過去を想う
「おやっさん、グランセイヴァーの調子どうです?」
「芳しくねぇな。ほら見てみろよこの電池残量」
おやっさん……グランセイヴァーの整備を取り仕切る古株の整備士に見せられたデータでは、グランセイヴァーの本来想定された稼働時間より大幅にはやくエネルギーが減っている。
「純正品でないモンいっぱい付けちゃいましたからね。ロスってますか」
「まったくだよ。うちのかわいいグランセイヴァーに、あんな砲台だのを付けるのが想定されてるもんか」
グランセイヴァーに付いた重火器の類いはウチに合流した自衛隊の協力の下で付け加えたもので、デフォルトの装備ではない。
グランセイヴァーが対怪獣戦の矢面に立つことが明確になって重火器の必要性が出ても、照準だなんだのノウハウがあるはずもなく。
あの時は航空自衛隊の基地が近くて本当に助かった。
「かわいいって柄でもないでしょうに」
「ばっか坊っちゃんよ、いかに地球の平和を守る守護神だろうが親からすりゃかわいいもんさ。笹瀬川製作所の息子みたいなもんだろこいつは」
「わかりますけど。でももしかしたら、娘かもしれませんよ?」
「…………最近の漫画じゃあそういうこともあるか」
おやっさんが感じているであろうもどかしさは理解できる。そもそも、グランセイヴァーの”地球の平和を守る守護神”なんて肩書きはただの設定のはずだった。
「あの頃は良かったよなあ……いろんなとこに協賛してもらってよ、理想の格好いい巨大ロボ作ろうっつってな。こんなジジイの夢が叶っちまうことあるんだなって思ったよ」
「もう懐かしいですね。スポンサー企業やら他の部品メーカーのお偉方と、ロボの設定とデザインを話し合ったの」
グランセイヴァーの企画……当時はまだ名前は付いていなかったが。が日本中の技術屋に知れ渡った時には、それはもう大騒ぎだった。特撮しかりアニメしかり、巨大ロボに夢を見た者が大勢集まって……あの時の高揚は忘れられない。
「お偉方ってかもうありゃただのガキの集まりだったな。皆自分の趣味譲らねぇんだ。もうちょい俺の要望も取り入れてほしかったがな」
「流石にロケットパンチは実装無理でしたよ」
「いやでも人類から離反した電子頭脳に立ち向かう巨大ロボってストーリーぐらい採用してくれたっていいじゃねぇか」
「戦隊モノでいこうって意見も出ましたね」
「でまあ、最終的にあんなゴテゴテした見た目に決まったんだよな。シャープで格好いいじゃねぇか」
「若手が見せてくれたアニメに似た奴がいましたね」
あれももう遠い話。怪獣が出て世界中が滅茶苦茶になる前の。
「あ、いたいた社長!それにおやっさん!私らもう風呂あがったんで、お二人も入っちゃってください!」
そんな風に考えていると、ハンガーに望月が入ってきた。どうも随分と話し込んでしまったらしい。
「おう望月ちゃん、今日の活躍も見事なもんだったぞ。この作業だけ終わらしてからでいいかね?」
「なに言ってるんですか!今時お湯だって無駄にできないんですからね?入れる時に一気に入ってもらわなきゃ!」
「そいつぁ悪い。じゃあ行こうか坊っちゃんよ」
おやっさんも気丈に振る舞ってはいるが、長い付き合いをしている以上無理をしているのはすぐにわかる。いつ仲間を失うかもわからない状況で、我が子同然の機械はどんどん兵器と化していって…………
かくいう俺も、同じ思いを抱えているわけだが。
しかし前々から思っていたが、おやっさんはなぜいまだに坊っちゃん呼びを続けるんだろうか。父の代から勤めているとはいえ、こっちはもうアラフィフなのに。




