一話目
書く時間が少ない……。
明日からついに小学生。
母さんとランドセルとか上履きとか用意して、何度も荷物を確認し、準備万端となった。
「ちゃんと学校に行ける?」
「なんとかなるよ」
何を心配してるのか、何度も言われた。
「今の時代、集団登校じゃないし……」
「なんとかなるよ」
「楽観的だねぇ……」
「自信あるもん」
「どうして?」
「文香がいるから」
「…………」
母さんが、僕のことを変な目で見てきた。
「あまり、文香ちゃんに頼りきってはダメよ?」
「うん」
文香はなんだかんだ、僕よりしっかりしてる。
すごいと思う。
「ねえ母さん」
「どうかしたの?」
「小学生になったらさ、友達作って家に呼んでいい?」
僕がそう言うと、母さんは優しく笑う。
「えぇ。いいわよ。月兎なら、友達なんてて簡単に作れるわ」
「うん」
母さんから許しも出たし、明日から学校が楽しみになってきた。
今日は母さんとそんな会話をして、部屋に戻ることに。
「おーい、文香ー」
部屋の窓を開けて、すぐ隣の窓を叩く。
本当に隣で、家と家の間は少ししかない。
僕みたいに子供でさえ通れない。
「……どうかしたの?」
カーテンが開けられ、窓が開くと、そこには眼よりも下に伸ばした髪の毛が特徴の女の子が出てきた。
僕の一番の友達、文香だ。
「いやほら、明日の準備どうかなって」
「……終わってるよ? 月兎くんは終わってるの?」
「うん。あとは明日を待つだけだね」
「……よかった」
内気で弱気な文香。
僕がいるから、外に出たりとかもするけど、僕がいなかったらどうしてるんだろう。
気にはなるけど、そんなことを考えても仕方ないこと。
僕は文香に話しかける。
「明日、一緒に学校行くよね?」
「……いいの?」
「いいのも何も、最初から一緒に行くつもりだよ」
「……うんっ」
小さく笑う文香。
小さい頃から一緒にいて、この笑顔を守りたいと思ってきた。
もちろん、これからも守っていくつもり。
できれば、クラスも同じだったらいいな、なんて思いながら、文香と別れて寝ることに。
☆☆☆☆
「……月兎くん、おはよう」
「おはよう」
外で待ち合わせをして、母さんの朝ごはんを食べて学校に行く荷物を確認して家を出たら、すでに文香が外で待っていた。
「……クラス、一緒がいいね」
「そうだね。一緒だったら、朝から夜まで一緒にいられるのにね」
「……うん」
少しだけ、顔が赤くなった。
どうかしたのかな。
とりあえず、文香に手を差し出す。
「行こう」
「……うんっ」
声から嬉しそうなことは分かるけど、ただ元から大きい声を出さないせいか、元気はないように聞こえる。
元気があるかどうかは、すぐに分かるからいいんだけどね?
仲良く手を繋ぎ、学校までやってきた。
大きい建物に入り、そこには名前が書いてある紙が貼られていた。
僕と同じような人たちがたくさんいて、こんな中に文香を入れるわけにはいかない。
「文香はここで待ってて」
「……え? でも……」
何か言おうとしてた文香を置いて、人の中に入り紙を見ていく。
「うわー、クラス別々だー!」
「ショックー」
「ねえ見て! 一緒のクラスだよ!」
「えぇっと、僕と文香はー……」
紙を見ていくと、自分の名前を見つけた。
そのまま視線を下にしていくと、文香の名前もあった。
「あったあった!」
名前とクラスを確認し、すぐに文香のところに戻る。
「む〜……」
そこには、ほっぺを膨らませた文香がいた。
「あれ? どうかした?」
「……別に何も」
「とりあえず、クラスは分かったから行こう」
もう一度、文香の手を繋ぎ引っ張っていく。
「……えへへ」
周りの音が大きすぎて、他の人なら聞こえないような声が聞こえた。
少しだけ歩くと、僕たちが通うクラスにたどり着いた。
「席、どこかな」
「……黒板に、名前が」
「え? あ、あったね」
言われたところを見れば、そこには確かに名前が。
僕の席を見つけ、隣を見れば文香の名前が。
「おお、席も隣だ」
「……よかった」
席に座ると同時に、繋いでいた手を離す。
「……あっ」
悲しそうな声が聞こえたけど、こればっかりはしょうがない。
少し経つと、先生がやってきた。
「はい静かにー。今日からこのクラスの担任の白石だ。とりあえず、全員に自己紹介してもらうぞー」
そうして、クラスの自己紹介が始まっていき、僕の番となった。
「皇月兎って名前だけど、皇と呼ぼうと月兎と呼ぼうと、どっちでもいいから今日からよろしく」
僕がそう言うと、拍手が鳴った。
一応、一人ひとりが自己紹介をしたら、クラスで拍手が起きる。
それから、全員の自己紹介が終わり、また先生が喋り出した。
「それじゃ、自己紹介も終わったし、全員廊下に並んでくれ。これから体育館に行くぞー」
「「「はーい」」」
クラス全員で返事をし、みんなの後を追うことに。
男女で列となり、みんなで歩いていく。
「よし、じゃあここで待ってろー」
体育館に入り、既にいる他のクラスの子たちの横で並ぶ。
それから、少し待てば後から他の人たちもやってくる。
そして、校長先生がステージに立つ。
「ようこそ、新入生たち。未来ある君たちが我が校に来てくれたことを、何よりも誇りに思う。まずは、校長である私の自己紹介を。校長の水谷というが、水谷先生でも、校長先生でも、好きなように呼んでくれ。さて、ここ『行雲流水小学校』は、生徒一人ひとりを重んじ、未来に羽ばたく子供を応援と支援をする学校である。また、我が校は小中高一貫である」
なんていうか、校長先生って話が長いんだな。
眠くなってきた。
「……月兎くん」
そこで、列に並んでも隣にいる文香から声をかけられた。
「ん? どうしたの?」
「……寝ちゃ、だめだよ?」
「なんでわかったの」
「……月兎くんのことは、ちゃんと見てるんだから」
少しだけ、頬を染めながら言う文香。
僕も、文香のことは見てるから、おあいこかもしれない。
「それじゃ、手を繋いでおこっか。それで、僕が眠そうになったら、手を強く握って起こしてよ」
声を抑えながら、文香に言う。
「……うん、いいよ」
ていうか、文香は眠くならないのかな?
真面目に聞いてるように見えるけど。
なんて思いながら、文香と手を繋ぐ。
「……これでいい?」
「いいよ」
ここで、少しばかり手に力を込めると、力が込もって帰ってきた。
「……えへへ」
なんて笑う文香を横目に、僕は校長先生の話を聞き逃した。
なんていうか、執筆してて思ったんですけど、書くの下手になったなぁ、なんて。