表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜の風景  作者: 暗中光
2/16

第2章: 雪の約束

第2話 – 1ページ目:冬の始まり


午前7時23分。


雪が、とても静かに窓ガラスに積もり始めていた。

激しくない。派手でもない。ただ、季節が変わったことをそっと思い出させるように。


ミヤは、もう起きていた。


目線は天井の方を向いているが、そこに何かを見ているわけでもなさそうだった。ただ、家の中の物音に耳をすませていた。壁の間を静かに歩く静けさに。


しばらく、そのままだった。


それから、手を枕の下に伸ばし、スマホを取り出した。


画面に明かりが灯る。


何をするでもなく、ただそれを見つめていた。


この二日間、ずっと頭の中にこびりついている言葉があった。正確な言葉は思い出せない。だけど、その感触だけは残っていた。


「詩はただの言葉じゃない…ものの見方だ。」


なぜ、そんなことがずっと頭から離れないのか、彼女にはわからなかった。


そっと息を吐き、それ以上考えるのをやめて、番号を押した。


プルルル…

プルルル…


相手の声が聞こえた。


「…もしもし?」


ミヤは、しばらく何も言わなかった。それから、静かに言った。


「おはよう…イロ。」


電話の向こうで、一瞬の間があった。


「ミヤ? こんな朝早くに? どうしたんだ?」


声は、寝ぼけてはいなかった。しかし、完全に目が覚めているわけでもなさそうだった。


ミヤは窓の外を見た。雪はまだ降り続いている。


言った。

「外、見た?」

「…雪か?」

「うん。」


また、間があった。


それから、イロが少しだけ優しい声で聞いた。

「どこに行きたいんだ?」


ミヤは、答えを用意していなかった。でも、ずっと前から決めていたみたいに言った。


「公園…川のそばの。」


イロの息遣いが、受話器の向こうで聞こえた。


「わかった。30分後な。」


通話が切れた。


ミヤはスマホを置いた。


しばらく、ただ座っていた。


それから、ゆっくりとベッドから出た。

特別に急いでいるわけでもない。特別な理由があるわけでもない。ただ、この考えから抜け出したくなかった。


窓の外を眺めた。


雪は、まだ降り続いていた。


---


— 街の向こう側 —


イロはスマホをポケットから取り出し、もう一度それを見つめた。まるで、今のが本当に現実だったのか、確かめたいかのように。


それから、立ち上がった。


彼の部屋は小さかった。何の変哲もない。語るべき何かなんて、何もなかった。


ただ、コーヒーカップが一つ、机の上に置いてあった。もう冷めていた。


コートを羽織った。


鏡の前に立ち、数秒間、自分を見つめた。


特別な考えがあるわけでもなく、ただ、ぼんやりと。


それから、唇が動いた。

「ミヤ…」


まるで、この名前が本物かどうかを確かめるように。


家を出た。


空気は冷たかった。


雪が、彼の肩の上に舞い降りた。それを払おうとはしなかった。


歩き出した。


速くもなく、遅くもなく、ただ歩いた。


そして、その心の中で、自然と一つの考えが芽生えていた。


「この約束――普通じゃない。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
夜の風景、とても美しくて心に残りました。 静かな世界観と詩の表現に深く感動しました。ありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ