入れた。


いや――受け入れさせられた。


人間は「定義」される存在へと変わった。


言葉によって、存在が決まる。

認識によって、人格が上書きされる。


そして人は気づく。


自分が信じていた“正しさ”が、

他人にとっては“暴力”だったことに。


そのとき初めて、人は選ばされる。


正義でいるか。

それとも、悪として生きるか。


――あるいは。


どちらにもなれず、

何者でもないまま消えるか。

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