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第35話 リナと三つの条件

 王宮に着いたら、宰相が迎えに出ていた。

 一緒に、国王陛下の執務室に向かう。許可が出てるとはいえ、傍目には子爵令嬢。

 王宮内を、勝手にウロウロする事は出来ない。


「リナ・ポートフェンです。失礼致します」

 と言って、リナは執務室に入ってすぐに礼を執った。

「この度は大義であったな。よく王太子殿下の暗殺計画を食い止めた」

 国王陛下は、にこやかにリナを迎えた。

「わたくしの功績ではありません」

「協力者をよく使いこなしてたし、エイリーンを無傷で救いだしたと聞いておるぞ。それ以上何がある?」

 国王陛下は、あくまでも上機嫌という感じで通している。


「陛下の依頼を受けるにあたって、私が3つの条件を出したことを覚えていらっしゃいますでしょうか」

「もちろんだとも、ほら、こうして公文書にもしておるからな」

 国王は、公文書の控えを引き出しから出して見せた。

 ちなみに本物はきちんとした文章に直され。双方の署名捺印の上、国庫に厳重保管されている。


 その3つの条件とは

 ・何かあっても家族や協力者に類が及ばないこと

 ・協力者の身の安全

 ・場合により事件や噂のもみ消し

 である。


「だからそなたの兄もセドリックも無罪放免だっただろう? まぁ、王太子の怒りは、完全に八つ当たりだったからのう。今、反省させておるところだ」

「デューク・リネハンも私の協力者です」

「そうであろうな。書類をとりまとめて置いてたのは、デューク・リネハンであろうからな」

「それでしたら」

「だが、エイリーン誘拐の実行犯だぞ。そなたに眠り薬を飲ませ、監禁までしておるではないか。言い逃れは出来まい」


 エイリーンの誘拐をデュークが? なぜ、そんなことを……。

「これを許したら、第二、第三のリネハン伯爵が出てくる」

 国王陛下は、ピシャッと言った。

 リナもそうだろう事は分かっていた。

 これを助けてしまったら、他の過激派が何かしたときに罰せなくなる。

「とはいえ、デュークは次世代の側近候補まで上がった男です。私たちも、身分を剥奪し、どこかの子飼いとして生かす道を探ったのですよ。でも……」

 会話が途切れたのを見て、宰相が横から口を挟んできた。


「本人が、拒みました。自分の代わりに妹たちを助けて欲しいと」

 はじかれたように、リナは顔を上げる。

「このままでは、妹たちも犯罪者の直系として極刑に処されますから。さすがに優秀ですよ。親戚にずっと預けられていて、計画に無関係だと誰の目にもわかるように細工されてました。これでしたら、救うことも出来ます」

 妹たちが大切だと言ってたデュークらしい。


「あれもこれもとは、いかんのう、リナよ。判断はそなたに任せる」

「国王陛下?」

「わしの結論は出てる。最初に報告がいったと思うがな」

 国王陛下の判断は、当事者夫妻と直系の子孫の斬首刑……一切の救済は無い。

「リナ。そなたは私の判断を唯一覆せる人間なのだからな」

 そう言ってリナのネックレスを指さす。

(これを身につけれるというのは、そういう事なのか)


「リナ様。酷なようですが、デューク・リネハンに伝えにいってもらえますか? これは、私からのお願いなので、拒否権はありますが」

 このお願いが国王陛下なら強制で、宰相なら単なるお願い。

(そういうことか。だけど、私が行かないと、国王陛下が下した刑がそのまま執行されてしまう)

 拒否権など、無いのと同じではないか……リナは、両手を握りしめた。

 そうして、深呼吸をし国王陛下の前で臣下の礼を執る。

「その役目、謹んでお受け致します」

 そう言ってリナは宰相と一緒に国王の執務室を出た。

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