表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/10

第八話 ヴォイド団の魔の手


 なんとか表彰台に登れることになったのでもう一度ステージに上がった。カケルくんも既にいる。ヒラッと手を振ってくれたのに応じた。


「おめでとう、カケルくん!」

「サンキュー! そっちこそおめでとう!」


 結局大会中にカケルくんと当たることは無かった。やっぱり私はライバルじゃなかったようだ。まあレンくんというどう考えても正統派ライバルが現れた時点でわかっていたことではあった。

 やっぱりチュートリアルキャラが精々か、無念。しかしチュートリアルキャラが三位入賞は大健闘ではなかろうか。

 そのレンくんはチラリと私達の方を見てすぐ目を逸らした。うーん相変わらずクールだ。これでツンデレなんだから世の中わからない。一応手を振っておく。


「あれ。ジャスティス、チャンピオンカスタムに戻したんだ?」


 左腕のNレアパーツは相変わらずだけど。


「あれは決勝戦用にカスタマイズしただけだしね。このカスタムの方が見慣れてるから落ち着くし」

「ふん」


 ジャスティスもあの低レアカスタムはお気に召さなかったようだ。ただこれはカケルくんのカスタムが気に入らなかったというより、低レアが嫌だっただけのようだ。まあ装甲と一緒にご自慢の攻撃力もガッツリ削られてたもんね。そりゃあ嫌か。



 そんな風に話して時間を潰していたが、一向に表彰式が始まらない。多分その違和感を最初に訝しんだのはレンくんとかシャドウだろうが、実際声に出したのはハートちゃんだった。

 言われて舞台上から周囲を見回すと確かに様子がおかしい。パパ含めたスタッフが忙しく動き回っていた。なんというか穏やかな感じではない。大慌てで確認し合っているような不穏な感じがした。


 そんな私たちを見透かしたわけではないだろうが、ブツッと音が響いた。スピーカーからだ。誰かが音響をイジった音だろう。


『あーあーテステス。やあやあ大真面目にアイロボバトルなんてやってた紳士淑女諸君! 我々はヴォイド団である!』


 うお、ヴォイド団!?

 この世界における、お決まりの悪役ヴォイド団の名前が出て驚いた。いずれカケルくんとぶつかるとは思っていたが今とは思わなかった。なんせ公式戦初参加だぞ。ワンクッションくると思うじゃん。立て続けかよ。

 しかしチンケな窃盗団が埼玉のローカル大会にどうして、と考えて、そういえば参加景品に大量のカスタムパーツを用意したことを思い出す。まさか。


『この会場に大量のカスタムパーツが落ちてたんでねぇ、一つ残らずヴォイド団が拾ってあげました〜! んー、なんてエコなんだヴォイド団、えらいぞヴォイド団!

 そういうわけで正義の味方ヴォイド団からでした! アデュー!』


 もちろん参加景品も賞品もカスタムパーツは大量に用意した。捨ててないし、間違いなく揶揄してのことだろうが腹が立つ。しかし同時に小賢しい。店で売っているカスタムパーツはレジを通さないと起動しないが、景品として持ってきたカスタムパーツはそのプロテクトを仕込んでない。確かに窃盗に入るなら大量に手に入る今がチャンスだ。

 ムカつくが合理的だな思っていたところ、すぐ側にいたレンくんの目が好戦的に光った。


「おいカケル」


 呆然としていたカケルくんが、ハッとレンくんを見る。


「俺は俺のカスタムパーツを取り返すために動くが、お前はどうする?」


 えっ。

 咄嗟にカケルくんを見ると、レンくんの挑発に乗ったようにキリッと表情を引き締めた。


「オレも行く! サヤカちゃん悪いけどここは任せた!」

「ちょ、ちょっと!」


 うーんホビー販促用アニメの主人公!

 カケルくんとレンくんは表彰台を飛び降りて駆け出して行った。やっぱりこういう男同士のやり取りの中じゃあ置いていかれちゃうな。しょうがない。私もカケルくんに頼まれたことを遂行しよう。表彰台から降りた。


「皆さん、落ち着いて下さい! アイロボはローカル接続にし直して下さい!」


 インターネットに接続したままだとウイルス感染するかもしれない。この会場はフリーのWi-Fiだしそういうのは普通に怖い。ヴォイド団も利用しているだろうしね。

 他のスタッフさん達も呼びかけていた。とにかく二次被害は防がないと。

 同時に周囲を見回す。フトシくんとナオトくんはどこだろう? 見渡すとフトシくんはすぐに見つかった。何というかガキ大将らしい見た目で大変見つけやすかった。


「フトシくん、よかった。無事?」

「さ、サヤカちゃん、どうしよう!」


 フトシくんは大慌てだった。


「ナオトがどこにもいない!」


 なんだって。



 フトシくん曰く、昼休みに集まって、午後の部を始めた頃には側にいなかったらしい。最初は逸れたか、トイレにでも行ったと思っていたが、こうして緊急事態になっても戻ってもこない。


「もしかしてヴォイド団に?」

「いやヴォイド団は人攫いはしなかったはず……。ううん探してみようか。ちょっと待ってて」


 確かにヴォイド団のせいではないと見るのは早計か。私はハートちゃんにネット接続を頼んだ。今は一刻を争う。ヴォイド団をカケルくんとレンが追っているなら、彼らにナオトくんの件も頼むべきだ。

 さっきも言ったとおり、今インターネットに接続するのは気が進まないけれど。


「ハートちゃん、ジャスティスに伝えて」

「任せて!」


 メッセージを送ってもらい、私達は私達でナオトくんを探す。ただ更に離れ離れになっても困る。会場内だけでだ。人混みに紛れている可能性だって十分ある。

 引き続き会場の混乱を収めるために呼びかけていると、ハートちゃんからビープ音が響いた。マズい。カケルくんからの返事を待ってたのは悠長だったか。


「ハートちゃん、ネット接続を切って!」

「あ、これ、まず……」


 その一言を最後にハートちゃんは動作を停止した。咄嗟にハートちゃんの筺体を確認するが赤点滅を繰り返すだけだ。


「さ、サヤカちゃん」


 フトシくんの呼びかけに反応出来ない。ハートちゃんの電源を落とす。とりあえずこれ以上のハード損傷を防がないと。OS? ハードディスク? どちらかが故障させられた。ウイルス? クラッキング? 大丈夫、どちらにしろ家に帰ればどうにか修理出来る。大丈夫、大丈夫……。


「……呼びかけを続けよう。やっぱりネット接続は危険みたい」


 ハートちゃんは家に帰りさえすればなんとかなる。今は他に出来ることをやろう。無理矢理動揺を抑えてフトシくんに返事をした。




 結局、カケルくん達はヴォイド団を捕まえられなかったようだ。仕方が無い。今日は多分主人公と悪の組織の初めての因縁、みたいな話だったんだろうし。

 ナオトくんも無事に見つかった。彼はバックヤードに倒れていたらしい。事情を聞いたところ、どうしても一足早く貰える景品や賞品を見たくて忍び込み、運悪くヴォイド団とバッティングしてしまったようだ。バックヤードはもぬけの殻になっていたし、宣言通り根こそぎ盗まれてしまっていた。

 ナオトくんは怪我もなく、ただ眠らせられていただけで無事だった。本当に良かった。これで盗まれはしたが、人的被害はゼロだ。


 ただ一人、ハートちゃんを除いて。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ