『プロローグ』
この世界は不条理だ。
あまりにも理不尽で、
あまりにも残酷で、
そしてどうしようもないほどに傾いている。
力あるものがその力を身勝手に振りかざし、力なきものはただ泥をすすり、
抵抗する術すら持たずに踏みにじられる。
……それがこの世界の当たり前だった。
かつて、ある大人は私に向かって得意げにこう言った。
『力がないのは罪である』と、
学校という狭い地獄の中でボロボロになっていたあの当時、私もその言葉を真実だと思い知らされ、
己の無力を呪うしかなかった。
何も持たない私は、ただ存在すること自体が罪なのだと、本気で信じ込んでいたのだ。
だけど、
――あの日々を通り過ぎ、
あのはかなくも凄まじい経験を経た今、私はもう一つの、より深い真実に気づいてしまった。
『力があることもまた、罪である』と、
持たざる者が奪われる日常も、持つ者が引き起こす破壊も、本質は何一つ変わりはしない。
強すぎる力は、それを手にした瞬間に、
人を孤独な怪物へと創り変えてしまうのだ。
今、私がこうしてノートに書き連ねている文章は、きっとこの先、
私が生きている間もその先も誰の目に触れることもないだろう。
警察も、
世間も、
私をすくい上げた
あの耳元で囁いた声の主さえも、
私が語る真実を知ることはない。
だけど、私は決して忘れたくはないのだ。
自分が自分の意思で引き金を弾き続け、
世界を審判したあの目まぐるしい瞬間の数々を。
あのヘドロの臭いと、
冷たい受話器の感触を、
ここに書き残しておく。
✕✕✕✕年✕✕月✕✕日 見込水琴




