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スラムバレット  作者: 穴掘りモグラ
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墜落の真相と更なる重し

免れたと思っていた遺跡探索に蹴り込まれてしまったキクチ。

本人は戦闘の素人でもあるにも関わらず、特大トラブル誘引者達と一緒に高難易度の遺跡に潜る事に不安を隠せない。

(市民登録さえしたらモンスターには襲われないって事だが…あぁ~不安だ…)

チラリとスラムバレットの2人に目をやれば、シドはやる気に目を輝かせ、ライトは真剣にディスパーの話を聞いている。

今度こそ何事もなく交渉が終わってくれる事を祈る。



「今作戦の指揮官は私です。ですので、進むか撤退かの判断は私が行います。その場合の命令には必ず従う事」

喜多野マテリアル執行部隊の隊長であるディスパー。

部隊指揮も慣れた物だろう。そこに不満を抱く者はこの場にいなかった。



その後、細かい所の共有を終わらせスラムバレットの面々は退出を促される。

「フィア・ハーバーとキクチは残ってください。今後の話を詰めます」


ディスパーから残る様に言われた2人を残し、明日に向けて準備を進める為、シド、ライト、ラルフの3人は会議室を出て行った。


その事を確認したディスパーは、フィアへと向き直る。

「ミュア、あの2人の所見を」

フィアは今回の任務で与えられた呼称ではなく、コードネームで呼ばれたことで、本当に今回の任務が本当に終了したのだと悟る。

「2人共、戦闘能力は極めて高いと判断します。シドは身体能力に特に優れ、ライトは状況分析と広範囲に渡っての索敵、攻撃能力を有します。中距離での戦闘ではイレギュラーですら撃退する可能性を含むかと」

「ふむ、他には?」

「ライトのシーカーとしての技量は異常です。アドルフ専務にも報告しましたが、常人が処理できる限界以上のコードの嵐を平然と処理しました。隔世遺伝者というだけでなく、何かしらの強化処理を施されていると判断します」

「なるほど…2人掛かりで条件付きならばイレギュラーに匹敵する可能性ある、と。ならばこの作戦の安全性も担保できます。ミュア、ありがとうございます」

「いえ、任務ですので」


ディスパーはシドとライトの実力をミュアから聞き出すと、新しくミュアに出す指令を2人に話始める。

「ミュアには新しい任務に就いてもらいます。案件はここから北にあるトウサカ都市の調査です」

「トウサカ都市…ですか?」


トウサカ都市は、喜多野マテリアルと東隣のエリアを管理しているミッドガル企業連合の管理エリアの境目にある都市だ。

周囲に遺跡が無く、出現モンスターも低レベルであり人の往来も多い。

行商人達にはエリアの玄関口扱いされている都市であり、企業の都市というより商業の都市として栄えている。


そして、隣のエリアを管理しているミッドガル企業連合。

6大企業の中でも異質であり、複数の企業が合併し、共和制の様な体制を敷く複合企業体である。


前身の大企業が内部崩壊し、代わりに台頭した4つの企業があった。

それらは多少の勢力差はあれど、技術力や戦力はほぼ拮抗しており、各企業が次のエリア管理企業へと名乗りを上げた。


結果、4つの企業がそれぞれ覇権を争う事になり、他の6大企業が仲裁に入るほど泥沼化した経緯があった。

当時の責任者たちは合併時に解任されており、表向きは過去のわだかまりを捨て、共に人類の発展に寄与すると表明したのである。


しかし、実態は現在でも派閥争いがあり、他の企業を出し抜ぬかんと暗躍を繰り返している。




「そうです。我々が乗っていた高速飛行艇ですが、明らかに人為的に撃ち落されました」

「「!!」」

事故や故障では無く撃ち落されたとディスパーは言う。

「一体だれが?!」

キクチの声が大きくナノのも無理はない。

それが本当であれば喜多野マテリアルへの敵対行動である。相手が企業であっても報復行動は必ず行われ、万が一にミッドガル企業連合からの攻撃であれば6大企業同士の戦争に発展する危険がある。


「犯人は不明です。強力なECM攻撃によって制御系をやられました。ご丁寧にシールドを消滅させた後に実弾によるスラスターへの攻撃も行われています。我々を殺害するというより、高速飛行艇での移動を妨害したかったと考えられます」

「…移動の妨害…なぜ?」

「我々の行き先を確定させる為でしょう。高速飛行艇の隠密尾行は困難ですが、荒野車での移動であればどうとでもできます」


ディスパーは高速飛行艇が攻撃された根本的な理由を説明し始める。


「これは、ある意味で予測された攻撃です。我が社の意向により、我々がミリタリービルの攻略の目途が立ったと、限られたルートでリークしました。そして、その情報に釣られた者たちが我々を攻撃したのだと考えられる」


極秘扱いの情報を態々喜多野マテリアルがリークしたとディスパーは言う。

「なぜ…そんな事を?」

「…というより、この話は私が聞いていてもいいのですか?」

ミュアは理由に疑問を持ち、キクチはその様な戦略的な情報をワーカーオフィス職員が聞いてもいいのか?と疑問を持つ。


「キクチにも共有しておく必要があると判断しました。取締役の御二人には許可を取ってあります。それで、リークした理由ですが、ミリタリービルの完全攻略が成った場合、あの遺跡を囮にする為です」


ディスパーが言うには、現在喜多野マテリアルの技術力レベルは飛躍的な向上を見せている。

原因はセントラル地下シェルターの存在である。

これまで攻略されてきた遺跡の中でも、最も高い技術で構成されている遺跡であり、その中には技術解説が丁寧になされた動画が数百も眠っているのだ。


喜多野マテリアルから派遣された上層研究者達は、寝食を惜しんでその技術を物にしようと奮闘している。

本社へと届けられ、実用段階にまで漕ぎつけてはいないものの、その成果は文明を3段飛ばしに発展させるものであると判断された。


この急激な技術力向上は、人類への福音であると同時に、他の6大企業の恐怖を煽る事へと繋がると判断され、現在は完全に秘匿されている。


「それならば、ダウングレードさせた技術を表に出せばいいのでは…」

「それでも、この技術革新を誤魔化せるレベルではありません。よって、それらの技術を少しづつ外に出すために『丁度良いレベルの生きた遺跡』を完全に攻略したという、もっともらしい事実が必要になります」


この大陸的にも有名な生きた遺跡 ミリタリービル。

それを生きたまま制御下に置けば、喜多野マテリアルが何故、急激に技術力を上げることが出来たのかという、分かりやすい答えを用意する事が出来る。


「それは…最悪の場合、ミリタリービルを横取りされる危険があるのでは…」

「そうです。ですが、地下シェルターの秘密が漏れる事に比べれば些細な事。あの施設の重要性が漏れれば、他の6大企業が雪崩れ込んでくるでしょう。現に、シェルターの周辺を嗅ぎまわっている存在も、少数ですが報告されています」

「…人類生存権を狭める可能性を無視して…ですか」

「人の欲とはそういうものです。煌びやかな宝物は、人の目を眩ませ安易に使命を放棄させる。現に、我ら喜多野マテリアルもそうです。人類発展の事を考えれば、あの技術を一早く全企業と共有し旧文明の汚染を取り除く様行動するべきなのです。ですが、我々はあの施設を秘匿し抱えている」

「…」

「我々は企業です。使命も大事ですが、自社の最大利益は守らねばならない。故に、秘密を覆い隠す為にもミリタリービルを攻略し、他社に分かりやすいターゲットを用意する事が急務です」


話を聞いていたキクチは今回の作戦が、喜多野マテリアルが躍進するだけでなく、他企業との本格的な戦争を防止するための防波堤を作り出す作戦なのだと理解した。

だからといって自分が遺跡に潜る事には納得し難いが。


「我々とて、手に入れた遺跡をやすやすと奪われるつもりはありません。その為に情報をリークし、行動を起こしそうな連中を刺激したのです。ミュア、貴方の新しい任務は、遺跡を狙って攻撃してくるであろう組織の選別・特定です。あの2人と一緒にワーカー活動を行うより、よっぽど貴女向きの任務でしょう」


確かに、準イレギュラーの2人と遺跡に潜るより適している事は確かだ。

「…承知しました」

この時、ミュアは心の中で安堵の息を吐いた。これ以上、自分の正体を隠したまま同行する事は難しいと考えていたからだ。

「移動手段はこちらで用意してあります。必要となるであろう装備とセーフハウスも。端末に表示されたポイントへと移動し、任務を開始しするように」


ミュアはディスパーに一礼すると、端末を確認し、足早に会議室から出ていく。


「さて、後は貴方です。キクチ」

「なんでしょうか?」

「質問は?」

「…やはり、なぜ私がこの話を聞かされたのか分かりかねます」

キクチとしては喜多野マテリアルの戦略情報など聞きたくなかった。

キクチは唯のワーカーオフィス職員なのだ。喜多野マテリアル担当官に就いているとはいえ、このレベルの情報を与えられる役職ではない。

もうお腹いっぱいだから帰らせてほしい。


「今回の作戦に纏わる我が社の戦略ですが、どう転ぶか予測が難しい。それは理解できるでしょう」

「それは…はい」

「ですので、貴方の猟犬をしっかり制御して欲しいのです」

「…え?」

「他都市とは言え、近場に特大の火種が眠っている可能性があるのです。そこにあの2人が突っ込めば、制御不能な状況に陥る可能性が出てくる」

「……」

ディスパーが言っている意味を理解したキクチ。

6大企業間の戦争案件が眠っているかもしれない都市に、あの2人が足を踏み入れる様なことがあれば、何が起こるか分かったものではない。

その事に気づいたキクチは冷や汗をかき始める。

「ミュアの調査が終わるまで…いえ、出来れば全体の問題が片付くまで、あの2人をトウサカ都市には向かわせない様に。首輪は付けられていますが、鎖は付いていません。ラルフにも情報を共有し、行動の制御を確実に行ってもらいます」

「わかりました。共有する情報レベルはどの辺りまで許可されますか?」


キクチの質問にディスパーは少し考え、顔を上げる。

「彼はミュアが諜報員である事は知っていましたね。トウサカ都市には企業間の戦争の火種が燻っており、その調査に向かったと伝えてください。その上でスラムバレットには近づかせない様に、と」

「…承知しました」

それだけの情報でも渡しておけば、ラルフなら理解してくれるはずだ。

「明日の作戦と合わせて頼みましたよ」

「はい」

「以上です」


キクチは一礼を行い、会議室を出ていき、胃の中にギッチリと鉛が詰まったような感覚を感じながら、3人の待つレンタルホームへと帰っていく。


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― 新着の感想 ―
企業傘下の猟犬ではなくスラム生まれの野良犬だから勝手に獲物咥えて褒めてーって戻ってくるんやで笑
喜多野マテリアルとの関係はあくまでも雇われてるだけだと思うから命令を聞くのが当たり前みたいな態度にはモヤモヤする小市民。 主人公達は気にしてないだろしむしろ何やらかすかと恐れられてるけど。
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