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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
征西へ

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148 占領地政策

 支配地域の管理についてはすでにケララやヤーンハーンほかの者たちに様々な状況を想定しての試案を出させていた。

 そのうえで現地の統治に関してはケララに任せることにしていた。総指揮権は俺にあるが、民政すべてを俺が裁くのは限界がある。それに俺はあくまでも敵を追い払うために出張っているので、さも領主のように振る舞うというのはまずい。


 その「建前」の確認のために、ケララを呼んだ。

「――というわけで、今回、統治下に入れた三県の監督は任せる。まあ、何かまずいことがあったら俺に相談しろ。とくにそんなこともないと思うけどな」

 海沿いの三県は俺が、内陸のソルティスが侵攻した県はソルティスが名目上、実効支配することに取り決めていた。そのほうがやむなくやっているという空気が出る。当然、裏では俺とソルティスはつながっている。そもそも、俺に助言を求めてきたのはソルティスだ。


「御意にございます。粛々と進めていきたいと思います。不安材料があるとすれば、敵方の土地だったので、どこで反乱が起こるか読み切れないところでしょうか」

 たしかに農民や都市の住人に交じって、敵方の将がいないともかぎらない。潜伏場所は無限にあると言えた。


「反乱の処置はお前の一存に任せる。敵は陛下に逆らう逆賊だ。好きなように裁いていい」

「はい。そのように取り計らわせていただきます」

 もはや、ケララの瞳に俺が新しい国を築くことへの戸惑いや疑念といったものはない。完全に俺の忠実な部下になってもらった。


 ――あの明智光秀を手なずけおったか。よくやるわ。


 オダノブナガもあきれと評価がない交ぜになったようなことを言っている。


 ――まあ、それもワシの時の教訓が生きておるからだがな。ワシだって最初からあいつが裏切ると知っていれば、もっと違う手を打てた。後世から見れば失敗だろうが、あの程度の油断はどこの大名だってしておった。ああ! あれを全部ワシの落ち度のように言う輩が必ず出てくるだろうと思うと、腹が立つ!


 勝手にキレないでくれよ。混沌としていた国を統一の手前まで持っていったんだから、お前は間違いなく覇王だよ。あと、覇王が未来の小者に何か言われるかなんて気にすることないだろ。


 ――それはそうだがな……所詮、過去の人間を評価するのはその瞬間、瞬間に生きている人間だけだぞ。一つの過ちで愚者のように言われるのは胸糞悪いわい。画竜点睛を欠くという言葉があってな、最後の一点を失敗するのは、それはそれは痛恨事なのだ。


 言いたいことはわかる。まあ、俺もそこは注意しておくよ。


「ケララ、お前が占領地を支配している間に俺は海峡の手前のもう一県――ナルグスト県を奪う。そのうえで、そのナルグスト県の東部、王都側に拠点を築くつもりだ」

 俺は地図の上に手を置く。ヤグムーリという内陸の都市だ。

「前王派と戦うには東すぎるうえに、海から離れているように思えますが――東からの備えも兼ねてのことですね」

 ケララにはすでに意図は伝わっている。


「そういうことだ。もしもということもあるからな。万一、王都側から攻撃を受けた場合、十分に持ちこたえられる場所でないといけない。それに、ここからならニストニア家や辺境伯のタルシャから北回りの航路で物資を送ってもらえる」

 すでに俺は自立に向けた動きを進めていた。

 南側の海は前王派だけでなく、王都からも軍船が入ってくる危険がある。だから、より奥地に拠点を作ることにした。


 無論、前王派を攻撃するためでもあるが、ハッセが俺に恐怖を抱いた場合でも、適切に対処できるようにしている。


「たしかに、すでに閣下を超える勢力は王国内にありません。陛下が最大の敵と考えるおそれが皆無とは……言いづらい状況にはなっています」


 俺はゆっくりとうなずいた。今の時点で俺が前王派を討滅して、そのまま軍事的に占領したら、国の過半は俺の持ち物になる。王都の東側の勢力はまだ俺に直接なびいてないとはいえ、王都を陥れるに十分な軍事力にはなる。


 だから、ハッセも海峡を渡って、前王派に攻め込めと催促するようなことはしていない。

 最近来る書状も、体に気をつけろとか中途半端ないたわりのものが増えている。

 それと、それらの書状には占領地にひとまず総督を王都より送りたいと書いていた。


 俺はその部分をまだ混乱が収まってないからと言って、拒否している。

 俺の言葉もすべてがウソではない。戦争に不慣れな事務手続きしかしたことのない総督が来ても、旧勢力の反乱一つであたふたしてしまうだろう。とても任せられない。


 だが、第一の問題は俺の実効支配にとって、そんな外から来た奴は邪魔でしかないからだ。

 占領地はいずれ俺が完全に支配する。ハッセが納得するまでは俺が手に持ち続ける。


「ナルグスト県への侵攻は小シヴィークとマイセル・ウージュに二方向から行わせていたが。あくびをしながらやれと言い含めてある」

 どうせ、ナルグスト県の領主の中に俺の軍団を追い返せるだけの者はいない。それにタルムード伯・サミュー伯といったサナド海峡より先の、いわゆる巨島部きょとうぶを治めている連中もそこまでして、ナルグスト県を守ろうとはしないはずだ。労力の割に効率が悪すぎる。


「どうせすぐにとれる県ではあるが、まあ、ゆっくりとやらせてもらう。正直、兵を損ないさえしなければ、どうでもいい。むしろ、俺がヤグムーリに拠点を構える前に終わらせられても困る。数ある戦の中に、敵を倒すなという戦が一つぐらいあってもいいだろ」


「まるで拠点をヤグムーリに移しでもするかのようですね」

 ケララは冗談など言うタチではないから、何割かは本当にそう考えているのだろう。


「さすがにそこまでの意図はない。マウストは俺の愛すべき城だ。ヤグムーリなんて、縁もゆかりもない土地に引っ越すのは陛下に命じられても嫌さ」

 俺はすぐにケララの言葉を否定した。

 ただ、そこで俺は少し遠い目をした。


「でも、これから先、ヤグムーリから動けないことはあるかもな」

「過去にも、防衛を命じられた城で奮闘しているうちに、主君が降伏してしまい、ほかの領主からその城の城主に任命された例などがありますね」


 これがケララ以外の言葉なら皮肉かと思ったかもしれないが、ケララはまったく俺をバカにする意図はない。


「それじゃ、ケララの行政手腕に期待する。俺は小シヴィークの激励にでも向かう。ヤグムーリまでは攻めてもらわないと計画が滞るからな」

 そこで、ふいにケララが珍しく冗談の側に近いことを言った。


「遠征中で女の肌がほしくなる頃ではありませんか?」

「そうだな。それでは少し夜伽を頼もうかな」

 俺はケララの出発前に、ケララを抱いた。昔と比べると、お互いに相手のことがよくわかるようになっていると思った。

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