第1部 プロローグ
※後書きに作者が描いたキャラ紹介の押絵がある時があります。(苦手な方は挿絵OFFで読めます)
―― いずれ、神に匹敵するほどの力を持つ魔物を討伐しなければならない羽目になる俺、田畑草太。
これは俺が異世界で初めて遭遇した、野生の魔物との邂逅場面である ――
土手の上から軽トラより二回りはでかい頭部が、ぬうっと現れた。
節足動物のヤスデに似た巨体が、鎌首をもたげるようにせり出し太陽を遮る。
その巨大な影が、土手の下に転がり落ちた俺とエルフのガキんちょ二人を包み込んだ。
「なんだ? あいつは!? 本当に魔物なのか!?」
呟く俺に。
「知らない……」
「見たことない……」
怯える声でガキんちょ二人が答える。
頭部と思われる場所から、楕円状の器官が左右に二枚伸びていた。
楕円器官の縁周りが高速で回転している様に見える。
それは“鎖鋸”、あるいは“チェンソー”と呼ばれる伐採機に酷似していた。
そう――畳二畳ほどの巨大なチェンソーが二枚。
魔物の頭部から突き出し、唸りを上げているのだ。
ハッキリ言う!――この怪物のデザインは“ボスモンスタークラス”だ!
どうなってんのこれ? おかしくない?
普通、第一魔物はゴブリンとかスライムとかだろ?
ここは下っ端が出てくる所だろ? 常識的に考えて!
しかし今はストーリー展開の不備を嘆いている場合ではない!
そんな時間もない!
仕方がない!
本当は言いたくない!
――だがBIGな男を目指す以上、あの定番台詞を言わねばなるまい!
「二人とも魔力は回復したか?――身体強化魔法の『魔力疾走』は使えるか?」
二人の肩に手を置き確認する。
「う、うん短い間なら……」
「あたしも少しだけなら……」
何とかなりそうだ。
「『魔力疾走』ありなら俺より二人の方が速い。兵士を呼んで来てくれ!」
そしてついに、あの台詞が俺の口から吐き出された。
「俺が囮になって怪物を引き付ける!」
あ~言ってしまった……
あまりにもベタ過ぎる台詞だし、俺も命が惜しい。
なのでマジで言いたくなかったのだ――
「え……」
「でも……」
俺は土手とは逆方向に二人を振り向かせると。
「いいから行け! 頼む!」
両手で背中をドンと叩く。
二、三歩よろけた後、二人は『魔力疾走』とつぶやき走り出した――
「やっぱ速いな……
確かにあんな怪物が侵入してくるなら、火魔法や水魔法じゃなく『魔力疾走』を最初に教えるべきだよな」
ダブルチェーンソーを睨んで納得するが…
(ちっ! まずい!)
魔物が走っている二人の方を向いたのだ。
本能的に動くものに注意が向くのか?
そして二人のスピードが明らかに落ちている。
まだ100メートルぐらいしか走っていないのに、早くも魔力切れしたようだ。
魔物が樹海の木々をなぎ倒したスピードを考えると、二人にあっという間に追い付いてしまうだろう。
何とか俺に気を引き付けないといけない。
パーカーのポケットから石を取り出す。
ワインドアップからのオーバースローで魔物に投げた。
「おらあっ! 石投げボコリをくらえ―!」
チェンソーに当たり、カーンといい音色が響く。
まったくダメージはなさそうである。
「おらおらおらおおらおらおらーっ!」
やけくそでポケットの中身をバンバン投げつけ、注意を引き付ける。
リズミカルな音色が旋律を奏でる。
「お、怒ってる、怒ってる」
ようやく注意を引き付けられたようだ。
金属が高速で擦れるような騒音が一段と高くなり、俺の方を向いた。
ところであの魔物を観て思い出した事がある――
俺は以前あいつを見ているのだ。
ただしその場所は、ここ異世界ではない―― 地球でだ!
お読みいただきありがとうございます!
今まで短編を何作か投稿してきましたが、本作が初の長編作品となります。
第一部の終わりとなる38話まではすでに書き終わっており、毎日1~3話ずつ投稿していく予定です。
コメディ要素多めの笑える作品となっています。
草太くんの異世界でのBIGりな冒険を、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
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