最後の客
車椅子の爺さんはコンビニ店員に怒った。
「しょっちゅう来るのに分からんか?オレいっつも10番のタバコ買うやんか。それ以外買った事無いやんか」
「いえ、何番か聞いてくれと言われてまして」
「兄ちゃんだけやで」
「えっ?」
「オレに何番か聞いてくるの。他のみんなはタバコ言うたら聞かずに10番出すで」
「すいません」
「客の好きなモン覚えんと仕事やる気ないんとちゃうか。みんなに比べてやる気無いわ自分」
だいたい、文句言う時に『みんな』って言う奴に責任感は皆無である。言い返された時の保険で3流が使うセリフだ。
別の日、車椅子の爺さんは駅員に怒っていた。
「オレ、いっつも通ってるのに○○駅までですか?って何で聞くん?」
「安全確認のためですが」
「みんな聞いて来えへんで。あんただけやで聞いて来るん。覚える気ないんか?」
「すいません」
この爺さん、乗り換えがあるので駅員が「乗り換え○○駅ですか?」と聞く。駅員が向こう側のホームのエレベーター前で待ってると
「そこ立ってたら邪魔やろ。みんなそこ立ってないですよ。空気も読まれへんのか」
「すいませんね」
感じの悪い爺さんだが、ついに天罰が下る。
死因は心臓発作。爺さんはあの世の人に話しかけられた。
「あんた、もったいない事したな」
「そうなんですよ、元気やったのに。所であなたは誰ですか?」
「閻魔大王の下っ端です」
「閻魔大王!何で俺が地獄なんですか!」
「本来、障害を持って生まれた人の来世ってかなり優遇されるんですよ」
「それやったらおかしいじゃないですか!」
「周りに感謝しないと」
「えっ?」
「あなたが文句を言ったコンビニ店員と駅員。共にあなたが最後の客やったんですよ」
「だからどうしたんですか?」
「頭に残りますよね。それが怨念になって我々に伝わった」
「えっ!」
「2人とも、あなたの事○んでほしいって強く願ってたから心臓発作になった」
「えっ!」
「よくあなたはみんな言ってる、やってる言ってましたが、みんなって2〜3人じゃないですか」
「…まぁ」
「そんな意地悪した奴の来世は優遇されませんよ。感謝したら良かったのに。みんなあなたは嫌な奴言ってましたよ。みんなって2人やけど」
「待ってくれ!」
「助けてくれる人に礼もよ〜言えんのか。当たり前や思ってたんと違うか。俺も忙しいんだ。もういいだろう」
パチッ!
元コンビニ店員の兄ちゃんが殺した蚊は半年前、タバコでボロカス言った爺さんである。
この爺さん、次も蚊で元駅員にも殺される運命である。




