変化の連続
竜を命がけ、自分に命があるか分からないがその言葉が当てはまるほどに奇跡も起こし短期決戦で倒した後、審査員の兵士二人が神の使いだと勘違いしてこちらに泣きながら寄ってきた。
「天使よ、なぜ姿を現してくださらなかったのですか!私達にはもう、真実がわからないのですよ!」
「あー……俺は神と契約はしてないんだ、それに宗教もやってなくてな」
天使だとユウガに言ったが、その本人は天使になることが嫌で契約破棄をしたのだ、だから天使に1番近い存在のはずの女に目配せをした。
(ユウガー、あの女は神と契約はしてないらしいぞ)
(転移者なのにそんなことしていいのか?レベルも魔力も手に入らないんじゃ?)
(あっ、魔力がないのはユウガだけで、あの女の人はレベルがないだけ)
前から薄々そうなんじゃないかとは思っていた、この世界で魔力を使えているのは神のおかげ……ではなく当たり前のように神なんて必要なし。
転移者としていろいろ欠陥品だったユウガに常時バフとして与えられていたのが、神からの恩恵である魔力だった。
「天使ではない?……なんだよ期待させやがって、てことはベテランの戦闘員だったのか?」
「戦闘とはっきり思えた戦いはこれが初めてだな」
別になろう系主人公が今まで強い敵を倒し過ぎて感覚が麻痺していた、と言う展開ではな喋る魔物を殺す事に抵抗感があり戦いから避けていただけで、仕方なく戦ったことはあるがそれもツーがほとんど頑張ってくれたので大して戦っていた感覚がなかっただけだ。
「出身は?」
(どう答えるべきなんだ……)
(スフィアって答えてみ)
スフィアなんて聞いたこともないが、ツーが言うならそう答えるしかないだろう。
「スフィアです」
「……まぁいいんじゃないか?うん、生き残りの五人はもう帰っていいぞー報酬は寮で貰えるからな」
少し微妙な反応だった、ツーも魂の中で本当に言ったのかよみたいなことを小声で言っていた、とはいえ取り押さえられなかったので問題はないようだ。
寮に向かう生き残りの魔術師について行く最中、剣士は申し訳なさそうにこう聞いてきた。
「もしかして、玉座狙いか?」
(玉座狙いって何?)
(召喚戦争に混ざるため力をつけた人権のない奴の事だな)
玉座は特定の条件が揃えば誰でも願いを叶えることはできる、それは事実だが戦争に参加した神達を殺すか辞退させるか、転移者を皆殺しにするかが条件だった。
過去に名も無き魔王軍の奴隷オークが神達を辞退させ、玉座を使用した事が広まり世界中の人権が存在しない生命達も玉座を狙い始めた、それが玉座狙いの由来だ。
「俺はそんなじゃないさ」
「そうなのか?こんな時期に兵士になるなんて、度胸があるんだな!」
「ん?あぁ、そうだな」
ユウガ本人が1番戦争に関わっていたのに世界の現状を理解しきれていなかった、今の世は戦争にデモ隊、黄金の家系や他様々。
この無知さを見ていると少し可哀想になったのか、できる限りのことを伝えないとダメな使命感がツーにはあった。
(本当に、分からないこととかがあれば聞いてくれよ?)
(おっ?じゃあ兵士の中で仲良くなった方がいいやつっているのか?)
そういう情報は神の一部であったときに調べていなかったので何とも言えない、兵士の中でも英雄と言えるような存在は知っているが、そんなのと一緒にいればユウガの精神はこの世界のキツさに崩れていく、そこを考えると今のところは。
(カイ、そいつはそこそこ強いし前向きで人助けが生き甲斐の変態が良いと思うぞ)
(……人生楽しくなさそうだな)
王都の中心に近寄れば近寄るほど寒さは増していく、住民の魔力が微量であれど放出されれば魔力は季節に合わせ形を概念的に変え、温度すらも変わるせいだろう。
寮に着くと兵士達が門の前で目を見開いて自分達を見ていた、一人でも生き残れたなら凄いはずの試練で五人も生き残ったのだから、本部の考えに負けずにいてくれた事が嬉しかったのだろう。
「君達が新参兵士か、階段を上がった所から見える黒の看板がかけられた部屋で団長が待っている」
まだ一階を歩いている時は何ともなかったが、階段を上ると流石に皆も緊張してきたようだ、ユウガも例外ではなかった。
「誰が初めに部屋入る?」
「あなたならいける!」
「お前ならできるはず」
「頑張って!」
初めに誰が部屋に入るかを聞いた魔法使いの女が、少年以外の三人から入るように勧められ、というより半分押し付けられ仕方なくそうすることにした。
2階の廊下は鏡や絵、小説に加え人形が散らばっていて地味に汚かった。
「入るからね、分かった?」
魔法使いがそう聞くと皆が頷く、そして扉を開けようとドアノブに手をかけた瞬間、扉を貫通して斧が魔法使いの顔の横を切り裂く。
斧が引っ込むとそこにできた穴から目がこちらを見つめていた、そして扉はやっと開いた。
「さぁ、中に入ってくれ」
攻撃をしてきた団長はこれ以上この話題をしたくないのか、少し気まずそうに五人を中に入れ椅子に座る。
合格者の五人は大きなソファに座る、男組は女組からバレない程度の隙間を作りどの世界でも共通の座り方をした。
「報酬の話もしたいが、その前に二つ聞きたいのだがいいかね?」
「はい……」
「少年は大丈夫なのか?」
この子は竜の攻撃からユウガ達を守るため、魔力以上のものを使いかなり体力を消耗していたが、枯れた声でこう答えた。
「ハハ、大丈夫ですよ?」
「俺は本部の人間とは違う、あまり無理はするなよ、マジで!」
「はいっす……」
これ以上喋らせたら何だかダメな気がしたので、もう一つの話にすぐ切り替えた。
「そ、それとだ、竜を倒したのは誰だ?あれには能力耐性もあるはず」
「えーと、全員の力を合わせて倒しました」
実際言っていることは間違っていない、ユウガは皆が生きていなければあのまま逃げていただろう、ただ皆が生きていたから助けるため竜を殺した、それに自分だって何度か助けられたんだし全員の力というのは嘘のようで嘘ではない。
とはいえユウガの発言には団長以外の皆の顔が少し変わる、それに気付いたのか真実を探ろうとしてきた。
「ここにいる五人は……魔力も技術も何もかもが大して扱えるように見えないな、どう殺したのか教えてみるんだ、そこの剣士」
「俺は崩れた建物に潰されて、体力的にも幻覚を見ていたのかもしれない、ただ自分が見たのは彼が棒のような何かを持ち、もう一人の誰かに空へ投げ飛ばされた後竜の死体とともに落ちてきたことだ」
説明の正確さは簡潔的だが状況が飲み込めるかどうかは別だ、棒切れはスナイパーでもう一人の誰かは転移者に配られた分身体である、そして空へ投げ飛ばされている時に竜を撃ち殺したこと。
「彼、お前の名は何と言う」
「スズキ・ユウガ、ユウガって名前だ」
「あぁそうか、ユウガだけ少しの間廊下で待っていてくれないか?」
「うっす」
廊下に立たされて数分が経った頃、四人は団長の適正武器を作る能力により武器を報酬として渡されていた、命をかける依頼だと言うのに報酬と見合わないじゃないか。
「もう入って良いぞ」
まさかわけのわからない説教やら何やらをされるんじゃないかと思い、部屋に入りソファに座る。
「これだけ答えろ、能力は何だ?答えないのなら」
「不死です!それと分身体を一体出せます!」
ツーが何も言わないことからこの判断は正しかったのだろう、団長もユウガの焦った姿を見てデモ隊や黄金の家系の一人という考えは消えたようだ。
「なっ、お前の判断は正しいが、能力はそう簡単に教えてはならないぞ」
「さすがに恐怖心が勝つっての」
「少し驚かせてすまないな、あっ!それと伝えないといけない事があるんだ、そのー……お前には魔力がないから今すぐ武器を生成する事ができないんだ」
団長はすでに能力を公開しているから説明すると、団長の能力は相手の魔力の色と相性がいい武器を生成する事ができる、だがユウガに見える色はただ一つで。
悪魔の類が憑いている時の魔力、それはツーの魔力であったがユウガに悪魔に取り憑かれていることを教えるのと、悪魔に騙されながらも力が少しでも増すなら教えないほうがいい、後者に行き着いたのだ。
「俺は相手の魔力を見て武器を渡せるんだが、いや!お前が使えるかは分からないが、一応これを」
床に落ちていたのを渡された、武器の真名は弱者の抗い、魔法や生命にこの矢を当てればランダムなデバフがつく、それにこの矢は近接のために作られた金属製で、ユウガが使うにはぴったりな武器だ。
(実はスナイパー作ったりすると魔力半分以上減るからさ、なるべくそれ使ってくれない?)
(まぁ、一発限りのスナイパーより用途は広そうだ)
「この武器はどんな生命体に対しても必ず何かの持続系異常化がつく、例えば毒が有名だ」
能力を聞いてかなり扱いには気をつけないといけない気がした、もしも仲間に当てれば何をされるか分かったものではない。
「火力を出したいならあそこにある棚を投げたほうがまだ良いはずだが、そこらへんは頑張ってくれるよね?」
「頑張る……普段兵士ってのは何と戦ってるんですか?」
「魔物を倒してるイメージが強いかもしれない、実はデモ隊とやんちゃな犯罪者ってところだ、強すぎる人間はギルドに浸っちゃうから強い敵も冒険者と戦うんだ」
デモ隊の話はたまに出るがよく分からないとして、兵士の給料が銀貨数十枚、強い兵士がギルドに浸ると銀貨60枚。
魔物の血も人の血も奴隷の血も、灰の匂いだって知る戦闘に飽き飽きした連中だ、魔物を倒すだけで大金が手に入るだなんて楽園だろう。
「まぁ、東区兵士団男子寮団長のジュークを見捨てないでくれれば良いさ、その武器を皮袋にしまったら帰って良いよ」
ユウガは皮袋と追加で銀貨を10枚貰う、渡された銀貨は竜を倒したことの賞賛と、どこにも逃げないでほしいという心の表し方だった。




