第1話 魔王と聖女の娘に転生しました
こんにちは、作者の星空りんです。
本作『魔王の娘 Re』は、以前の『魔王の娘』から世界観やキャラクター設定、物語の展開を大きく見直し、一から作り直した新しい物語です。
主人公の「りん」や「魔王の娘」という基本的なテーマは引き継ぎつつ、今回は人間の国での日常や学院生活、友達との交流を中心に、笑いあり、冒険あり、ときどきシリアスな異世界ファンタジーとして描いています。
旧作の続編ではなく、設定から物語まで新たに構築した、独立した作品となっています。
新しく生まれ変わった『魔王の娘』の世界を、楽しんでもらえたら嬉しいです!
目を開けた。
そう思ったのに、目の前には何もなかった。
暗いわけではない。
むしろ、眩しいくらいに白い。
上も下も、右も左も。
どこまで見ても真っ白で、壁もなければ天井もない。
足元に床らしいものも見えないのに、不思議と落ちている感覚はなかった。
「……なに、ここ」
思わず声が漏れる。
返事はない。
静かだった。
風の音も、人の気配もない。
自分の声だけが、何もない空間の中へ溶けていく。
りんは辺りを見回した。
「夢……?」
それにしては、妙に意識がはっきりしている。
試しに頬をつねってみる。
「……あれ」
痛くない。
少し強くつねり直してみても同じだった。
「ほんとに夢なのかな……」
『夢じゃないよ』
「ひゃっ!?」
突然聞こえた声に、りんは勢いよく振り返った。
けれど。
そこには誰もいない。
「誰!? 今、誰か喋ったよね?」
『喋ったよ』
「どこにいるの?」
『姿はないんだ。今は声だけだと思ってくれればいい』
「声だけって……」
少し気味が悪い。
でも、声そのものに怖さは感じなかった。
若いようにも聞こえるし、大人のようにも聞こえる。
男か女かも、よく分からない。
りんはもう一度、白い世界を見回した。
「じゃあ……ここはどこなの?」
『説明するのがちょっと難しいんだけどね』
声が少し考えるように間を置いた。
『簡単に言うなら、亡くなった人が次へ行くまでの場所かな』
「…………」
りんは黙った。
今聞いた言葉を、頭の中でゆっくり並べ直す。
亡くなった人。
次へ行くまで。
「それって……」
嫌な予感がした。
「わたしも、その“亡くなった人”なの?」
『うん』
「…………」
すぐには意味が入ってこなかった。
「わたし……死んだの?」
『そうなるね』
「本当に?」
『本当に』
りんはしばらく何も言えなかった。
怖い。
悲しい。
そんな気持ちがないわけではない。
でも、それよりも。
実感がなかった。
だって、こうして考えている。
喋ることもできる。
痛くもない。
苦しくもない。
「……どうして?」
『覚えてない?』
「え?」
『最後のこと』
最後。
言われて。
りんは目を閉じた。
ぼんやりと記憶を探る。
仕事が終わったのは、かなり遅い時間だった。
身体が重かった。
眠かった。
明日も仕事。
帰ったらお風呂に入って、そのまま寝よう。
そんなことを考えながら歩いていた。
駅。
階段。
足元。
一段踏み外して。
「……あ」
『思い出した?』
「階段……落ちたんだ」
『うん』
「それで……死んだ?」
『そうだね』
「…………」
しばらく黙ったあと。
りんは顔を覆った。
「死んだ理由としては、ちょっと地味じゃない?」
『最初に気にするところ、そこなんだ』
「だって……もっとこう、誰かを助けようとして、とかあるじゃん」
『疲れて階段から落ちました』
「わざわざ言い直さなくていいよ!」
思わず声を上げる。
姿の見えない相手が、楽しそうに笑った。
「笑うところじゃないと思うんだけど」
『ごめんごめん。でも、少し安心した』
「なにが?」
『ちゃんと喋れるくらいには落ち着いてるみたいだから』
「落ち着いてるというか……まだ自分のことだって感じがしないだけかも」
『それでもいいよ。すぐに全部受け入れろなんて言わないから』
さっきまで軽かった声が、少しだけ穏やかになった。
りんは小さく息を吐いた。
死んだ。
まだ、その言葉は自分から遠い。
でも。
ここにいる理由は、少し分かった。
「さっき、“次へ行くまで”って言ったよね」
『言ったね』
「次って、どこ?」
『生まれ変わってもらう』
「生まれ変わる……?」
『うん。今までとは違う世界で、もう一度生きてもらうことになる』
りんは眉を寄せた。
「違う世界って、どういうこと?」
『きみが今まで暮らしていたところとは、少し仕組みの違う世界だよ』
「仕組み?」
『たとえば、魔法がある』
「……魔法?」
思わず聞き返した。
『本当にあるよ。火を出したり、水を操ったり。治癒の術もあるし、空を飛ぶ方法だってある』
「ちょっと待って」
さっきまでとは違う意味で、頭が追いつかない。
「じゃあ……剣で戦ったりする人もいる?」
『いるね』
「魔物とかも?」
『いる』
「ドラゴンも?」
『いるよ』
りんはしばらく黙った。
それから、おそるおそる口を開く。
「それって……物語に出てくる異世界みたいな感じ?」
『そう考えてもらえば、だいたい合ってる』
「ほんとにあるんだ……」
死んだ話をしていたはずなのに。
気づけば、りんの声には少しだけ期待が混じっていた。
「じゃあ、わたしも魔法使えるの?」
『使えるよ』
「ほんとに!?」
『急に元気になったね』
「だって魔法だよ? ずっと、使えたらいいのにって思ってたもん」
『知ってる』
「……なんで?」
『一応、きみの次を案内する役だからね。ある程度は知ってるよ』
「そういう係の人なんだ」
『まあ、そんな感じ』
「最初に言ってよ」
『聞かれなかったから』
「聞けるわけないでしょ。起きたら真っ白だったんだから」
りんは少し頬を膨らませた。
けれど。
胸の奥には、小さな明るさが灯っていた。
魔法。
前の世界では何度も欲しいと思った。
雨の日。
重たい荷物を抱えて帰るとき。
疲れ切って、あと少しだけ力があればと思った夜。
魔法で全部どうにかなればいいのに。
そんなことを何度も考えた。
「でも、魔法があるってだけで、わたしが使えるとは限らないんじゃないの?」
『そこは大丈夫』
「どうして?」
『きみは、かなり使えるようになる予定だから』
「かなり?」
『かなり』
「すごく曖昧なんだけど」
『そのくらいの方が、向こうへ行ってから楽しみがあるでしょ』
「どれくらいか教えてくれてもいいじゃん」
『全部知ってから始めるより、自分で確かめた方が面白いよ』
「……絶対なんか隠してる」
『どうだろうね』
「怪しい」
声は答えず、ただ楽しそうに笑った。
りんは少し不満だったけれど。
それ以上は聞いても教えてくれそうになかった。
「ほかには?」
『ほか?』
「生まれ変わるなら、家とか。家族とか」
『ああ。それならいるよ』
「ほんと?」
『お父さんと、お母さん』
その答えを聞いて。
りんは少しだけ黙った。
「……そっか」
『うん』
声の調子が、ほんの少し変わった。
『今度は、ちゃんと甘えていいと思う』
「…………」
『何でも一人で抱え込まなくていい。迷惑をかけたら嫌われるとか、頑張らないと認めてもらえないとか。そんなこと、ずっと考えなくてもいい家族だから』
胸の奥が、ちくりとした。
思い出しかけたものがある。
前の人生の。
あまり楽しくない何か。
でも。
りんは無理に思い出すのをやめた。
「……大事にしてもらえる?」
『たぶん、心配になるくらい』
「心配になるくらい?」
『行けば分かるよ』
「またそれ」
少し笑ってから。
りんは尋ねた。
「どんな人なの?」
『お父さんは魔王』
「…………」
りんは瞬きをした。
「今、なんて?」
『魔王』
「魔王って……あの、悪いお城に住んで、勇者に倒される方の?」
『ずいぶん偏った印象だね』
「だって物語だとだいたいそうじゃん」
『向こうでは必ずしもそうじゃないよ。魔族の国を治める王のことを、魔王と呼ぶんだ』
「……王様なの?」
『そういうこと』
「じゃあ、世界を滅ぼしたりは?」
『しないよ』
「よかった……」
そこで一度、安心する。
でも。
次の言葉はもっと予想外だった。
『お母さんは、人間の聖女』
「…………え?」
『聖女』
「ちょっと待って」
りんは思わず手を上げた。
「お父さんが魔族の王様で、お母さんが人間の聖女なの?」
『そう』
「それって……仲悪くないの?」
『種族同士の関係という意味なら、あまり良くないね』
「じゃあ、なんで結婚してるの?」
『それは本人たちに聞いてよ』
「そこ教えてくれないの?」
『恋愛事情までは担当外』
「急に役所っぽくなった」
『最初からそんな感じだよ』
「自分で言うんだ……」
りんは考え込んだ。
魔族の王様。
人間の聖女。
その二人の娘として生まれる。
さらに。
前世の記憶まで持っていて。
魔法もかなり使えるらしい。
「……ほんとに普通に暮らせる?」
『普通に暮らせるかどうかは、普通の基準によるかな』
「その言い方、絶対普通じゃないよね?」
『少なくとも、退屈はしないと思う』
「別にそこまで刺激のある人生をお願いした覚えないんだけど……」
りんがため息をついた、そのとき。
真っ白だった世界に、淡い色が混じり始めた。
金色。
紫。
深い青。
夜が明ける直前の空みたいな色が、白い空間をゆっくり塗り替えていく。
「……なにこれ」
『そろそろ時間みたいだね』
「もう行くの?」
『うん』
「まだ分かんないこといっぱいあるんだけど」
『向こうで一つずつ知ればいいよ』
「ずっとそればっかり」
『その方が楽しいって』
「そっちは楽しいかもしれないけど」
光が強くなる。
少しずつ。
声が遠くなっていく。
『りん』
「なに?」
少しの間があった。
『今度は、ちゃんと楽しんでおいで』
その言葉だけ。
これまでとは違って聞こえた。
軽くもなく。
冗談でもなく。
まるで。
本当に送り出してくれているみたいだった。
りんはしばらく黙って。
それから、少しだけ笑った。
「……うん」
『いってらっしゃい』
「いってきます」
光が弾けた。
◇ ◇ ◇
「陛下、まだです!」
「もうよいだろう!?」
「よくありません。生まれてからまだ数分ですよ!」
「数分も待った!」
「数分しか、です!」
次に意識がはっきりしたとき。
最初に聞こえてきたのは。
やけに大きな男の声だった。
(……うるさい)
二度目の人生で。
最初に抱いた感想が、それだった。
目を開けようとしても、視界はぼんやりしている。
身体も思うように動かない。
柔らかい布に包まれているようだった。
(あ……)
そこで、ようやく気づく。
(赤ちゃんからなんだ)
生まれ変わる、としか聞いていなかった。
てっきり、もう少し大きくなったところから始まるものだと勝手に思っていた。
「セレスティア。本当に身体は大丈夫なのか? 先ほどの医師をもう一度呼んだ方がいいのではないか?」
「あなた。もう三回も診てもらっています」
「だが、まだ痛みが残っているかもしれないだろう。無理をしているなら今すぐ」
「大丈夫です。それより、いつまでそこを行ったり来たりしているつもりですか?」
「いや、それは……」
「娘の顔を見たいのでしょう?」
「…………見たい」
「でしたら、こちらへ来てください」
「よいのか?」
「そのために待っていたのでしょう?」
ゆっくりと足音が近づいてくる。
ぼやけた視界の中。
大きな影が見えた。
黒い髪。
頭から伸びた立派な角。
鋭い赤い瞳。
黒を基調にした豪華な衣装。
(……あ)
さっき聞いた話を思い出す。
(この人が、お父さん……?)
そして。
魔族の国を治める王。
魔王。
なるほど。
確かに、それらしい。
ものすごく強そうで。
何もしなくても周りが道を開けそうな雰囲気がある。
ところが。
その男は、りんの顔を見るなり。
ぴたりと止まった。
「…………」
「あなた?」
「……小さい」
(え)
「こんなに小さいのか……」
さっきまで城中に響きそうな声を出していた人とは思えない。
恐る恐る近づいてきて。
大きな手から、一本だけ指を差し出した。
「手も……本当に小さいな」
りんは何となく、その指を握った。
「…………」
また止まった。
「セレスティア」
「はい」
「握った」
「ええ、握りましたね」
「我の指を」
「見れば分かりますよ」
「離さない」
「握り返しているだけでしょう?」
「……かわいい」
声が震えている。
隣から、小さな笑い声が聞こえた。
「あなた、泣いています?」
「泣いていない」
「目が赤いですよ」
「元から赤い」
「そういう意味ではありません」
(……魔王って)
もっと怖い人かと思っていた。
目の前にいるのは。
娘に指を握られただけで、今にも泣きそうになっている人だった。
「しかし……本当に、我らの娘なのだな」
その言葉は。
さっきまでより、ずっと静かだった。
「ええ」
女の人の声が、優しく返す。
「わたしたちの娘です」
今度は。
柔らかな腕に抱き上げられた。
霞んだ視界の向こう。
白金色の髪が見える。
とても穏やかな顔で。
女の人が、りんを見つめていた。
「こんにちは」
(……この人が)
「わたしがママですよ」
人間の聖女。
セレスティア。
「ずっとお腹の中にいたから、もしかしたら、わたしの声はもう知っているかもしれないわね」
何を言っているのか、ちゃんと分かる。
でも。
それ以上に。
その声を聞いていると、不思議と安心した。
「それで、こちらがパパです」
「待て、セレスティア」
「なんです?」
「その紹介は、少々簡単すぎないか?」
「では、どう紹介するつもりです?」
男は少し姿勢を正した。
「我はレグナリア魔導国を統べる魔王、ヴァルディス・レグナリア・アステリスである、と」
「生まれたばかりの娘に?」
「…………」
「怖がられますよ?」
「それは困る」
(困るんだ……)
思わず笑いそうになった。
もちろん。
赤ちゃんの身体では、笑う代わりに。
「あぅ」
小さな声が出ただけだった。
二人が同時に止まる。
「……今、喋ったぞ」
「赤ちゃんですから、声くらい出しますよ」
「しかし、我を見ながらだった」
「わたしの方も見ていましたよ?」
「では、もう我らを認識しているのではないか?」
「生まれて数分ですよ?」
「我らの娘だぞ。あり得る」
「何の根拠にもなっていません」
「天才なのかもしれん」
「もう親バカになっているのですか?」
呆れたように言いながら。
セレスティアは笑っていた。
ヴァルディスも。
少しだけ照れたような顔をしている。
りんは二人を見た。
(……なんか)
思っていたより。
ずっと普通だった。
魔王と聖女。
そんな肩書きだけ聞けば。
もっとすごくて、怖くて。
自分とは遠い人たちを想像していた。
でも。
今目の前にいる二人は。
ただ。
生まれたばかりの娘を見て、嬉しそうにしている。
(この二人なら……)
ちゃんと。
家族になれるのかもしれない。
「名前は、決めてあるでしょう?」
セレスティアが言った。
「ああ」
ヴァルディスの表情が少しだけ変わった。
魔王の顔ではなく。
父親の顔で。
りんを見る。
「リン」
その音を聞いた瞬間。
胸の奥が、小さく揺れた。
「リン・レグナリア・アステリス」
(りん……)
前の人生と同じ名前。
どうしてなのかは分からない。
偶然なのか。
あの声の主が合わせたのか。
それとも。
もっと別の理由があるのか。
でも。
その名前は。
驚くほど自然に、自分の中へ入ってきた。
「我らの娘だ」
ヴァルディスの指が。
そっと頬に触れる。
「生まれてきてくれて、ありがとう」
その一言に。
胸の奥が、少しだけ温かくなった。
セレスティアも。
りんを抱いたまま、優しく微笑む。
「これから、たくさん楽しいことをしましょうね」
(……うん)
返事はできない。
だから。
りんは。
まだ近くにあったヴァルディスの指を。
もう一度、小さな手で握った。
◇ ◇ ◇
それから十三年。
魔王ヴァルディスと。
元聖女セレスティアの娘。
リン・レグナリア・アステリスは。
父譲りの赤い瞳と、母によく似た白金色の髪を持つ少女へと成長した。
そして。
十三歳になったある日のこと。
どおおおおおんっ!!
レグナリア魔導国。
魔王城の中庭に。
城の窓を震わせるほどの轟音が響いた。
庭にいた鳥たちが、一斉に空へ逃げていく。
しばらくして。
もうもうと立ち込める土煙の中から。
「……思ってたより、大きい音したね」
どこかのんきな声が聞こえてきた。
「音の問題じゃありませんよ、お嬢様!」
すぐ隣から。
もう一人の少女の声が飛ぶ。
「標的がありません! その後ろの壁もありません! というか、なんで初級の火球を一発撃っただけで、こんなことになってるんですか!?」
「でも、今日はちゃんと小さくしたんだよ? 昨日パパに、威力を広げないで一つにまとめるといいって教えてもらったから」
「なるほど。だから周りへの被害は減って、正面だけ綺麗に吹き飛んだんですね」
「うん。たぶん成功」
「成功じゃありません!」
土煙が少しずつ晴れていく。
標的が置かれていた場所には。
大きくえぐれた地面だけが残っていた。
その向こうの石壁には、ぽっかりと穴が開いている。
りんはしばらくそれを眺めたあと。
自分の手を見た。
「……おかしいなぁ。ほんとに小さくしたのに」
「お嬢様の場合、大きさと威力がまったく比例してないんですよ!」
「でも、昨日より上手になってない?」
「そこだけ切り取れば、ものすごく上達してますけど!」
「じゃあ褒めて?」
「嫌です」
「即答……」
りんは少し頬を膨らませた。
黒髪の猫魔族の少女は、そんな主人を見ながら大きなため息をつく。
ネネ・クローヴェル。
りんと同じ十三歳。
幼い頃からそばにいる。
侍女であり。
護衛であり。
そして。
りんが何かをやらかしたとき、だいたい最初に頭を抱える人でもあった。
「……ネネ」
「なんですか」
「これ、怒られるかな」
「普通なら怒られます」
「パパに?」
「陛下ですか?」
ネネは壊れた壁を見る。
それから。
りんを見る。
「たぶん、“よくそこまで威力を絞った”って褒めると思います」
「じゃあ大丈夫じゃん」
「セレスティア様には怒られると思いますよ」
「…………」
りんの顔から。
ほんの少しだけ笑顔が消えた。
「ネネ」
「はい」
「今の、なかったことにできない?」
「無理です」
「まだママには見つかってないかも」
「今ので城の窓が全部揺れましたよ」
「風ってことに」
「快晴です」
「地震?」
「局地的すぎます」
「…………逃げる?」
「付き合いません」
「護衛なのに?」
「こういうときだけ護衛を盾にしないでください!」
ネネの声が。
中庭いっぱいに響いた。
魔王の娘は。
今日も元気に育っていた。
少々。
元気すぎるくらいに。




