俺の冒険は今、始まったんだークザン視点ー
真っ暗な視界に飽きたのか、居眠りをする弟が羨ましい。潜り込んだ場所は柔らかな布団の中なので揺れなど感じない。
はず…としてもコレはオカシイ。
揺れない馬車などない。僅かな経験しか無い俺だって知ってる事だ。
間違えたかな…。
聞き齧ったのは『旅に出る』と『当分は帰れない』の二つ。でもこれだけで決意するには充分だった。弟に見つかったのは予定外だったが俺の決意は固かった。絶対カズキと離れない!!と。
迷子の森で出会った変な大人のカズキは、最初単なる変人だった。いや、俺よりも下とさえ思っていた。考える事があり得ない事だらけだし、頓珍漢ばっかり言うから。
でも…。
俺達の大切な『タンラ』も守ってくれた。それに…『祭り』だ。
美味しいモノに感動したんじゃない!!(そりゃ食べたけど…)
飾り付けに驚いたんじゃない!!(固まったりなんてしてないから…俺。)
心躍る。なんて言葉で言い表せない凄さがあったんだ。あの空間にしか無いモノがあるんだ。だから…。
俺も夢ができた。
『祭り』を世界中に広める。そんな夢だ。あの祭りに出会った日からワクワクが止まらない毎日だったのに…。
それなのに…。
旅立ち?暫く帰らない??
そんなの待ってられない。置いてけぼりなんてヤダ!!
それからの俺の行動は早かった。
身の回りの荷物をコッソリ荷造りして、両親に手紙を書いて。
いよいよ決行の日の朝。
ルーナスに見つかって、潜り込むつもりの倉庫場所へは近づけず仕方なくカズキ達の部屋形馬車へ潜り込んだんだ。
なのに…間違えた。
まぁそもそもこんな豪華な内装の馬車なんて存在する訳ない。外側から考えられない程豪華な内装だし布団はフッカフカで見た事ない素材で出来てるし。
ギルドの売り出し用見本品だったのか。工作部門の人たちは優秀らしいから。買い付けがやたらと来るってヒーさんがぶちぶち言ってた。
もう…出発しちゃっただろうな。
乗り遅れて何だけど、コレで良かったのかもしれない。幼い弟まで巻き込むのは良くないから。。
落ち込む俺が思い直して、外へ出ようとしたその時。
ガタンッ!!!
激しく馬車が揺れて、外が騒がしくなった。
買い付けに、売れたのか?だとすれば不味い。早く降りないと知らない街へ行っちゃうよ、俺。
「$€%*〆.*々\>=+」
ええーーー!!!知らない言葉?!
まさかもう買い付けられて、知らない街に着いたのか?!
「いや、だからそう言ってるじゃん。もう聞く耳持たない奴には実力行使しかないな。レナトゥス。頼む…」
その声に俺は反射的に布団から出て馬車から飛び降りた。
「ええーーー!!!まさかのクザン?!
やっぱイナ。ヤランさんに正式に○○されるよ、俺。」
「主人よ。取り敢えずは目の前の奴から解決せよ。」
レナトゥスさんとカズキのやり取りを聞きながら俺は固まっていた。
だって。
目の前にいるのは、壊れた馬車と激怒しているお姫様だったんだから。
「大丈夫だよ、クザン。この人は誤解してるだけだから。安心して!!」
。。不味いぞ。カズキが『安心して』と言ったらやばい事が起きる前触れだとアルクトスさんが言ってた。
「お前たち。こちらのお方様がどなたか分かっていないだろう。こちらのお方は…」
「$%7ーー!!!!」
「お兄ちゃん、もう着いたの?」
二人の声は同時だった。
それもそのはず。ルーナスが持っていたモノを見て目の前のお姫様が突如叫んだのだから。
「あ、やっぱりだ。¢#5は世界を救うな。」
ニコニコと意味不明の言葉を話すカズキ以外、全員が固まっていた。
だって。
お姫様の後ろには、ずらっーと槍を構えた人たちが並んでたから。
こんな風に俺の冒険は始まったんだ。
素敵で凄くて…二度と経験したくないそんな俺の冒険が。




