生まれたのは…まさかの。。。
卵から生まれたのは、何故か二つ。
一つはオカシナ木のカケラ。
一つは鍵。
え?生き物生まれるのが、常識でしょ?!
グネグネした木のカケラも気になるし、更に一つは、鍵って…。
戸惑う俺に声がかかる。
『いにしえのドアノブは託した…。閉ざされた扉を開く時が来たのだ…。』
ギギギギ。。。
油切れのブリキ人間の様に振り返った俺の目に写ったのは、卵を産んだ単なる大木しか見えないけど…オーツの声じゃないよね?そうだと言ってくれ!!
期待を込めたのに、首を横に振るなよぉ。
八つ当たりをしたいけど、現実は厳しい…。
『世界の始まりを知るモノを探せ。その者は扉の行方を知っているはずだ。名は…』
え?最後の一番大切なところで寝るなー!!
口もないのに話したんだから、ちゃんと詳しく教えてくれーー!!
「無理だ。木の縛りに逆らえぬ。ほら見ろ…」
あっ。
枯れた…と思ったらそのまま砂の様にサラサラと流れて大木の姿はなくなった。まさか、俺にこれを渡したせいなのか?
手の中のドアノブと鍵を見つめる。
あの木が託したたった一つの…。
「センチメンタルなところ申し訳ないないが、あの大木は始めから陽炎の様な存在なのだ。お前に託す為に姿を現しただけだ。
しかし、アレを残すとはよほど。」
え?そこで止めるなよ。
アレって何??よほど…なに?
手の中の二つを汗まみれになって握りしめてる俺の横でオーツが落ち着いた様子で大木があったはずの場所から何かを広い上げた。
何か落ちてたのか?
「ほら。」
キノコ?
巨大椎茸が手のひらにあった。
まさかのご褒美はキノコとは、気が利いているなぁ。
「酒蒸しも美味いけど、炭火焼きも堪んないなぁ。どれにしようかなぁ。」
『何て無礼な奴だ!!』
へ?よだれ出てました?
オーツもどっから声を出してるんだ?
そんな甲高い声…、
『俺様だ!!こっちを見ろ!!!』
声を頼りにオーツの手のひらの巨大椎茸を見たら、目玉がありました。それも睨んでる目玉が二つこっちを見ていた。生きてる椎茸?
『我らを食べようなどと無礼な奴め。しかしお前に託された想いは我らでは叶えられぬ。良いか、一輝よ。我らに手を貸せば森の中の美味いものを教えてやっても良いぞ。』
腕組みをして偉そうな目玉キノコは、そう言って俺の肩に腰を下ろした(と、言うかへばりついた。。)
アルクトスに何て言おうかな。
最近、やたらと家族の増加したせいで、張り切って家の増築に励んでいたからな(やり過ぎとも言う。今や、家の外見まで巨大なお屋敷。中身は…)また、家の中で迷子になる可能性が増したな。
鍵とドアノブはいつの間にか、小さくペンダントに変化して俺の胸元にあった。
『ソレはお前にしか扱えぬ。盗まれる事もない。安心せよ…』
偉そうな椎茸に続いて、オーツがやっと帰ろうって言ってくれたよ。もう、お腹いっぱいだよ、俺。
「もう、このぐらいで冒険はやめてくれ。夕暮れになっているんだ。所長に何を言われるか…」
そうか…アルクトスを警戒していた俺は一番の敵を忘れていた。
レナトゥスの説教はその夜遅くまで続いた…。
あー。椎茸食べたい。。