第69話 騎士団新人リナ・ポートフェン 宰相様に担がれて
「そういうところで、連れて行って良いでしょうか。今日はもう訓練にならないでしょう? リナ様」
ひょいと、リナは宰相に抱えられた。
「ゲッ」
(宰相さ…ま? 激おこ状態なんですけど)
「ゲッとは、何です。ゲッとは。騎士団に入ってガラが悪くなりましたか?」
「ああ、どうぞ。持って行って下さい」
(団長、ひどい)
「貴女には色々聞きたいことがあるんですよ。私の元に上がって来た書類とか、この現状とか」
(セドリック、抑え切れてないじゃん。馬鹿たれ)
結局、宰相に俵担ぐみたいにして執務室に連れて行かれてしまった。
ズボンはいてるから気にしなくて良いけど、結構体制的に辛い。
(頭、ボーッとするし)
リナが宰相に担がれたまま執務室に着くと、宰相に呼び出されたのか、セドリックもいた。
リナはソファーにゆっくり降ろされた。
セドリックはリナの足首を見るなり眉をひそめる。
「怪我したのか?」
「はい。すみません。剣受け損ねたときに、足首ひねっちゃて」
「医務室で治療して貰ってるので、大丈夫でしょう。それよりこれは何ですか?」
宰相は、机の上から1枚の紙を持ってきた。
「辞令?」
渡された紙に、辞令書って書いてたので、そのまま言ってしまった。
「そういう抗議は、近衛騎士団長に言って下さい」
「抗議文は出してますし、直接抗議もしてきました。ですが、本人の同意を得てる、と言われたものはどうしようも無いのですよ。リナ様の言動は私には覆せません」
(え……と? つまり。司令官見習いに任ずるって事?の正式な辞令……か)
「クランベリー公爵様と交渉したときのですね」
「何を交渉したんですか?」
「私が行動するときに、騎士団全てと貴族を抑えてて下さいって」
「交渉は成立したんですね、辞令がまわって来たって言うことは。それで? 貴女は司令官なんでしょう? なんで、騎士団の新人やっているんです?」
「このままでは、使い物にならないからですよ」
「騎士団が?」
「わたしが、ですよ。なんか、クランベリー公爵様とも同じ遣り取りしたんですけど」
「貴女が使い物にならないはず無いでしょう? クランベリー公とも渡り合える方が、何を言ってるんです」
宰相が呆れたようにリナに言う。
「信用してもらえませんからね。外部から来た子どもの、上から目線の命令に誰が従います?」
たとえ、軍隊がそういうものだとしても、人間の集団である限り不満が溜まる。
「信用ですか……では、貴女は私たちを信用できますか?」
コトンと目の前に小瓶が置かれた。
「これはデュークが貴女に飲ませたものと、同じ液体が入ってます。今、ここで飲めますか?」
あの時と同じって事は、睡眠薬かぁ。リナは宰相とセドリックを見た。
じっとこっちを見てるだけで、何の反応もしてない。
(まぁ良いか、この2人だし)
小瓶を手にとって、リナはクイッと一口で飲んだ。元々、一口分しか無いしね。
「これで、良いですか?」
「え? ……ええ」
ためらいも無く、飲んで見せたリナに宰相は困惑してた。
「うわっ、本当に飲みやがった」
セドリックも、もう少し疑うと思っていたのだろう。
最悪、自分も飲むハメになるのかもって。
(って、飲むと思ってなかったんかい。あ~、クラクラする。これ、強かったんだよなぁ)
「す……みま……せん。寝……」
最後まで言えなかった。お休みなさい。
「何にしろ、飲んでくれて良かったですね」
「あんまり、信用されても困るんだけど……な」
「でも、これで、一番辛い時期は眠って乗り越えられますよ。熱も上がって来てますし。奥の仮眠室に連れて行ってあげて下さい。今度は悪さしてはダメですよ」
「しないって……」
セドリックは、リナを抱っこして仮眠室に連れて行った。




