無限空想世界の幻想的な物語~楽園~ 第10話 「銀と金の狐」
現在僕達がいるのは森林の広い真っ平らな地面がある場所、
決闘にはちょうどいいのではないかと思われるくらい広い場所だ。
そこの広い場所には一本の柱がそびえ立っている。
そう、結界を維持する柱だ。
今、僕達は2匹の獣に足止めを食らっている。
「ハローッ!ゼロきゅんがお世話になったので今度は僕達が相手だよー☆」
「姉さん・・今、こいつらに私の殺気がどれだけ恐ろしい物かを教えようとしている最中だ、そんな軽々しく・・」
「どうでも良いけど・・あんたら何者だい、僕様君の様なきゃわいい狐ちゃんは見た事ないなー」
「これ失礼した、我々は狐の一族の誇り高き人獣・・名は【リィ・シャオラン】我々は貴様らの様なこの神聖な人獣山を汚す汚物を許しはしない」
「んでんでッ!僕がみんなの元気の源ッ!【リィ・シャオクウ】だよッ!今は結婚しているから佐々木 シャオクウかな?」
なるほど、あっちの銀色狐はゼロの嫁だったか、
狐と結婚するだなんてうらやまけしからん、
にしても名前からして姉妹だよな、
なんか正確に温度差があるような、
「ゼロさん、あの二人てっ姉妹だよね?」
「あー・・あの二人は結構姉妹でもかなり個性がそれぞれあるでござる、妹のシャオラン殿は・・とても日常的には静かで冷静な方でござる、そして戦う姿は戦闘狂とまで言われるくらいかなりハイな人」
「すごい冷静でクールてっ感じだけど?」
「人も獣も見た目によらないでござるよ、ハイエナがチーターの得物を横取りすると言う一般人から聴いてみればありえない話もある通りでござる」
良くわからないがなんとなくわかった。
とりあえずハンドル握ると性格が変わるんだな、
「そして、姉のシャオクウちゃんは元気ハツラツな子でごさる、これと言って表裏は無いでござるし、本来なら人間とも積極的に交流を深めるのでござるが・・まあ、今はこの通りでござる、人獣山を守らなければならぬ身、ならば我々は戦わなければなるまいとなった次第でござる」
「あ、あの二人は人獣山の中でもトップクラスでヤバいんですッ!狂気に満ちたフロル様以上ですッ!!」
美華が毛を逆立てて言うぐらいヤバいのか・・、
はたしてそんな相手に立ち向かえるのかあの二人、
「さて・・こちらの自己紹介は終わりだ・・そちらはなんという?」
「僕様は鏡之介・・白鶴 鏡之介だ」
「俺は炎天山 鏡子だ」
「なるほど・・噂の魔術師二大トップがここに来ていたのですね」
「ふむふむ・・僕、こいつらじゃあ僕達は倒せないと言う第六感が囁いていますッ!」
『あぁ?』
2人がマジギレするほどのレベルの煽りは止めてーッ!!
ただでさえ怒り狂っている最中にその2人に対する煽りは止めてーッ!!
「あのシャオクウさんは煽り魔なんですかッ!?」
「うむ・・残念ながら自覚はないのだ、ただ・・純粋にとらえると煽りかもしれないが・・遠回しに怪我する前に返れと言われているのだろう」
「遠回しすぎだよッ!!」
コミニケーション力皆無かッ!
と言うより言語力皆無かッ!
もうちょっと良い言い方あったよッ!
「鏡子ちゃーん・・どうする?」
「どうもこうねぇ・・てめぇの怒りよりアイツに馬鹿にされた怒りを晴らすのが先だッ!」
「同意、僕様も流石にキレた・・全力で相手してあげなきゃね~」
あわわ、あの二人が手をポキポキ鳴らしたり、
首を鳴らし始めたぞ・・、
これは大荒れの予感、
こんな不穏な空気の中、波乱の戦闘の幕開けである。
「先手必勝ッ!【烈火の鉄拳】ッ!!」
ボォシャカアッ!ギィィンッ!
先に動いたのは鏡子さん、勢いよく前にとびかかり、
右手を炎で包み、勢いよく畳み掛ける。
だが、その攻撃はシャオランさんが袖から出した槍で防がれた。
しかも、片手の赤き紅の槍だけでだ。
鏡子さんはかなり力があるはずなのにどうしてここまであっさりと・・、
「ば、ばかな・・」
「うむ・・実に良い拳だが・・」
ブォンッ!バァゴォンッ!
何が起きたのかわからなかった。
今一瞬にしてシャオランさんが消えた。
そしてあの槍一本ともう片方の一本の槍で腹をおそらく殴った。
凄まじく鳴り響いた衝撃音、
あまりの強さに鏡子さんの殴られた腹あたりのシャツは散り散りとなり、
そのまま勢いよく結界の壁へと衝突する。
「ゴハァァッ!!」
「遅いそして力も足りない」
「なら、これでどうよッ!」
「むっ?」
シャオランさんの不意を突いて上から奇襲をしかけた鏡之介さん、
鏡子さんがやられるのを分かってての奇襲だろうか、
かなり姑息な手だがこれで一撃は与えられるか、
だが、妙だ・・シャオランさんがあまり驚いていない?
「食らえッ!必殺の・・」
「ッ!?鏡之介さんッ!これは罠だッ!!」
「へっ?」
僕が気づいて呼びかけた時には遅かった。
鏡之介さんが右手をシャオランさん目掛けて何か魔法を打とうとしたのだろう。
だが、それすらもシャオランさんにとっては計算内、
予定調和、まさに必然だった。
そのその差し出した右手に向かって神速の如く貼り付けられた謎の札、
突然マナが集中していた鏡之介さんの右手が止まる。
「なっ?!」
「はーい!残念ッ!私達はねー?二人で1人なんだよー?それを1人が一人の人間が倒せると思う?残念だけど無理無理~!だってどんなに強くても私達は2人で強いんだもん、一人が強いだけじゃ二人にはかなわないよね~?キャハ!」
「グッ!?この札はがれないッ?!」
「残念だが・・タイムアウトだ」
「(しまった・・ッ!?)」
バシィインッ!
何もできず落ち行く鏡之介さんのよこに瞬間的に表れるシャオラン、
瞬間的にまたしても叩きつけられ鏡子さんの所へと、
ぶっ飛ばされる鏡之介さん、
ついでの一撃と言わんばかりに持ち方を変えて槍の後ろ部分で突き飛ばす。
ドゴォォッ!
そのまま抵抗する事も無く鏡子さんが倒れていた結界の壁へと衝突する。
『グファッ!!』
「姉さん」
「わかってるよ~・・はい、【爆殺札】ッ☆」
チュドォォォンッ!
鏡子さんと鏡之介さんが爆破されたッ!?
こ、こんな一瞬で決着が付いてしまうのか・・?
今まで何十年と戦ってきた二人でもあの狐は倒せないのか?
爆破され、不安になる僕、
だが、その不安とは裏腹に爆風が晴れて来ると見えてきた。
ボロボロにお互い血を流しながらも生きている。
良かった、まだ生きていたッ!
「鏡之介さん・・鏡子さんッ!」
「はいはい・・そんな心配すんなよ・・」
「チッ・・やりやがるじゃん」
「まだ・・生きていたか、しぶといな」
「すごーいッ!あの子私の能力で作った札をもろともしなかったよー?」
「能力?」
「そうそうッ!僕の能力は【理想の札】ッ!マナの消費はでかいけど~、私の理想のお札ちゃんが作れるんだ~ッ!」
「そして私の能力は【天秤の法則】私が選んだ対象の相手1体のみだがステータスを互いに平均に持ちあう事ができる、そして攻撃を受け止めたうえで私の方にステータスを傾ける・・これにより、いかなる相手も私と対等に渡り合える事などできない」
なるほど、札で理想である【魔法封じのお札を作って貼り付ける】、
【バランスを整えたうえで一気にバランスを自分に一局集中したうえでの戦い】、
だからあの二人は互いに役目を出し合って動いているんだ。
あの二人が「二人で強い」と言うのはそういう事か、
それぞれ質の異なる能力だけど、2人で使い分ければ最強・・、
まさに姉妹ならではの策略かッ!
「爆発する札て言うのも、含めて今作ったのか?」
「そうそう~僕の能力で作った札さ~理想と言っても叶えられない範囲はあるから結局爆発だけだったんだけど・・おかしいなー、体は粉々になるはずだけど・・」
「おそらくあの緑魔術師の服は能力耐久性があると見た、だがそれでも理想にはかな分かったみたいだな・・と言うより、私の最大限の力で少し故障したらしいな」
冷静に相手を読み取るシャオラン、
ああいう戦闘狂はあまり相手にしたくないな、
絶対に、攻撃を見破られてしまうッ!
「おかげさまでね・・でも、服がほつれた程度で僕様負けないし」
「同じく、まだ足も手も動くぞッ!」
「やれやれ・・愚かな・・」
「愚かかどうかは僕様達を無抵抗にさせてからでも遅くはないだろうッ!」
「くたばりやがれッ!」
「(今度はあの魔術師が前線へ出て後ろにいる娘がブラインド玉のように隠れて私に傷を与えると言う作戦か・・実に・・つまらない戦略だ)」
まるで列車の様に乱れず真っ直ぐ進む鏡之介さんと鏡子さんッ!
喧嘩していても連携が乱れていないッ!
これなら行けるッ!
「【秘儀 我武者羅】ッ!」
「うぉッ?!うぉぉぉッ?!?」
「鏡之介ッ!?」
「あははッ!御見通しいッ!そーれッ!それそれそれそれそれそれッ!!」
ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!ドォンッ!
突如空中に舞って現れ謎の紫の糸で鏡之介さんの体を、
抵抗できないくらいに巻き上げるシャオクウ、
狂気の笑顔で糸を乱暴に振り回して鏡之介さんを壁にぶつける。
すると鞭で叩きつけるように結界の壁と言う全ての壁に糸でつるし上げた、
鏡之介さんを無抵抗のまま殴りつけている。
叩きつけられるごとに傷つき吐血をし始める鏡之介さん、
これはまずいッ!
「て、てめぇぇッ!」
「よそ見していると・・また、やられるぞ?」
「しま・グボォッ!?」
ズドォッ!グシャァッ!
それは一瞬にして起きた出来事、
地上にいる鏡子さんは喉や体のいたる所を槍で叩かれた。
それは一瞬だが数にしておよそ数百回と言う数は叩かれたであろう。
目の前の光景を僕でさえもはや何が起きたかわからない、
だが、叩かれたと同時に、体のど真ん中を突き刺したシャオラン、
そのまま槍を抜いてまた壁へと叩きつける。
同じくしてシャオクウも同じ壁と叩きつける。
今ようやく理解した。
この姉妹は互いに理解しすぎている。
共に生き続けた結果互いの戦闘も、
互いの力も分かりきったうえで作戦すら理解してしまう。
まさに最強と言う名に恥じない戦いだ。
ズドォォォンッ!!
またしても体を互いにぶつけられてしまう鏡子さんと鏡之介さん、
もはやもうあまり力は残されていない、
このままではやられてしまう。
確実に、今度こそッ!
もう体も限界であろう鏡之介さんはなんとか立ち上がろうとする。
鏡子さんも壁にもたれかかりつつもまだ立ち上がろうとする。
でも・・今の二人では、無理だとわかってしまう自分がいる。
連携が乱れていないと思っていたがその逆だ。
あの二人は連携がまず取れていない、
だから、まずもってかなうはずがない・・、
仲が悪かったのがここにきて大きな障害に・・、
どうする、どうすれば今の2人はあの二人に立ち向かえる。
僕では・・どうしうよもないのか?
ただ、見ているだけしかできないのか?
クソッ・・なんと情けない、
またか、またこうやって人がやられているのを見るだけなのかよ・・、
手を握り締めて悔しい思いを必死に悔やむ自分、
そんなの偽善だって分かってる。
でも、それしか・・それしかッ!
「クソッ・・僕は・・何もできないのかよッ!」
「銀様・・」
「なーに辛い顔してんだ、銀」
「ッ!?その声は・・ッ!!」
聞き覚えのある声、この聞き覚えのある女性の声は、
僕は倒れこんでいた体を後ろに振り向かせると、
そこに立っていたのは救世主、
そう、今まで数々のピンチを救って来た。
灯先生ッ!
「よう、またせたね」
「灯先生ッ!!」
「あ、あっかりん・・」
「灯・・てめぇ今までどこに・・」
「いやー悪いね、ちょっとメディカルセンターまで戻っててさ、武器の弓矢調達してのよねー・・それ以外にも用事はあったのだけど・・」
明るい声でみんなの不安を消してくれる先生、灯先生だッ!
きっと来るとは思ったけど、遅すぎるんだよッ!
畜生、かっこつけやがってッ!
「それよりも銀君やい、そんな涙ボロボロ流すなよ、こんなご都合主義展開もう慣れっこだろ?」
「そ、そうですけど・・灯先生はいつも不意打ちで来ますからねッ!」
「あははッ!めんごめんご・・それよりもずいぶん四天王がボコボコにされてる様ですけど?」
「仕方がねぇだろ・・アイツら二人の連携プレイは強すぎる・・正直魔王と巫女が合わさった感覚だ・・」
「たくっ・・言い訳はいいの、あんたらだってその気になれば・・いや、本気の戦いをすれば狐姉妹より強いはずなのにね・・」
「・・フッ、鏡子ちゃんと仲が絶賛悪い僕様ではやはりそれは不可能・・」
「ああ、そうだとも・・アルテミスを殺した野郎となんて戦えねぇんだよ」
やっぱりそれが原因で妙に薄っぺらい連携が・・、
仲が悪いととことん喧嘩する二人だな。
僕も見ていて不安しかなかったよ、
「・・アルテミスを殺した・・ね、じゃあここからじゃあ手が出せない灯先生が患者2名・・いやここにいるみんなに一つお話を読み聞かせてあげよう」
「・・ッ!?待てッ!灯ッ!言うなッ!」
「鏡之介さん?」
「(鏡之介が・・初めてこんなに焦っている?)」
僕と鏡子さん、それに美華やゼロさんもきっと驚いているだろう。
突然、何かを隠すように止めようと 声を張る鏡之介さん、
ここまで余裕がなくなった鏡之介さんは初めてだ。
いつもなら、もうちょっとワッハハしているはずなのに・・、
「そこにいる狐様もいいかい?少しだけ・・昔話に付き合ってくれよ・・」
「・・良いだろう、それで気が済むのなら」
「わーいッ!私そういうの大好きーッ!」
「テンキュー・・それじゃあ離話してあげるよ・・アルテミス殺しの・・いや、1人のバカの話をね」
灯先生がキリッとした表情で話し始めた。
あのアルテミスと言う魔女の話を、
おそらく、僕が疑念に思っていた全ての真相がここで語られるだろう。
僕は全てを受け入れる覚悟で、唾を飲んで覚悟した。
とぅーびぃこんてぃにゅうッ!




