無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第12話 「鏡合わせ」
禍々しいオーラ、殺気の強い視線と邪悪なる波動、
全てが混沌に満ちている。
九本の尻尾を大きく逆立てさせ、
脅威的な力をこれでもかと思わせる風格、
やはり、九尾の力は凄まじい、
結界の外からでも十分と伝わる。
なのに・・一歩も引かない鏡之介さんと鏡子さん、
流石だ、もう覚悟を決めている。
「ほう・・逃げも隠れもしないとは・・流石だな」
「当たり前じゃボケ・・散々鏡子ちゃんを泣かせこの場に立ったんだ・・罪滅ぼしになるかならないかじゃない、今ここで・・名誉挽回汚名返上と行こうじゃん」
「ハッ!そんだけの覚悟があるなら・・もう心配する必要もねぇな?」
「あたりまえだよ・・鏡子ちゃん、何百年君と生きたと思っている?」
「知らない、でも・・楽しかった事も苦しかった事も全部不思議と覚えている・・それくらい・・今、俺たちはつながっているよ」
信頼の意思を見せつける二人、
ここまで輝かしい二人を見たのは初めてだ。
この流れなら・・行けるッ!
「小賢しい・・そんな物は無意味だと・・分からせてくれるッ!姉さんッ!一撃で決めるッ!【無双国竜】の準備ッ!」
「はいさーッ!言われなくても・・準備はとっくに完了してんのよねッ!」
感じる・・何か強い技が来る。
だけどもう一つ感じるモノがある。
それはあの二人の勝機だ。
今の二人なら、絶対にどんな絶望も打ち勝てる。
「行くぞ・・これがッ!【無双黒竜】ッ!!」
「ハイサァァァッ!!」
ズバァァァァッ!!
一瞬にして放たれた無数の札ッ!
そしてシャオクウの袖から出てくるどこまでもカクカクと伸び続け、
鏡子さんたち目掛けて刺し貫こうと特攻する無数の槍ッ!
さらにシャオランから放たれる避けられないかもしれないほどの、
弾幕と言えるほどの黒く禍々しい魔法弾の数々ッ!
そこには槍が放たれて、魔法が放たれの繰り返し、
激しく荒ぶり舞い続け槍と魔法の弾幕を張り巡らせるシャオランッ!
神々しいオーラ放ち無数の槍や札を袖から出しづけるシャオクウッ!
2人の激しい攻撃が鏡之介さんと鏡子さんを襲うッ!
「行くよッ!鏡子ちゃんッ!!」
「ああ・・分かってるぜッ!」
2人はともにそれを素早く避け続けながら、
離された距離を縮めようと避けて走り舞い避ける。
こんな激しい絵図らかつて戦いを見た中であのジンとメリルの戦いを思いだす。
アレは打撃の戦いだが、こちらは放たれる攻撃を走り避けなければいけない、
無理ゲーと言った感じの避けゲーッ!
否、これはゲームなんかじゃない、
僕の目の前で起きているのは本当の戦いッ!
この完璧すぎる攻撃をこんな鮮やかに、
こんな自らの技を多用して避ける事は彼らにしかできないであろうッ!
「今なら・・行けるッ!」
鏡子さんがいち早くシャオランに近づけた。
宙に舞う鏡子さん目掛けて今度こそと右手に力を溜めながら飛び上がる。
真っ赤に燃える鉄拳、
それはまるで不死鳥を描様に燃え上がる火の鳥ッ!
彼女は・・いうなればフェニックスッ!
「食らえッ!【不死鳥烈拳】ォォォォッ!!」
「甘いッ!何度も何度もワンパターンだな・・それでは先ほど何も変わらん・・ッ!?」
シャオランが全てを悟ったかと思ったその時だ。
気づいた時には遅かった。
そう、殴りにかかるにしてはまだ距離が足りてなかった事だ。
飛び上がってすぐに放つ準備をしていた時に気付くべきだったと、
改めて思い知らせされるッ!
「気づくのが一歩・・遅かったな・・そう、これは遠距離からの攻撃ッ!魔法の鉄拳だッ!!」
ボォォンッ!!
赤く燃え上がり飛び立ち天へ目掛けて進み走る炎の鳥、
それは地上から少し浮遊していたシャオラン目掛けて放たれていた。
しかしシャオランはそれでも何一つ焦る事なく、
それをユラリとまるで分かっていた様に避けた。
いや、事実この攻撃は避けれる攻撃だった。
さらに後ろで援護射撃していたシャオクウでさえ表情一つ変えなかった。
だが、シャオランはまたフラリと鏡子の方へと体を向けた時、
驚愕の光景を目の当たりにするッ!
そう、鏡子が・・笑っていたッ!
ニヤリと・・まるでわ罠にでもはめたかのようにッ!
シャオランは理解できない光景に汗を流していた。
まるで分からなかった。
攻撃が外れたのだから普通は焦っているはずだろそちらがと、
思っていたシャオランの考え、
この、一瞬の考えていた時間こそ、
シャオランの唯一の油断だった事を知る事になるッ!!
天空へと交わされてしまった炎の鳥の行先、
それは、さらに音を立てずして、
誰にも気づかれづ、迅速に天空へ上り詰めたたった一人の男、
そう奴である、鏡之介ッ!
天空に羽ばたいた一羽の鶴ッ!
「(鏡子ちゃんと僕の鏡之介の字は互いに鏡、ならその名を生かした生き方をしてきたのが僕らだ・・僕らは常に鏡合わせ、つまり・・鏡に合わせる事によって・・できる最大限のフォーメーションッ!!たとえ技が交わされても・・僕が君の鏡となって受け止めてもう一度放つッ!これが・・【黄金双鏡】だッ!!)」
放たれた火の鳥を鏡之介は右手で受け止め、
受け継がれしその炎を右手に熱く熱く燃やし尽くす。
鏡之介は受け継がれた右手に感じた。
燃え盛る右手に、暑い魂の鼓動と燃えがある闘士、
そして・・希望の見えた勝機ッ!!
眼を全開に見開いて、声を全力で張り巡らせた。
もう今後喉から声がでなくなっても良い、
もう、鏡子ちゃんを両手で受け止められなくても良い、
鏡子ちゃんを守りたいからと、そんな思いで・・鏡之介さんはあの右手から放った。
驚異の威力を誇ったあの魔法ッ!
「これぞ・・大禁忌ッ!超大罪ッ!全てを滅ぼし根絶やしにした究極の魔法ッ!!・・スペシャルコラボだッ!!【親愛の雛鳥をここに】ゥゥゥッ!!」
シュゴォオァァァァァァァァアッ!!
凄まじい光と闇すべての輝き照らして放たれた究極の鳥、
今度は地上へ向かって一直線ッ!
シャオランとシャオクウが気づいた時には遅かったッ!
上を向いた時にはすでに、その巨大な雄々しく羽ばたき突進した雛鳥は、
シャオランの真上にいたッ!
鏡之介はうずき暴れる右手を左手で強く抑えて、
喉がぶっ壊れるくらいに、心臓を破裂させるかのように、
彼は・・叫んだッ!!
『いっけぇぇぇェェェェエッ!!!』
ズドォォォォォンッ!!
燃え上がり火柱作り大爆発を巻き起こす。
周囲の結界内は爆発の煙でもう何が起こっているのかすらわからない、
ただ、伝わった。
今この場が見えない僕もなぜか伝わるぐらい、
あの煙の中の死闘が伝わったッ!
「(クッソ・・モロに食らった・・おかげでカオスモードが・・解けた・・)」
シャオランは元の状態に戻りボロボロになって息を荒くしていた。
あの爆発で気絶すらしなかったのだ。
もちろんシャオクウだって生きている。
だが、シャオクウはもはやこ大参事に何か思う事すらなく、
ただ、焦り怯えて姿を隠していた。
身をひそめて一時的に避難したのだ。
そしてシャオランは煙の中なら見えまいとユラリユラリ動き、
どうにか体勢を立て直そうとする。
まだ倒れるわけにはいかないと、
そう思いユラリユラリ、痛み苦しむ左腕を抑えて歩く、
視界が薄れゆく中、何かが見えた。
シャオランはきっと姉のシャオクウだと思い近づいて行く、
だが、近づいてもその姿はどこにもなく、
ましてや誰かがいるわけでも無かった。
「(・・そうかッ!!これはッ!!)」
その殺気に気付くのにも遅かった。
もはやいまのシャオランに警戒と言う言葉は皆無に等しかった。
何十年と起きなかった緊急的出来事に、
心乱れ、どうしようもなく煙の中をさまよい歩いてしまったのが運の尽き、
あの、無駄に考えてしまったあの一秒だけで、
まさかここまで逆転されるなんて思ってもいなかった。
だからこそ、思考が狂ったのだ。
だからこそ、近づいていたのが、
シャオランではなく、鏡子だと言う事にも気づかなかったのだ。
眼を怯えてさせて後ろを振り向いた時にはすでに手遅れだった。
もう、背後には彼女の姿があった。
「ようやく・・殴れるな?」
「ああ・・しまっ・・ッ!!」
ボゴォォォォッッ!!!
顔面に右に唸りちらした正義の烈拳を当てに行く鏡子ッ!!
鏡子は今までやられた分まで含めてすべてを込めてその一撃に、
全てを燃やし尽くしたッ!!
「奥義・・【烈火鳳凰拳】ェェェェェェエエエンッ!」
全ての力を込めてすべてを解きなった究極の烈拳ッ!!
ズドシャァァンッ!
飛ばされていくシャオランッ!!
今度は自分が障壁に衝突するなんて思わないだろう。
だが、現実は非常ッ!!
ドゥゴォォォンッ!!
それは光り輝く結界の壁の中の全ての煙を晴らして飛ばされたシャオランが、
あの光り輝く、壁に衝突した音、
完全に薄れゆく視界、目が恐怖に怯えて実感する。
体が震えるほどの絶望、これが・・本当の殺気であるとッ!!
「(ち、近づいて来る・・あの・・あの娘がッ!!)」
「もう、お前を隠す霧は無いぜ?観念・・ッ?!」
鏡子になにか異変が起きた。
それは鏡子を対象にあの能力が使われた。
そう、シャオランの能力【ロースケール】ッ!!
自分の視界と鏡子の視界をかなりバランスを取ったのだッ!
もはや鏡子の視界はゼロに等しい、
目の前は・・真っ暗だった。
「(なんも・・見えない・・)」」
「かかったな小娘・・私の能力に・・これで・・おしまいだァァァアッ!!」
障壁からとびかかり襲い掛かるシャオラン、
最後の力と言わんばかりに攻めかかったシャオラン、
だが、鏡子にその判断はミスだと言う事に気づく事になるとは、
夢にも思っていなかったッ!
ドゴォォオッ!!
鏡子は見えない視界に何一つ焦らなかった。
何一つ困惑しなかった。
だからこそ、奪われなかった力にすべてを込めて、
右手で、シャオランの腹に一撃、命中させることができたッ!!
「(そんな馬鹿な・・ッ?!)」
「わりぃな・・たとえ視界が見えなくなっても・・音が聞こえなくなっても分かるんだよ・・殴りたい奴の場所は・・どこにいたってなッ!!」
「(この娘は・・化け物かッ?!)」
「残念だが・・お前は勝つための必勝方法を知らなかった・・俺は知ってるぜ?勝つためにはな・・一歩も引かない事だ、攻めてこそ・・勝利の道だッ!!【連続烈拳】ッ!ウォォォォォッ!!」
ズドドドドドドドドドドドドッ!!
右手と左手を瞬間的に体に叩きこんだこの最速の烈火の連続拳、
そして、トドメに最後の大技言わんばかりの勢いあるケリを放ったッ!!
「トドメだァァァアッ!!」
「ヴボァァァァァアッ!!」
ズドォォォンッ!
大きく吹き飛びまたしても障壁へとぶつかる。
今度こそ意識はおろか能力すら使えない、
だが、そこに油断せず畳み掛けるのがこの戦いッ!
なんと突如猛スピードで障壁に投げられたシャオクウッ!
鏡子は一瞬茫然としたが、一瞬で理解した。
後ろを振り返れば、上空に浮遊する鏡之介、
これは、鏡之介の仕業だとッ!
「・・最期はお前に任せるぜ」
「ああ、任せてよ」
静かに何か線を描いて巨大な魔法陣を表す鏡之介、
凄まじい突風巻き起こし、詠唱を始めたッ!
「これより放つは最強にして最悪の魔術、魔術において禁忌に記されし3つの魔法を語ろう、【隕石】【爆発】【銀河】これら禁忌の御三家をここに記そう」
鏡子は静かに後ろを振り向いて、静かにその場を後にした。
髪を風になびかせ、クール立ち去った。
そして、鏡之介さんはニヤリと笑い、禍々しいオーラ放つ魔法の球を放った。
「【|全てにお別れする最悪の魔法】ッ!!!!」
ズゴガシャァァァァァァンッ!!
轟音鳴り響かせ爆発する森林、
禍々しい柱を放ち、結界がついに消滅した。
ガシャンッ!ぱらぱら・・
ガラスの様にもろく綺麗に散りゆく障壁、
戦いは終わったと祝福するように紙ふぶきの如く舞い散る。
そう、戦いは終わったのだ。
鏡之介さんは安心したかのように、鏡子さんの下へ行く、
「やったね・・鏡子ちゃん」
「うん、やったな・・鏡之介」
2人の真の笑顔と微笑で互いを認め合う。
ようやく真の微笑で、ようやく真の感情で分かり合う事ができる。
そう思うと、鏡子さんは涙が止まらず。
涙を腕で拭って嬉しそうに言葉を述べた。
「あれ・・涙が・・クソッ・・別に・・悲しいわけでも・・ないのに・・」
「鏡子ちゃん・・そんなに嬉しいのかい?」
「だ、だって・・何百年ぶりに・・何百年ぶりにお前とこんな戦って・・お前の事を信じて戦えて・・それが・・それだけでどれだけ俺が嬉しいと思ってるとッ!!」
顔を赤らめて泣きながら鏡子さんは言った。
とても嬉しそうに、とても恥ずかしいそうに、
こんな祝福な光景は滅多にみれないだろう。
「鏡子ちゃん・・」
「クッソ・・涙が・・止まらない・・」
「・・なら、僕の中でなら・・止まるかい?」
「えっ?」
泣きじゃくる鏡子さんが一瞬緩んだ声で困惑した。
そりゃいきなりそんな事言われたらだれだって困惑するだろうよ、
「僕が受け止めてあげるよ、体にどれだけ力強い体当たりがこようと・・ね?」
「ああ・・いいの?・・良いんだよね?」
「うん、もう・・良いんだよ?」
「ウワァァァッ!!鏡ちゃぁぁぁぁんッ!!」
「ちょっ!!鏡子ちゃぁぁんッ!?」
ズドシャァッ!
笑顔で走って抱き着いて鏡之介さんを押し倒す鏡子さん、
もう、すっかり仲直りだ。
あんなに笑顔で体にしがみついて泣くなんて、
あんなに・・笑顔・・で・・?
おかしいな・・泣いて肘で涙を吹いて、
本来ならなにか感動があるのに、
なんだろう、ポジションがおかしいぞ~?
これ、さっきも見たな~?
「・・きょ、鏡子ちゃん?」
「グス・・グスグス・・ウフフ・・マウントもーらったー☆」
「あああッ!!キタネェェェッ!?」
凄いね、あれが本来の鏡子さんなんだ。
天使の様な悪魔の笑顔で腕をポキポキ鳴らす・・恐怖の絵図、
「散々逃げ回ってようやく殴れるね?私がどれだけ苦労してか・・鏡ちゃんわかってた?」
「待ってッ!鏡子ちゃんッ!謝るッ!謝るからッ!!お願いしますッ!ねぇみんな助けてよッ!!」
僕達に恐怖の目を向けて助けを求めた鏡之介さん、
答えは予想するまでも無く、全員が同じだった。
「おや、どうしたんだろう?」
「鏡之介様・・南無三です・・」
「拙者たち完全に蚊帳の外だったし・・是非も無いよね」
「ウァァァッ!!この裏切り者ォォッ!!」
これぞ蚊帳の外にされた主人公サイドたちの、
いともたやすく行われるえげつない行為、
僕らだってこんなイチャラブ現場滅多に見れないのでね、
じっくり・・堪能させてもらうよ・・、
そう、心行くまで、
「(か、完全に悪役の目つきなのですッ!銀様ッ!)」
「(ある意味恐ろしい主人公だ・・)」
「(そう・・君たちは滅びゆく種族なんだよ・・)」
ついに見捨てられ、絶望の未来しか見えなくなってしまった鏡之介、
一体この先、どうなってしまうのかッ!
「それじゃあ・・覚悟はいいね?」
「ウワァァァッ!!オイオイヨッ!!俺の上からオイオイヨッ!!ムセテンナヨッ!オッペケテンッキーッ!!!」
この深夜の森林に鳴り響いた嬉しそうに嘆いた一人の男性の声、
その男性の姿を見た者は・・いたとかいなかったとか・・、
その真相は次回に・・なのかな?
とぅーびぃーこんてぃにゅう?
「続いてッ!!」
◆
「・・姉さん、アイツら人間じゃないわ」
「シャオラン・・それ、私達もよ?」
「そうね・・人獣だものね・・?」
ちなみに言い忘れていたが、
ちゃんと、この二人は生きている。
まったく凄い生命力だとあらためて思った。
しかし、この時点でもう、戦意は喪失していたのであった。
NEXT・・




