✥12『飴と幻影の怪物。』
時刻は、深夜零時を過ぎた頃。
カレンダーはすでに事件発生から四日目へとその数字を変えていた。
ネオンの光もまばらになった眠らぬ街の片隅、深夜営業の薄暗い喫茶店の奥のボックス席に、朝倉と下田は座っていた。
二人の目の前には、黒髪を首元の長さまで綺麗に切り揃えた一人の女性が腰掛けている。
服装は隙のないリクルートスーツで、耳元には目立たない程度の小ぶりなイヤリングが鈍く光っている。
ややつり目の端正な顔立ちは、間違いなく美人と言って差し支えなかったが、それ以上に、周囲の人間を一切近づかせない徹底的な拒絶のオーラを放っていた。
彼女は机の上に置かれたハニーカフェラテのカップへと静かに指を伸ばし、その縁に口をつけた。
朝倉たちのまとう張り詰めた空気など最初から意に介さぬように、冷たい目つきで二人の刑事を黒い瞳で見据えると、綺麗に口紅の引かれたその唇を開いて、氷のように淡々とした口調で言葉を発した。
「それで、私に話したいこととは、
どんなお話でしょうか?
……言っておきますが、私にはこれから戻って処理しなければならない仕事が山積している忙しい身なので、用件はなるべく早めにお願いしますね」
彼女、
――『見込 雨』のその声には、深夜に警察から突然呼び出されたことへの動揺も、あるいは留守にしているはずの十四歳の我が娘を案じる気配すらも、何一つ含まれていなかった。
感情が綺麗に欠落したような、
酷く冷淡な静寂。
ハニーカフェラテの甘い香りが漂う中、朝倉はそんな冷え切った母親の瞳を、自身の内に渦巻く激しい焦燥とともにギリ、と睨み返していた。
――ここまで辿り着くための道程は、
文字通り泥をすするような執念の連続だった。
すべての始まりは、昼間の病院でのあの額山隼人の死亡。
そして、あの三つ編みの丸メガネの少女の残された『刑事さん』という絶対的な挑発の言葉だった。
あの娘は何者だ?
なぜ名乗ってもいない自分たちを警察だと見抜いていた?
朝倉たちはまだ、あの少女がこの未曾有の連続爆破事件の主犯である本星であるという確証までは持っていなかった。
……ましてや、
彼女があの中学校の教室の底で、どれほど苛烈な地獄に叩き落とされていたのかという立ち位置すらも、何一つ掴んではいない。
ただ、刑事の長年の直感が、あの少女の背中にすべての鍵が眠っていると叫んでいた。
朝倉はすぐさま病院のセキュリティルームへ向かい、
廊下の監視カメラの映像を確認、回収した。
静止画として切り出された、丸い瓶底のような分厚いメガネをかけた少女のちぐはぐな姿。
――実際のところ、
監視カメラの上で彼女の足跡を追うと、水琴は額山の病室ではなく、本当に彼女本人が口にした通り一年生の宮本花の病室の前に花束を持って佇み、看護師と話している映像が残っていた。
その客観的な事実があったからこそ、
警察側も彼女をすぐには額山暗殺の実行犯だと断定できず、ただの奇妙な一般のお見舞い客として処理せざるを得なかったのだ。
ただ、朝倉はその映像の少女の姿を学校のクラウドサーバーから叩き出した全校生徒の名簿表の写真の一枚一枚と執念で照合し、警察の網はようやくその『名前』を発見した。
――見込水琴、
✕✕✕中学校の二年生。
彼女のことを探るべく、朝倉と下田は再び街へと飛び出し、
生き残っていた中学校の生徒たちの元を再び回ってその写真を見せて歩いた。
だが、応答してくれる生徒たちの反応は一様に薄かった。
『さあ、よく知らない』
『同じ学年だけど、喋ったこともない』
――。
水琴があの教室の中で、教員と額山たちから人間以下のゴミのように扱われ、学校全体で暗黙の了解として『透明人間』、もしくは『それ以下のもの』として無視され続けていた不気味なほどの無関心。
少女の足跡は、あまりにも綺麗にあの中学校の空気の中に消えていた。
打つ手がなくなり、
二人は一度目の聞き込みで大きなヒントを遺してくれたあの不登校の少女、鹿海美咲の自宅へと、もう一度だけアスファルトの路地を踏み締めて向かった。
『……これでもう最後です。
以後、もう来ないでください。』
その言葉を聞いた後、朝倉は彼女に1枚の写真、『見込水琴』の写真を見せた。
その写真を見せられた美咲は、ものすごく渋い顔をして『……言いたくない』とだけ残し、二人の制止も聞かずに再びぴしゃりと扉を閉めた。
美咲だけは、あの学校で水琴がどれほど苛烈な日常を送っていたかを知っているからこその、重い拒絶だった。
……ただ、名前だけは分かった。
朝倉たちはその足で彼女の自宅へと向かい、
そこで留守を任されていた家事代行の鼎 朝子からようやく話を聞くことができた。
鼎 朝子の語る水琴の人物像は『内向的で真面目な子』であり、驚くべきことに、彼女はあの大爆発の直後から『しばらく家に帰ってきていない』というのだ。
完全に線が繋がろうとしていた。朝倉たちは鼎 朝子から水琴の『例の電話番号』と母親の緊急連絡先を聞き出し、昼間の途中でようやく電波が通じたその携帯へと覆面パトカーの中から連絡を入れたのだ。
そうして約束を取り付けたのが、この深夜の対峙だった。
……ちなみに水琴の『例の電話番号』には一切繋がらなかった。
✥
✥
✥
――「あなたの娘さん、
水琴さんは、今どこにいる?」
朝倉が懐から、あの監視カメラから切り出した水琴の顔写真をテーブルの上に滑らせて問い詰めると、見込雨は深くため息をついた。
「……違うでしょう。
あなた方警察が本当に聞きたいのは、あの子が今どこにいるかではなく、
あの子が一体どういう子なのかを知りたいんじゃないんですか?」
「……何だと?」
「的外れな質問で時間を無駄にしないでほしいと言っているのよ」
氷の刃のような雨の切り返しに、
朝倉は椅子の背もたれに身体を戻し、不敵な悪人面に苛立ちの硬さを滲ませた。
「……へぇ、じゃあ逆に聞くが、
お前に自分の娘のことがまともに言えんのか?
こっちは裏を取ってんだよ。
あんたは普段からまともに家に帰らず、
水琴さんの食事も身の回りの世話も、すべて家事代行の鼎 朝子さんに丸投げしていたって言うじゃねえか」
朝倉がここぞとばかりに、
親としての無関心を責め立てるようにして見込雨に言う。
だが、雨の表情はピキリとも動かなかった。それどころか、彼女は口紅の引かれた薄い唇の端を、嘲笑うかのようにわずかに吊り上げた。
「ええ、そうね。
家事代行を雇って生活を回していたのは事実よ。
……でも、自分の娘のことだから、私だって母親としてある程度は理解しているつもりよ。
……少なくとも、仕事真面目であることにかこつけて、普段からろくに家に帰らず、あまり自分の子供を見ないせいで今頃は年頃の娘さんにガチで嫌われていそうな、そちらのあなたにだけは言われたくはないわね」
感情の一切籠もっていない、
淡々とした静かな声。
それが、深夜の喫茶店のボックス席に冷酷に響き渡った。
「――つ!!」
その言葉を正面から浴びた瞬間、朝倉の悪人面が、目に見えて醜く歪んで硬直した。
図星だった。
昼間、下田の鮮やかな手品と飴玉のやり取りを横で見ながら、『最近、家で娘に本気で煙たがられている』という己の家庭の不和を惨めに見せつけられたばかりだったのだ。
何の関係もないはずの、初対面のこの冷徹な女に、刑事としてのまとう泥臭い生活の綻びを完璧に看破され、最も脆い痛点をピンポイントで抉り抜かれた。
横に座る下田が
『げぇ、先輩ガチの図星突かれてるっす……』
と言いたげに、気まずそうに視線をこちらに向けた。
……後で一発、拳骨だ。
このやろう。
朝倉は顔をしかめたまま、奥歯をギリ、と噛み締めることしかできなかった。
朝倉のそんな動揺など一切気にも留めず、見込 雨はハニーカフェラテのカップを静かに見つめながら、平然と言葉を重ねた。
彼女は合理的で、無駄を何よりも嫌う女だ。
だからこそ、その観察眼は我が娘に対しても、恐ろしいほどの解像度で張り巡らされていた。
「あの子は、私の言うことをすべて寸分違わず守る、内向的で、手のかからない、完璧に真面目な優等生。
……成績は常に学年トップ、提出物の遅れも一度もない。
泣き言ひとつ言わず、私に一切の迷惑をかけない。
……ただ、あなたが思うような、
何を考えているか分からない不気味な子供なんかじゃないわね」
雨はため息をつきながら、どこか遠い目をして、しかし水琴という一人の人間を深く見つめてきた母親の口調で答える。
「子供の頃なんか、
些細なことですぐ怒り出すから結構めんどくさいところがあったのよ。
……それに、私の誕生日の日とかは私がどれだけ仕事で遅くなって夜中になっても、絶対にリビングで夜中になるまで私のことを起きて待ってるし……。
変なところで頑固なのよ、あの子。
それに、私はね、
別にあの子のことをただ放任しているわけじゃない。
私が家に居れない分、一番信頼できる人間を選んであの子の安心して帰れる場所を用意している。
あの子がどういう人間か、いつだってちゃんと見ているわ」
雨の言葉には、確かな母親としての視線があった。
歪んではいるが、
それは紛れもない親心だった。
「……それであの子が今どこにいるかっていう質問だけど、知らないわ。
昔から変な人には近寄らない、つるまないようにとはきつく言っているけれど、
今回はどうかしらね。
……まあ、ほとぼりが冷めたら勝手に帰ってくるとは思うけれどね」
雨はゆっくりとシートから立ち上がった。
気づけば、彼女の目の前にあったはずのハニーカフェラテのカップは、いつの間にか一滴の残渣もなく綺麗に空になっていた。
ふと、雨はリクルートスーツの懐から、手のひらに収まるサイズの赤いスチール製の四角い飴缶を取り出した。
カチャカチャ、と硬質な金属音が響く。
彼女が自分の手のひらの上へとザラザラと吐き出したのは、色とりどりのドロップの塊だった。
それも、一つや二つではない。
優に五個はあろうかという固形の物体を、雨は感情の籠もっていない鉄の無表情のまま、一気に口の中へと放り込んだ。
分刻みの過酷なタイムスケジュールに追われ続ける彼女にとって、それは味わうための嗜好品などでは断じてなかった。
ただ、過労寸前の脳を強引に駆動させるための、最も効率的な『糖分補給のアイテム』に過ぎないのだ。
だから彼女は、ドロップを舐めることもしなければ、バリバリと噛み砕くこともしなかった。
ただ、人形のような無表情のまま、その五個の硬質な糖分の塊を、まるで機械がガソリンを流し込むかのように、喉の奥へとゴクリと一気に丸呑みにして見せた。
手のひらの上にあった色とりどりの5個あったドロップは一切の音を立てることなく一瞬で彼女の胃袋へと消失する。
その人間の摂食行動から完全に逸脱した、あまりにも効率的で異様な光景を真横で見ていた下田は一瞬にして顔を青くし、あまりの光景に喉を鳴らして完全に硬直していた。
雨は喉を鳴らした直後のフラットな顔のまま、顎で二人に向かって
「飴玉、いる?」と、無造作に手で示したが、刑事二人はその底知れない異質さに言葉を失い、ただ無言で首を横に振るしかなかった。
「あっそ、」
雨は淡々とそれだけを言うと、伝票を手に取ってテーブルの端に自身の分の勘定だけを綺麗に置き、朝倉たちの制止の声を聞く耳も持たずに、そのまま冷たいヒールの音を響かせてカフェの自動ドアの向こうへと出て行ってしまった。
残された深夜のボックス席に、ハニーカフェラテの甘い香りの残る静寂だけが戻ってくる。
ドアが閉まり、彼女の気配が完全に夜の闇へと消え去った時、下田は大きく張り詰めていた息を、震えながら吐き出しつつポツリと呟いた。
「……ずいぶん強烈な人でしたね、先輩」
「あぁ……、
強烈なんてレベルじゃねえ。
あの親にして、あの娘ありだ」
朝倉は置いていかれた水琴の写真を苦々しく見つめながら、咥えた煙草に再びライターの火を灯した。
「たくっ、俺たちが見せたのは警察手帳だけだろうが……!何で俺の娘の話知ってんだよっ」
感情を殺し、機械のように完璧な真面目さを装い、裏では指先ひとつで世界を焦土に変えている14歳の水琴。
その怪物を育て上げたのは、単なる無関心ではない。
娘のすべてを恐ろしいほどの精度で観察し、寸分の狂いもない合理性を求め続けた、いまドロップを5個同時に飲み込んで去っていったあの母親の、常軌を逸した冷徹な効率主義の環境だったのだと、刑事たちの魂に重く冷たい確信が刻まれるのだった。
✥
✥
✥
「……にしても、これでハッキリしたっすね」 下田が喫茶店 特有のクッション性の高い椅子の背もたれに深く体重を預け、天井の薄暗い蛍光灯を見上げながら、ポツリと重い声を漏らした。
手元のスマートフォンには、あの中学校の裏で蠢いていたヤクザの集金コミュニティのログが冷たく光り続けている。
「一日目の反社の商業ビル、
二日目の✕✕✕中学校、
そして、今日の午前中だけで五件も吹き飛んだ、警察の上層部すら公式には隠蔽していた山奥の違法隔離都市……。
どれもこれも、表に出せない裏社会の真っ黒な利権の拠点ばっかりっす。
……今回の事件を起こしてる姿なきテロリストどもの狙いは、最初から一貫して『反社会組織の完全な殲滅』っすね。
思想犯か、それとも利権を根こそぎ奪い取ろうとしてる新興の巨大武装組織の仕業か……。
いずれにせよ、コンクリートを一瞬で超高温の粉砕焦土に変えちまうような、とんでもねえ量の特殊爆薬を、事前にすべての施設の地下設備へ完璧に潜入して仕込むなんて、国家転覆クラスの工作員どもがバックにいるのは間違いねえっすよ」
「ああ、普通の火薬の匂いがしねえってことは、科学班の言う通り窒素を素に製作された特殊な新型燃料気化爆弾か何かの類だろうな。
……これだけの規模の爆薬を、
警察の目もヤクザの警戒もすり抜けて、すべての拠点の基礎部分へ完璧な隠密性で搬入・設置してみせた。
文字通り、軍隊上がりの超プロのテロ組織が直々に動いてる……つぅところだな。」
朝倉は灰皿に煙草の灰を落とし、険しい顔つきのまま腕を組んだ。
そう――彼ら警察の『人間』は、誰もが未だに、この未曾有の連続爆破テロの凶器がはるか上空の死角から飛来する【軍用固定翼ドローン】であるという事実に、これっぽっちも気づいてはいなかったのだ。
現場を灰にした絶対的な破壊の爪痕があまりにも巨大すぎるがゆえに、それが「事前に地下へ大量の爆薬を仕込まれた、完璧な内部工作による同時遠隔起爆」であるという、プロの刑事ならではの固定観念の迷宮へと、完全に誤認させられていた。
「……だが下田。
だとしたら、あの『見込水琴』ってガキは、一体何なんだ?」
朝倉は、テーブルに滑らせた少女の顔写真を、太い指先でトントンと叩いた。
「ただの一介の学生が、あの規模の爆薬の地下搬入や、病院の特定の部屋の回線だけを狙い撃ちで落とせる高度な電子工作を一人で操れるわけがねえ。
なぜ、あいつは俺たち私服の刑事を一目で見抜いて『刑事さん』なんてわざと言い残して去っていった?
なぜ、名簿を洗っても✕✕✕中学校の奴らは一様に『よく知らない』と口を閉ざす?
家事代行の鼎 朝子の話じゃ真面目な引きこもり気質のガキが、なぜあの爆破の直後から、母親すら居場所を知らねえ状態で街のなかに消えてやがるんだ?」
「……確かに、全部が偶然にしちゃあ出来過ぎてるっすね。
あの子の周囲だけ、綺麗にデータの足跡が消されてるような不気味さがあるっす」
下田も身を乗り出し、水琴の写真を見つめながら眉間を深く寄せた。
「なあ下田、
あの見込水琴って少女は、爆弾を仕掛け回したテロの主犯じゃないのかもしれねぇな。
……だが、あの全滅した中学校の『裏の集金システム』の真ん中で、反社下位勢力の奴らと、その奴らを大規模な爆破で狩り回ってる巨大なテロ組織との間の、何らかの『境界線(接点)』に立っちまってる奴なんじゃねえのか?」
「境界線……。
つまり、先輩は地下に爆薬を運び込むための手引きをさせられたか、あるいは組織の連絡員、つまりメッセンジャーとして利用されてると考えているってことっすか?」
「その可能性は十分に高いんじゃねぇかと俺は考えている。」
朝倉の推理が、夜の喫茶店の重苦しい空気の中で静かに形を成していく。
あの中学校には、裏に反社下位勢力が絡んだ最悪の『毒』が広がっていた。
……もしかしたら、
あの見込水琴という娘も、あの腐敗し地獄と化したあの校舎の中で、その犯罪組織の何らかの最高機密に偶然触れたか、
あるいは巻き込まれて、奴らの大爆破抗争の『手引き』として利用されているのかもしれない。
……そう考えれば病院で額山が亡くなったあのタイミングで、あいつがわざわざ俺たちの前に現れて挑発じみた言葉を残していったのも、額山の口封じのためにテロ組織側が、警察の目をそらさせる為に行われた引きつけ目的の高度な『囮』だったと考えればすべて説明がつく。
そう、朝倉が説明すると下田は神妙に頷いた。
「なるほど……、
あの子を盾にして、警察の初動捜査を撹乱させてる間に、ここまで本星のテロ組織はさらに次の反社下位勢力の、『拠点』の地下へ爆薬をセットしに動いてるってわけっすね。」
……あの少女には、確実に何かがある。
奴らの尻尾に繋がる決定的な『何か』が警察の包囲網が、
水琴を『巨大なテロに巻き込まれた重要参考人・救出すべき囮の少女』として捉え、
彼女の背後にいる『架空の潜入工作員グループ』の影を追う方向へと、大きく、深く旋回を始めた。
主犯であるという真実からあえて一度遠ざかり、大人の複雑な社会派サスペンスの迷宮へと完全に迷い込んでいく刑事たち。
この警察側の『凶器と主犯の二重の誤認』というリアルな迷走こそが、水琴とトロイの全能の工作をより際立たせていた。
「よし、下田、
あの中学校の早退・欠席者の中で見込水琴の身辺をさらに徹底的に洗うぞ。
奴が普段どんな場所に立ち寄っていたのか、何を拠点にしてあのテロ組織と接触したのか、すべての日常のログを引っ張り出せ。
奴らの囮にまんまと乗っかってやる。
その先にある本星の首を毟り取るためにな」
「うす!今日は
徹夜で電子の網を張り直すっすね!!」
朝倉は灰皿に煙草を強く押し付け、席を立ち上がった。
深夜一時。眠らぬ街の包囲網が、まだ見ぬ巨大な怪物の幻影を追いかけて、二人は再び泥臭く動き始めようとしていた。




