違和感?!ーラス視点ー
まただ。頭の中がぼんやりして霞がかかったようになる。
あの日…。
***
突然、道端に立っていた。
服装は、ボロボロで原型を留めない。もちろん、身体も傷だらけだ。だけどそれ以上に問題があるのだ。身体を走る激痛よりも、何故ここにいるのか?何故傷だらけかのか?
いや、もっと言えば俺は何者なのか…。
もし、親切な農夫がいなければそのまま、立ち尽くして倒れていたかもしれない。数週間を要する傷の治癒も不安は増すばかりで。
農夫の言う国名も、地名も全く知らぬモノ。ましてや、身につけているモノに自分の身分を証明するモノとてない。
すると…「まずは身体を動かすと良い。」と農夫に言われ身体を動かして知る。自分の身体能力が他人より優れていると。
「アンタはきっと冒険者だったに違いないよ。我々のような生き方はしてないだろう。」と言われハッとする。
近くに落ちていた棒切れを拾って縦に振り下ろす。
ビュッ。
空気を切る音が心地よく耳に響く。
「持っていくと良い。ギルドで腕試しをしながら自分を探しなさい。」
それは貨幣の入った袋。ずしっと重い袋に驚いて返そうと彼を見て固まる。
頭を直角に下げると「この御恩は忘れません。」と言ってそのまま居心地の良い農夫の家を出た。しかし…世の中はそう簡単でなかった。名無しの記憶喪失など相手にされない。
ラス…という名も旅の途中で酒場の酔っ払いに揶揄い半分でつけられたのだから。
袋の中身がかなり軽くなってきた頃、耳寄りの情報が入った。
新しいギルドが人を探している。
かなり変わったギルドだと…。
***
あれから、感謝している。冒険者でないけれどやり甲斐のある仕事につけて部下も数人できた。主人であるヒー殿の命に従いカズキ殿の旅に同行するのも全く厭う気もなかった。
カズキ殿は変わった御仁だ。呆れる発見や行動も多いが不思議な魅力がある。驚く知識も多い。
そして何より彼を見ていると心の奥底が騒ぐのだ。その理由は名前同様行方不明だが。それでも側に居たい。そう強く思うのだ。
だから突然起きたこの事故を無難に収めようと必死だったのに。レナトゥス殿の圧倒的な力の前に穏便な解決が消えた。
と、思ったのに。
キリ…。
不思議な青年、キリは最近出来た部下の一人。今や腹心の部下だ。
だが、彼が任せてくれと言って相手に近づくと同時に展開した魔力に違和感を感じる。
背中にゾワリとしてモノが走るのだ。
だいたい、魔力は展開する時には何系か分かるのが普通だ。
火系・水系・地系など魔力を感じる事で次の一手を考えて戦うのだ。
なのに…見えない。
その不気味さに思わず、睨むように彼の魔法を見極めようとしたその瞬間。
「珍しいな。我が騎士団の誇る二人を一瞬で昏倒させるとはな…」と言って王族らしい男が起き上がった。
「狸寝入りだな。最初からお主にはそんなに打撃は与えておらぬわ!」レナトゥス殿は睨みながらそう返す。
「お?知り合いか?
じゃあこの『プレゼント作戦』はまだ有効かな?美味しい和菓子セットですよ。要りますか?」
超絶、現状を理解していないカズキ殿の台詞にそれまでの緊迫したその空気が穏やかなモノへと変わる。
良かった。
一安心しながらも、目の端でキリの動向を捉えていた。
しまった魔力はもう探れないが、何をするつもりだったのか?腹心の部下への疑いなど一番苦手だが…。
ぼやけてしまった記憶のカケラにあった彼の横顔が浮かんでは消える。
信じて良いのか、いや信じたい…と。
しかし
混乱する頭の中よりも、重大な発言を王族らしき男から聞くとは思わなかったが。




