「落ち葉の約束」
第4話 – 1ページ目:イロの不在と不信
秋の初め – カフェ、午後
黄色く色づいた葉が歩道に散らばっていた。
カフェの半開きのドアから冷たい秋の風が吹き抜け、挽きたてのコーヒーの香りを街へと運んでいた。
ミヤは、しばらく入口の前に立っていた。
あの祭りの夜から、イロのことは一日たりとも頭から離れなかった。
交わされた約束。
返事のないメッセージ。
そして、終わることのなかったあの夜。
彼女はドアノブに手をかけ、静かにドアを押し開けた。
小さなベルの音が、店内に響く。
カフェは静かだった。数人の客が隅で静かに話し、柔らかな音楽が流れている。
しかし――
イロの定位置は、空っぽだった。
タクミがカウンターの中に立ち、カップを丁寧に棚へと並べている。
ミヤが歩み寄る。
「あの…イロは?」
タクミの手が、一瞬止まった。
彼は顔を上げ、ミヤを一目見てから、再び作業に戻った。
「……知らないです。今日は休みかもしれません。」
ミヤが、眉をひそめる。
「一緒に働いてるのに、知らないの?」
タクミの指が、カップの縁で止まった。
そして、ゆっくりと答えた。
「本当に知らないんです。信じてください。」
ミヤは、数秒間、彼の顔をじっと見つめた。
タクミの目に、いつもの落ち着きはなかった。
何かを隠しているようだった……
あるいは、何かを言うことを許されていないかのように。
ミヤは、ただ静かに言った。
「……そうですか。」
バッグを手に取り、何も注文せずにカフェを出た。
通り – 数分後
風が、黄葉をアスファルトの上で踊らせていた。
落ち葉が、ミヤの足元で乾いた音を立てる。
思わず、唇が動いた。
「イロ……何を隠してるの?」
数歩歩いて、立ち止まる。
深く息を吸った。
「それに……」
「タクミは、何を知ってるの?」
彼女は顔を上げた。
灰色の雲が空を覆っていたが、まだ雨は降っていなかった。
すべてが沈黙の中にあった。
風だけが吹いている――
そして、答えの見つからない問いだけが、そこにあった。




