第57話 宰相様とセドリックの謹慎処分
ライラの案内で、リナ達は宰相の執務室に向かった。
先に訪問を告げる文官をライラが執務室に向かわせたので、リナ達が付いた頃には、書類の整理を終えるところだった。
「お忙しいところ、すみません」
宰相の机のところまで行って、リナは恐縮して言う。
ライラは入り口付近で待機していた。クリフォードは私のすぐ後ろに立っている。
「どうしました?」
宰相は、穏やかな声でリナに訊いてくる。
「今、王太子殿下のところにクランベリー公爵が訪ねてきているようなのですが、宰相様の方で話が着かなかったのでしょうか?」
宰相は、リナの後ろにいるクリフォードを睨み付ける。珍しいものを見た。
いつも無表情に近いか、少し笑ってる顔しか見てなかったから。
この間、怒っていたときですら、リナには露骨に怒った顔をしていない。
「リナ様。教えて下さってありがとうございます。今の発言で、王太子殿下の元に何名か向かいました」
リナには穏やかな顔を見せるのに、視線を後ろに向けると厳しい顔になる。
「クリフォード、どういう事ですか。クランベリー公は穏健派とはいえ第二王子派なのですよ、それを」
「いずれ向き合わねばなりません。いつまでも、このままではいられないでしょう」
(クリフォード?)
「ああ、すみません。リナ様、ご用件はそれだけでしょうか?」
宰相はこれ以上リナに話を聞かせる気が無いのだろう、話題を変える。
「まだ、本題があります。セドリック様の謹慎期間が長いように感じますが」
宰相が露骨に怪訝そうな顔をした。
「リナ様に不埒な行為を働いたと伺っておりますが」
「不埒?」
リナは部屋の入り口付近にいるライラの方を見た。
(いや、この世界の基準がわからない。何を持って不埒とするのか。たかが年下の男の子から頼られただけ……って、ん? あれ??)
「見たままを報告致しました。男子寮の廊下で、セドリックがリナ様を後ろから抱きしめて肩口に顔を埋めていた、と。あげくに任務放棄して逃げました」
(年下、私じゃん。なんか……そういう言い方すると、本当に不埒なことしてるみたい)
セドリックから、拘束されたこともあるけど……。
この前のセドリックおかしかったし、単に甘えてきたんだと思ってたけど……よく考えたら年下の女の子に甘えたりしないよね。
(これ、否定したら私の貞操観念疑われる? いやいやいや、セドリックには復帰してもらわないと困る。いないと不便なのが良くわかった)
リナの後ろで、クリフォードがこめかみを押さえてる。
「もう、降格処分で良いのでは?」
(容赦ないなぁ。派閥違うからって。私は子ども私は子ども私は子ども……よし)
「あの……兄様たちにも、よく抱っこしてもらってるのですが、なにか問題でも?」
「では、私ともその抱っことやらは出来ますか?」
リナの発言を受けて、クリフォードが言う。
ライラが警戒態勢に入ってるけど。宰相の方は怖くて見れません。
(って言うか、あんた今更でしょう。この前私に何してくれた)
「抱っこも何も、クリフォード様からは公衆の面前で、何度も抱き上げられましたが」
しれっとリナは言う。にっこり、笑って。
「あれはダンスの振り付けでしょう?」
クリフォードが呆れたように言う。
「でも、そこだけとったら、なんてことしてるんだって事になりますよね」
「同じだと、言いたいのですか?」
「セドリックは、ライラの存在を知ってましたし。その上で、不埒なことはしないでしょう?」
「それは……まぁ。そうでしょうね。彼の前で、ライラの任務も言い渡してますから。分かりました、リナ様がいいのであれば、彼の謹慎を解きましょう」
良かった、宰相が納得してくれた。




