四話目
もう少しで今日も更新を忘れるところだった……
「……誕生日?」
「そう、誕生日」
母さんと話したことを、一緒に手を繋ぎながら歩いてる文香に話す。
「……私の両親も、楽しみにしてる」
「楽しみだね」
「……うん」
それからも、誕生日の話で盛り上がったが、なぜかプレゼントのことは話してこなかった。
まあ僕も、サプライズとして渡したい。
なので、これはこれで良かったとも言えた。
学校についても、今夜のことで頭がいっぱいだ。
「皇、この問題を解いてみてくれ」
「……」
文香、僕が用意したやつ、喜んでくれるかな。
本人に似合うようなものを選んだから、いらないと言われることはない、と思う……。
「……皇?」
「うーん……」
「皇!」
「うわっ!?」
急に名前を呼ばれ、思わず大きな声が出た。
声の方を向くと、先生が立っていた。
「どうかしたか? さっきから何度も呼びかけたんだが」
「え? あ、いや……」
どうしよう。今日の夜にする誕生日を考えていたなんて言えない。
クラスのみんなからも「皇くん、しっかりー」や「何か悩んてるのか?」など心配の声が出てきた。
「……まあいいか。皇、黒板に書いてある問題を解いてくれ」
「あっ……、うん」
席から立ち上がり、黒板の前に立つが、そこから動けない。
……やべえ、わからない。
「まあ、まだ皇には早い問題だったか」
「……ごめん」
「いや、いい。席に戻ってくれ」
大人しく戻ることに。
「どんまいー」
「次があるよ」
戻る途中に、クラスメイトから励ましの言葉をもらった。
とりあえず、その場は笑って済ますことに。
それからも、授業に一切身が入らず、何度も先生から忠告を受けることに。
文香は、僕がこうなっている理由は分かっているのか、何も言ってこない。
そんな学校生活があったが、ついに放課後。
「ごめん文香。今日は一人で帰れる?」
「……はい」
文香は何も言わず、ランドセルを背負った。
「本当は一緒に帰りたかったんだけど、今日は許して」
「……いいよ? いつも私と一緒にいると大変だろうし」
「そんなことない」
文香の言葉を、僕はすぐに否定する。
「……え?」
「むしろ、文香がいない方が、僕にとっては大変だよ」
「……ありがとう」
僕が言うと、文香は笑いながら答えた。
「それじゃ、文香はまっすぐ帰るんだよ」
「……うん」
文香が歩いて行くのを確認してから、僕はランドセルの底に隠してある財布を確認する。
「大丈夫、ちゃんとある。よし、行こう」
独り言を呟いてから、僕も駆け出した。
目的は、この前文香と出かけた時に、文香が立ち止まったアクセサリーショップ。
あの時、文香は店頭に並べれていたネックレスを見ていた。
本格的な店ではなく、あくまで小さな雑貨店。
隠れて値段を見たけど、僕の小遣いで買える値段だった。
文香はあまりお小遣いを貰ってないらしい。
両親はちゃんと働いてるらしいけど、なぜかあまり貰えないらしい。
「あのー」
店員さんと思われるお姉さんに話しかける。
そういえば、文香と出かけた時も、話しかけるのは決まって僕からだった。
まあ、文香の性格上、しょうがないんだけど。
「あら? あら、どうしたの僕」
「これ、欲しいんですけど」
「いいけど、今の君には少し買えないんじゃないかなぁ」
言われたから、僕は財布からお金を出す。
「足りるよね……?」
いざ買うとなると、少し不安になってしまう。
ギリギリ足りてなかったらどうしよう。
「んー…………。うんっ。大丈夫、ちゃんと足りるわよ?」
「よかった」
「そんなに安心するなんて、そんなに欲しかったの?」
言いながら、お姉さんはケースからネックレスを取り出す.
「うん。友達の誕生日プレゼントに」
「あらそう! お友達も、きっと喜んでくれるわ」
「僕もそう思う」
「はい、これでいい?」
お姉さんは、僕が買いに来たネックレスを見せてくれる。
「うん。これで大丈夫」
「それじゃあ、包んでおくね? せっかくのプレゼントだもの」
「ありがとう。でも、そこまでしてもらうほど持ってきてないよ」
「ううん。これは私から、お友達へのプレゼントってことで」
「ありがとう」
早く文香に渡したい気持ちでいっぱい。
お姉さんが、紙の中に入れたネックレスを渡してくれる。
「ご来店、ありがとうございました」
お姉さんと別れて、家に帰ることに。
☆☆☆☆
「「「月兎くん、文香ちゃん。誕生日おめでとう」」」
クラッカーの音が鳴り響く。
その音を聞きながら、僕たち二人は照れながら答える。
「「ありがとう」」
この日のために、母さんたちはお寿司を予約したらしい。
あと、ちゃんと誕生日ケーキもあるとか。
ケーキって美味しいから好き。
「文香は嫌いなものなかったよね?」
文香のお母さんが文香に聞く。
「……うん。食べれないものはないよ」
「それはよかつた」
机の上には、色々なお寿司が並べられている。
僕も知っての限り、文香が嫌いそうなものはない。
ちなみに僕が嫌いなものはある。
そういう時は、大体文香に食べさせているのは、母さんたちには内緒だ
それからも、誕生日は続き、プレゼントの時間となった。
「はい月兎、これは母さんから」
そう言って渡してきたのは、貯金箱。
……貯金箱?
「お小遣い、好きにしていいけど、時には貯めないとね」
「……そうだね」
なんていうか、なんて言うんだろう。
まあ、なんだかんだ貯金箱は欲しかったから、普通に嬉しいんだけどさ。
「文香ちゃんにはこれ」
「……そんな貰うわけには……」
「いいのよ。自分の娘のように思ってるから」
「……ありがとうございます」
そして、次は文香の父さんと母さんの番。
ちなみに、僕の父さんは海外にいるからここにはいない。
「私たちから文香にプレゼントするのは、これよ」
そう言って渡したのは、帽子だ。
「これから暑くなるし、日除けにもいいしね?」
「……うん、ありがとう」
「まだ小学生に言っても伝わらないと思うけど、熱中症には気をつけないとな」
熱中症ってなんだろうか。
まあそれはいい。
親の番が終わったので、僕が先に渡そうとしたら、文香から渡された。
「……月兎くん、受け取ってくれるかな」
そこには、小さな箱があった。
素直に受け取り、中を開くと、財布があった。
しかも長い。
僕が今使ってるのは、がま口の財布だ。
なんだかんだ、こういう財布って可愛いよね。
「ありがとう文香、大切にするよ」
「……できれば、財布だから使って欲しいな」
「あ、ごめん。大切に使うよ」
「……うん」
さて、俺の番になった。
なんていうか、母さんも文香の両親も、期待を込めた目で見てくる。
やめてくれ。
「僕も、文香にプレゼント」
「……いいの?」
「ああ。文香のために買ったんだから」
ちなみに、朝に母さんには用意したと言ったが、あれは嘘だ。
正直、あらかじめ用意していたら、文香にバレる可能性あったから、今日まで待っていた。
「……開けていい?」
「いいよ」
文香は綺麗に紙を取っていく。
流石は文香。性格が出ている。
「……こ、これって……!」
驚く文香を見て、サプライズ成功と思った。
「前に、そのネックレスを欲しそうにしただろ? 隠れて買っておいたんだ」
「……ありがとう。月兎くんには、なんでもバレちゃうね」
「それだけ、文香のことを見ているから」
「はいはい、二人の世界に入るのもいいけど、ケーキを食べましょう」
母さんの声で、ふと思い出す。
「そういえば、ケーキはチョコ?」
文香がチョコケーキを好むから、僕もそれに合わせてチョコケーキが好きと言った記憶がある。
正直、ケーキはなんでも美味しいから、食べれるならなんでもいい。
「もちろん、チョコケーキよ」
それから、誕生日は何ごともなく終わった。
文香の驚く姿と、喜ぶ顔が見れたから、僕も満足している。
☆☆☆☆
そうして、いつものように部屋で窓を隔てて話をする。
「……ネックレス、ありがとう」
「僕の方も、財布ありがとう」
すでに文香からもらった財布に、今まで使っていたガマ口の中身を入れ替えてある。
でもこれ長財布って言うんだね。
文香から聞いた。
「……財布、喜んでもらえてよかった」
「僕も、ネックレス喜んでくれて嬉しいよ」
お互いにお互いを褒め合うのは恥ずかしいので、この話はやめよう。
そう思っていたら、文香も違う話をしてきた。
「……八月に、お祭りあるの知ってる?」
「え。そんなのやるんだ」
「……今年から開催するんだって」
「それは楽しみだね」
「……行くの?」
「もちろん。文香を連れて行くよ」
「……うん」
僕が言うと、文香は少し顔を赤くする。
でも夏祭りか。
今からすごく楽しみだ。
文香も楽しみにしている感じは伝わるし、これは絶対に行かないと。
小学一年生にして、女の子にネックレスを渡すのはキザ過ぎると思うの。
まあでも、雑貨屋にある玩具みたいなネックレスなので、いいかなって。




