第2章: 雪の約束
第2話 – 1ページ目:冬の始まり
午前7時23分。
雪が、とても静かに窓ガラスに積もり始めていた。
激しくない。派手でもない。ただ、季節が変わったことをそっと思い出させるように。
ミヤは、もう起きていた。
目線は天井の方を向いているが、そこに何かを見ているわけでもなさそうだった。ただ、家の中の物音に耳をすませていた。壁の間を静かに歩く静けさに。
しばらく、そのままだった。
それから、手を枕の下に伸ばし、スマホを取り出した。
画面に明かりが灯る。
何をするでもなく、ただそれを見つめていた。
この二日間、ずっと頭の中にこびりついている言葉があった。正確な言葉は思い出せない。だけど、その感触だけは残っていた。
「詩はただの言葉じゃない…ものの見方だ。」
なぜ、そんなことがずっと頭から離れないのか、彼女にはわからなかった。
そっと息を吐き、それ以上考えるのをやめて、番号を押した。
プルルル…
プルルル…
相手の声が聞こえた。
「…もしもし?」
ミヤは、しばらく何も言わなかった。それから、静かに言った。
「おはよう…イロ。」
電話の向こうで、一瞬の間があった。
「ミヤ? こんな朝早くに? どうしたんだ?」
声は、寝ぼけてはいなかった。しかし、完全に目が覚めているわけでもなさそうだった。
ミヤは窓の外を見た。雪はまだ降り続いている。
言った。
「外、見た?」
「…雪か?」
「うん。」
また、間があった。
それから、イロが少しだけ優しい声で聞いた。
「どこに行きたいんだ?」
ミヤは、答えを用意していなかった。でも、ずっと前から決めていたみたいに言った。
「公園…川のそばの。」
イロの息遣いが、受話器の向こうで聞こえた。
「わかった。30分後な。」
通話が切れた。
ミヤはスマホを置いた。
しばらく、ただ座っていた。
それから、ゆっくりとベッドから出た。
特別に急いでいるわけでもない。特別な理由があるわけでもない。ただ、この考えから抜け出したくなかった。
窓の外を眺めた。
雪は、まだ降り続いていた。
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— 街の向こう側 —
イロはスマホをポケットから取り出し、もう一度それを見つめた。まるで、今のが本当に現実だったのか、確かめたいかのように。
それから、立ち上がった。
彼の部屋は小さかった。何の変哲もない。語るべき何かなんて、何もなかった。
ただ、コーヒーカップが一つ、机の上に置いてあった。もう冷めていた。
コートを羽織った。
鏡の前に立ち、数秒間、自分を見つめた。
特別な考えがあるわけでもなく、ただ、ぼんやりと。
それから、唇が動いた。
「ミヤ…」
まるで、この名前が本物かどうかを確かめるように。
家を出た。
空気は冷たかった。
雪が、彼の肩の上に舞い降りた。それを払おうとはしなかった。
歩き出した。
速くもなく、遅くもなく、ただ歩いた。
そして、その心の中で、自然と一つの考えが芽生えていた。
「この約束――普通じゃない。」




