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パラサイト戦記  作者: 五月雨拳人
第二章 変わる目的と、その意義
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第八十九話 教えてゼンさん①

 朝食中の会話の中で、領民たちの訓練の事が話題になった。

「刈り入れが終わったら本格的にやらないとなあ」

「けど、こっちの刈り入れが終わる頃には向こうも終わってるから、あんまり時間は無いんじゃない?」

 しまった、ルーンの言う通りだ。敵国であろうと、大きく南北に離れていなければ農作物の収穫期はそう変わるはずもない。だとすれば、領民たちを訓練する時間はほとんど無いと思ったほうがいいだろう。

「ほう、領民たちを訓練しているのですか」

 俺たちの会話を聞いて、ゼンが興味深そうに会話に入ってくる。

「ちなみに、どういった訓練をしているのですか?」

 俺が五人組の事を話すと、ゼンは「ほほう、五人一組の隊列ですか」と感心しながら相づちを打つ。

「けど今回は時間がほとんど無いから、前回みたいに五組全部の訓練まで手が回らないだろうな」

 そもそも前回の訓練も途中までしかできなかったのだ。なのにさらに短い時間で何かできるとは思えない。

 困ったなあ、と思っていると、意外なところから提案があった。

「でしたら、一つの事だけ徹底させたらどうですか」

 何とゼンが新しい訓練とその教官を買って出たのだ。


 夕方。村の広場には俺たち四人と、今日の仕事を終えた領民たちが集まっていた。

 一日しっかり畑の刈り入れをした彼らは、とても今から訓練をする体力は残っていなさそうだった。おまけにもう陽も傾きかけ、夜も近い。

 そして何より、今回の訓練のキモとなる教官役のゼンがまだ広場に来ていなかった。

「……まさか逃げたんじゃねえだろうな」

「やめろよコング。口に出したらそれが現実になるって言うだろ」

 言いながらも、俺はまさかの時の事を考えていた。具体的に言うと、集まった領民たちにどう言って解散してもらうかだ。

 領民たちをしばらく待たせていると、さすがに不安になったのか、ざわざわと騒がしくなってきた。拙いな。そろそろ何か適当な理由を考えないといけないが、そうすぐに都合のいい理由が思いつかない。

 そうしてさらにざわめきが強くなって、不満の矛先がこちらに向くんじゃないかと思われたその時、

「いやあ、すみません。お待たせしました」

 肩に大量の長い棒を担いだゼンがやって来た。

「遅いよ。っつかいったい今までどこに行ってたんだよ」

「ちょっとこいつを取りに山まで。けど皆さん全員の分となるとさすがに一度に運べなくて、とりあえず持てるだけ持って来ました」

 そう言ってゼンが地面に降ろしたのは、長さがコングの身長の四倍はある木の棒だった。

「何だこりゃ。木の棒なんてどうするんだ?」

「これは、今はただの木の棒ですが、先に槍頭を着けてやれば立派な槍になります」

「槍? こんな長い槍なんて見た事ないぞ」

「これは拙僧がとある国を旅をしている時に、兵士たちが使っていた戦法です。この長い槍を持った兵士が縦横数列に隙間なく並び、こうして槍を構えると」

「槍の壁ができるって事か」

「左様。これなら槍の長さの分だけ敵と距離を取れ、密集陣形を取る事によって槍の隙間を埋める事ができます」

「しかし、槍の扱いってのは結構難しいんじゃないのか? しかもこんな長い槍となると、もっと難しいだろ。素人に今から教えて戦に間に合うのか?」

「それならご安心を」

 にっこり笑いながら、ゼンは木の棒を一本持って持ち上げる。垂直に立った棒は、先端が雲に届くかと思われた。

「憶えるのはたったのこれだけです」

 そしてその状態から棒を倒し、勢いよく地面を叩いた。

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