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織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
マウストで征西を見守る

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136 妹の強さ

 城の庭園を歩いていると、花を植えているアルティアとその娘二人を見かけた。

「いい? 毎日、水をあげるんだよ。そうしたら、きれいな花が咲くからね」

 アルティアがそう言うと、大きいほうの娘が「約束する」とうなずいていた。


「花か。大きいのが咲けばいいな」

 娘二人のほうは俺の顔を見て、さっとアルティアの後ろに隠れる。まだ怯えられているようだ。とはいえ、父親の仇として憎まれるよりはマシかな。いや、憎まれるぐらいのほうが気も楽なのかな。


 そういえば、俺はさんざん人を殺してきたから知らないところでもたくさんの人間に恨まれているはずなんだが、そのことはほとんど意識にのぼったことがなかった。

 だからこそ、ずっと戦争を続けてこられたのかもしれないし、そこで罪悪感をいちいち覚えるような奴はこの時代を生き残れないのかもしれない。


 一方で、アルティアのほうは、どこか吹っ切れたように見える。俺にも昔のような笑みを向けてくれた。


「お兄様、忙しいはずなのに、うろちょろしていていいの?」

「必要な指示はもう出したからな。今はゆっくり戦局の動きを見守ればいい。あと、もう一つ見守らないといけないものもあるしな」


 アルティアが目を細めた。

「ルーミーさんの出産だね」

「そうだよ。初産はとくに怖いんだ」

「うん、お兄様よりはルーミーさんの気持ちもよくわかるつもり。きっと戦場と同じぐらい大変」


 その言葉は誇張ではないんだろう。まさに、そのように出産を表現している古書もあったはずだ。

「俺が痛みを分かち合えればいいんだけど、残念ながらそんな魔法はないみたいなんだよな」

 せいぜい痛みをやわらげる薬と魔法があるぐらいだ。


「体の痛みはね、まだ我慢できるんだよ。割り切ることができるからね」

 アルティアは少し遠い目をした。

「ル-ミーさんはきっと実家の運命のことも考えて戦ってる。そっちのほうがずっと大変」

 その言葉をアルティアが言うと重みがある。実家と嫁ぎ先の違いはあるが、それがなくなるというのをアルティアは経験している。


「でも、しょうがないんだよ。それが女の戦い方だから」

 アルティアは微笑むと、俺の胸元に花を一輪差した。

「お兄様は争いがなくなるためにこのまま戦えばいいんだよ。私みたいに泣く人もいるだろうけど、そのたびに立ち止まっていたら何にもならないから」


「別に俺はお前に許してもらえるとは思ってない」

 理由はあった。だけど、理由があったなら夫殺しを許せるということにはならないだろう。


「許すとか恨むとかそういうのは、お兄様にとっては些細なことなんだよ。だから、そんなことは考えなくていい」

 そして、力強くアルティアはこう言った。

「それは王の考えることじゃないから」


 俺が知らないうちにアルティアは本当に強くなったと思った。

 なんだろう、二児の母親になったからだろうか。とにかく、昔の病弱な面影はどこにもない。国母と言われても違和感がないほどに、堂々としている。


「王になって、お兄様。小事に気をとられて大事をおろそかにすることを今の私は最も恐れてるよ。王になるために立ちふさがる奴がいたら、いくらでも殺せばいい。ほかに方法なんてないんだから」

 それはまさしく命令も同じだった。


「もし、これで王になれなかったら、その時は私はお兄様を恨むから。天下が取れないのなら、私の夫に殺されていればよかったじゃないかって思っちゃうからね」

 ああ、死者の人生を俺は背負って生きてるってわけか。

 だからこそ、俺が目的をまっとうしないと殺した死者の存在意義がなくなってしまう。

 そんな考え方をしたことは一度もなかった。


「わかった。絶対に王になるから少しだけ待っていてくれ。もう、そう時間はかからないと思う」

 アルティアはにっこりと笑った。

 俺の答えは悪くないものだったらしい。


「それとね、ついでだからもう一つ言っておくけどね、お兄様は女の子を弱いものだと思いすぎだよ。きっと戦争の基準でばかり考えてるからなんだろうけど。だから、あまり過保護にならなくていいから」

 今度は兄に注意する妹の顔になった。

 使用人がこんなことを言ってきたら処罰対象だが、妹の言葉なら傾聴しないといけない。


「考えてみて。セラフィーナさんもフルールさんも、すっごく強いでしょ。肝が据わってるでしょ。ちゃんとお兄様を愛してくれているでしょ」

 そこまで言われたら、俺も深くうなずくしかなかった。


「まったくだ。普通の庶民みたいな波風立たない生き方を誰もしてきちゃいないんだよな」


 俺の周りには女も男も強い奴しか残っていない。そうでなければ、途中で脱落していたはずだ。覇業は一人だけでは成し遂げられない。最後の最後で俺は自分の妻や家臣たちを信じないといけない。

 そこを信じきれなければ、きっと足下をすくわれる。


「アルティア、お前が妹であることを俺は誇りに思う」

「うん、私は王の妹だから」


「抱き締めていいか?」

「どうぞ、お兄様」


 俺はゆっくりと一歩近づいて、アルティアの体をかき抱いた。

 昔みたいに華奢な体だった。じゃあ、強くなったのは心のほうだけなのか。


「お兄様、あったかいな。あと、ちょっと力が強すぎる」

「今は我慢してくれ。王になる男の命令だ」

 くすくすとアルティアが笑った。俺もそれに釣られて笑った。


 おどおどしていたアルティアの娘二人もぽんぽんと俺の足を触ってきた。少しは信用されてきただろうか。

 お前たちも強くなれよ。お母さんのように。

 俺はお前たちが嫁ぐ頃には、夫が戦争で命を落とすことがないような時代を作ってやる。この約束は絶対に果たす。


 アルティアと別れたあと、オダノブナガが話しかけてきた。


 ――ワシの妹によく似ておる。気丈だ。そんじょそこらの腰抜け武士よりはるかに立派だ。


 覇王の妹なら驚きもしないさ。


 ――そうだな。お前も王になれ。そして妹の娘を全員幸せにしてやれ。


 今日はオダノブナガとよく意見が合った。


11月にGAノベル2巻が出ます! よろしくお願いいたします!

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