表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
織田信長という謎の職業が魔法剣士よりチートだったので、王国を作ることにしました  作者: 森田季節
天下統一への道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/170

109 山城総攻撃

 俺はブランドの城がある山の周りを厳重に兵で囲んだ。


 ――ほう。お前がじっくり城攻めをするとは珍しいではないか。ワシもそういうことはめったにやらんかったからな。


 オダノブナガは基本的に先手必勝で一気に城を落とす作戦を得意としていた。俺もその点は大差ない。待つ戦いをしたことはほとんどない。


 しかし、今回は少しやり方を変える。

 厳密には、変えるしかないと言ったほうが正解に近い。


 このブランドの城はとにかく険しい。

 すでに一部の投降者などから城の縄張り図は知っていた。もともとブランドは同盟者だったわけだし、その時点での情報はある。


 ただ、それを見るにつけても、この城は本当に堅い。いくら一部で投降する者がいても、その程度で崩れていったりはしない。

 表面上はどこにも穴はないように思える。


 なので、まずは城を囲む。

 こうすれば城のもろいところがわかる。

 容器のどこに穴が空いているかわからなければ、それを水につけてやれば、その場所が明らかになる。


 各方面から散発的な攻撃を行わせ、そのうえで情報を集める。

 いくつか目星はつけていたが、縄張り図という平面からだけでは正確なことはわからない。それ以上のことは踏み込んでいくしかない。


 そして、五日間粘って、結論が出た。

 城の正面でも搦め手でもない。その側面だ。

 ちゃんと登攀可能な場所も見つかった。これなら数百人で乗り込むぐらいのことはできる。


 ここに俺が指揮をとって突っ込めば決着はつけられるんじゃないか。


 もっとも、その話を軍議で行ったら当然ながら少なすぎると反対されたが。


「アルスロッド様、いくら自信がおありでも敵はまだ三千人は城にこもってますよ!」

 ラヴィアラはこのままでは絶対に行かせないという立場らしい。


 ほかの将たちも、当然だが俺が進むことは承服しない。もっと、厳重に包囲戦をやるしかないと主張する者も多い。


 たしかにこれまで倒してきたようなつまらない敵とは意味が違うし、そこまでしないといけない必然性も薄い。このまま囲んでいけば、敵の士気もどこかで落ちてくるだろうというのもわかる。


 ノエン・ラウッドとマイセル・ウージュはこの城は数千の規模の兵で守ることはもともと想定していないので、いずれ食糧不足で飢えに悩まされる、それまで耐えればいいと主張した。妥当な意見だ。

 でも、その方法はとりたくなかった。


「アルティアに惨めな思いをさせてやりたくはないんだ。それと、ブランドにもな」

 半年間の籠城の末、ついに降伏したところを処刑だなんていうのはあまりにも残酷だし――そもそもそんなに時間をかけたくはない。

 俺の夢はブランドを殺すことでも、領内の反逆者を倒して治安を回復することでもない。今やっているのは天下統一のために膿を取り除くことだ。つまり、地ならしみたいなものだ。


 俺が妹の名前を出したからか、配下も反論がしづらい空気になった。

 これはよくないことをしたな。身内の名前を出してしまえば意見を言いづらくなる。


「とはいえだ、みんなの言いたいことはよくわかる。そこで、改定案を俺のほうでも出させてくれ」

 もともと、いくつが手は用意していた。


「各方面から総攻撃を仕掛ける。そうすれば、敵はどこも手を抜けなくなる。そのうえで俺の部隊も弱いところを突く。つまるところ、みんなで血祭りに挙げようというわけだ」


 さらに細かい内容を話したが、直後にラヴィアラが、


「これなら了承いたしましょう!」

 と完全に上から目線の言葉を使ったのが決め手になった。すぐに「すいません、口がすべりました……」と謝って、笑いを誘っていた。まったくの姉の立場で言っていたな、今。


「よし、これでいこう。みんなで勝ち鬨をあげてマウスト城に帰るぞ!」

 俺の声に諸将が「おう!」と答えた。



 そして、俺たちは一斉に攻撃を開始する。

 すぐにこちらの総攻撃に敵も気づいたようで、気合いを入れなおしているのがわかった。


 とはいえ、すぐに城が落ちるとはまだ思っていない。常識的に考えれば、これだけの規模の城はすぐには落ちない。だが、常識に身をゆだねるのは油断と紙一重だ。


 総攻撃といっても、大半の部隊には城内に突撃する意図はない。多くの部隊はカムフラージュのために存在している。

 その間に精鋭部隊が側面に回り込む。


「さあ、行け! もう城の中は目の前だ! 最初に入り込んだ者には褒美をとらせる!」


 俺が叫ぶ。もっとも、褒美の話などなくても、ここまで来た連中は敵の中に平気で突っ込んでいくだろうが。


 側面にも石塁は張り巡らされているが、正面や搦め手と比べれば、明らかに低い。これぐらいなら乗り越えて先へ、先へと進むことができる。


 最初の一人や二人は矢をぶすぶすと受けて落下していく。最前線は命懸けだ。

 だが、やがて、俺の兵士が石塁の上に立ち、中に入り込んでいく。


 そこで流れが変わる。敵が動揺しているのを感じる。

 落ちることなどないと思っていた城が、崩れていく。

 これはおそらく本格的に敵が入ってきた場合のことを想定しきれていない。


 俺はゆっくりと味方についていけばいい。俺が城内に入った時には、十分に俺の兵はブランドの兵をかき乱していた。


「さあ、このまま進んでいくぞ! 城門を開けて味方を引き入れてやれ! 今日でこの城を終わりにしてやる!」

 口ではそういうが、この城は広い。堅実に攻略していけばいい。


 もっとも、ブランドはやはりただの将ではなかった。

 また空気が変わる。

 殺気だったものが混ざる。


 ブランドが単身で俺のほうに剣を持って、向かってきた。


「アルスロッド、覚悟!」

 俺もその前に自分から飛び出る。


「手間が省けたぞ、ブランド!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ