二話目
なんとか書きあげた……。
校長先生の話や、先生たちの話も終わり、もう一度クラスの方に戻ってきた。
そして、明日のことや持ってくるものなどを教えられ、初めての学校生活が終わる。
「文香、帰ろう」
「……うん」
ランドセルを背負って、文香に手を差し出す。
いつものように手を繋ぎ、僕たちはクラスを後にする。
「先生から言われたこと、覚えてる?」
「……覚えてる。月兎くんは、半分以上のことは忘れたんでしょ?」
「なんで分かったのさ」
「……先にそういうことを言う時は、自分が忘れてる時だもん」
さすがは文香、よく分かってる。
「帰ったら、明日の準備しよう」
「……最初から、そのつもりだったよ?」
昇降口に来て、上履きと靴を履き替える。
文香は運動神経が良くないのか、少し時間がかかるから、終わるのを待つ。
「……待っててくれてありがとう」
「どういたしまて。それで、今日は──」
帰ったら何しようか。
そう言おうとしたら、後ろから声をかけられた。
「皇ー! 今から校庭で一緒にサッカーしようぜ!」
クラスにいた男の子から、そんな誘いを受ける。
「え? いや、でも……」
「……私のことは気にしなくても、みんなと遊んできていいんだよ?」
引っ込み思案で、自分に自信がないからか、文香は自分の気持ちなどを口にはしない。
そして、だからこそ、僕が文香のことを分かってあげれる存在なんだ。
「分かった。でも、家までは一度送るよ。遊ぶのはそれから」
「……ありがとう」
少し笑いながら、彼女は答えた。
「悪いんだけど、一度家に帰ってからまたくるよ。先にサッカーしてて」
「わかったー! なるべく早く来いよー!」
早くゆっくり急ぐから、安心してほしい。
俺は文香と手を繋ぎ、一緒に帰った。
☆☆☆☆
文香を家に送った後、学校でサッカーをして帰ってきた。
「……おかえり」
「ただいま」
部屋に戻ると、文香が待っていた。
「……準備、する?」
それは、学校終わりに話した内容。
明日の用意だ。
「ああ、しよう」
「……まずは──」
準備を手伝ってもらい、そろそろ終わる頃、母さんから呼ばれた。
「月兎、ご飯できたわよ。文香ちゃんも一緒にどう? 文香ちゃんの両親も、今夜は帰りが遅いって言ってたわ」
「……では、甘えさせてもらいます」
「本当に、文香ちゃんはしっかりしてて偉いわ。それに比べてうちの息子ときたら…」
その分、友達多いから許して。
文香とリビングに行けば、そこには唐揚げがあった。
「唐揚げだー」
「文香ちゃんもいるから、今日は多めに作ったの。いっぱい食べてね」
「……はい。ありがとうございます」
席に着き、食べる前の挨拶をする。
「「「いただきます」」」
言葉と同時に、唐揚げを食べ始める。
「……月兎くん、そんなに一気に食べたら」
「らぁいふぁいふぁふぉん」
「……大丈夫とは思えない」
「文香ちゃん、よく言ってることが理解できたわね。流石は幼馴染ってところね」
「……いえ、そんな」
唐揚げを飲み込み、またもう一つ食べ始める。
文香は少し遠慮をしているので、文香の取り皿に唐揚げをいくつか置いておく。
ちなみに僕に取り皿はない。
お椀に直接乗せて食べるからだ。
「……え?」
「食べるのは遅くてもいいし、噛むのは大事だけど、それでご飯を食べなかったらだめだよ」
「……はい」
嬉しそうに返事をする文香。
僕もそれを見て満足だ。
「なんていうか、月兎って文香ちゃんにはとことん甘いわよねぇ」
「え? そう?」
「見てて思うもの。幼稚園の頃、友達いたけど、文香ちゃんに対する態度だけ違ったし」
「そうかなぁ……。まあでも、案外そうかも」
案外というか、自分でもそれは思う。
でもそれは仕方ないことだと思う。
父さんと、約束したから。
『絶対に大切にする』って。
「まあ、月兎はそれくらいが丁度いいのかもね」
「……はい。私も、すごく助かってます」
「そうそう」
話をしながらも、唐揚げはどんどん減っていく。
というか、半分以上は僕が食べている。
文香は少食なのはわかっているけど、なんだかんだ、母さんもあまり食べない人なのだ。
ちなみに、唐揚げは美味しいです。
☆☆☆☆
「そういえばさ、文香」
「……なぁに?」
ご飯を食べ、お風呂にも入り、今はお互いの部屋で窓を通じて話をする。
もう、これが僕たちの日課になりつつある。
「初めての学校、どうだった? がんばれそう?」
「……うん。月兎くんが心配するようなことはないと思う」
幼稚園の時、文香は運動神経は悪く、おまけにこの喋り方だ。
本当に小さないじめに遭った。
周りから奇異な目に見られたんだ。
そのせいで、文香はより一層心を閉ざし、幼稚園を何日間か休んだ。
文香の母である織恵さんも、これには心底困ったが、そこで僕の出番。
文香のことをいじめてくるやつと話し、口喧嘩まで発展。
先生が仲裁に入るまで、喧嘩を続けた。
そして先生が来たと当時に、僕は高らかに宣言もすることに。
『確かに文香はみんなが思うように、弱いのかもしれない。でも、だからと言って、弱い人を傷つけていい理由にならない。僕は、そんな人とは一緒に遊ばないし、話もしない』
そんなことがあった次の日、なんとか文香を引っ張り出し、また一緒に幼稚園に行くことができた。
思い返せば、あの頃だったかもしれない。
初めて文香が泣いたのは。
いじめを受けていた時は、泣きそうな顔になる時はあったけど、涙を流すことはなかった。
でも、僕が説得をしているときに、文香は泣きながら抵抗したんだ。
未だに、あの頃の光景は今でもはっきりと思い出せる。
ちなみに、文香の部屋には鍵があり、どうやって文香を説得させたかと言うと。
「……あの時のことはあまり……」
「ああ、ごめん。でも、文香とまた幼稚園に行けるとなって、僕は嬉しかったよ」
「……私も、また月兎くんと行けれるようになって嬉しかった。でも、次からはあんな無茶はしないでね?」
「いやあの時は、あの方法が一番だと思ったんだ」
外を挟んで、部屋が隣同士の僕たち。
部屋には鍵がしてあり、入ることは不可能。
だから僕は、窓から文香に呼びかけた。
『窓から離れて。そのまま、毛布をかぶっていてて!』
文香が言われたことをしてくれたのを確認した後、家にあったハンマーで窓を叩き割った。
そのまま、部屋に入り文香を説得したわけだ。
なかなかに名案だと思ったが、母さんからは普通に怒られた。
なんで怒られたかは、今でも納得できない。
ちなみに、文香の父さんと母さんは、文香が幼稚園にまた行くようになったので、窓を割ったことについては許してくれた。
母さんも見習うべきだと思う。
「まあとにかく、文香がまた引きこもらないようにならなければ、僕はそれでいいから。文香も、何かあったら言うんだぞ。僕は、文香の味方でいるから」
「…………はい」
恥ずかしそうに返事をする文香と話を切り上げ、明日のために寝ることとなった。
ちなみに、文香は一人で明日の用意をした。
幼馴染が好き過ぎて、幼馴染という単語がえっちに思えてきた。




