第六十話 相談
「じゃあ、改めてみんなに相談する。これからどうしたらいい?」
残った選択肢は二つ。
どこかに援軍を要請し、徹底抗戦する。
敵の大勢が整う前に、こちらから敵国に乗り込んで王城を落とす。
程度の差はあれ、どちらも攻撃的な案だ。まあ領地の守りの薄さは先日の戦で充分わかってるから、攻めの案しかないのは当然だろう。
「あ、その前にひとつ訂正」
緊張感の無い声とともに、ルーンがすっと右手を挙げる。
「残る選択肢だけど、こっちから敵国に攻め込むっていうアレ。よく考えたらぜんっぜん現実的じゃないから忘れて」
え~、今さら……?
「いやあ、つい指を三本立てちゃったから、どうにかして案を三つ出さなきゃって思って出したんだけど、後になってよく考えたらこれ絶対無理だなって」
「指のほうを先に立てたのかよ。普通考えが先にあって、後から指を立てるだろ」
「うん、まあそうなんだけど、二択しかないって何だか寂しいなあって思ったら、つい指が動いちゃったんだよね。で、一度立てた指を下ろすのもなんか恥ずかしいから、つい流れで」
つい流れで、じゃねーよ。じゃあ実質一択じゃねーか。選択の余地なかったのかよ。
「あ~、あるよね~。つい身体が先に動いちゃって、今さら後に引けなくなるって。わたしも八百屋さんとかで、特に買う予定のないもの指差しちゃって、お店のおじさんに断れずにそのまま買っちゃう事あるもん」
ホーリーがあるある、とにこやかに笑うが、そういう問題じゃねーよ。
「……じゃあ、結局俺たちにできる事は、どこかに援軍を頼むしかないってわけだな?」
「しかしなあ、援軍っつってもどこに頼む? 俺らみたいな新米領主の頼みなんて、誰も聞いちゃくれないと思うぜ」
「そうなんだけど、どこか見つけないと遅かれ早かれ戦力の差で押し切られちゃうよ」
う~ん、と一同の唸る声が食堂に響く。とりあえず、片っ端から候補を挙げてみるか。
「あまり頼みたくはないが、あのクソ王はどうだ? 一応領主からの要請だ。無碍にはできないだろう」
「それはどうかな。元々、あたしらドラゴン殺しの英雄を使い潰すつもりでこの領地を宛てがったような奴だよ。助けてくれ、なんて頼みに行ったら、これ幸いとばかりに統治能力の欠如だか何とか理由をつけて領地も地位も剥奪されかねない。あいつに弱みを見せるのだけは避けたいね」
「そうだな、あいつクソだからそれくらいやりそうだな」
吐き捨てるようなルーンの意見に、コングも同意する。言われてみれば、あの王様とかいう奴は明らかに俺たちの存在を疎ましく思っているようだったな。権力者にとって英雄という存在は、有事には必要だがそれ以外の時は邪魔でしかないのだろう。
「けどそうなると、他に頼めるあてなんてあるのかな……」
不安そうなホーリーの声に、みんなの口が閉じる。出て来るのは妙案ではなく唸り声ばかりで、早くも万策尽きたかと思われた。
援軍か。コングの言う通り、今の俺たちを助けるメリットは無い。地位、人徳、金と全てにおいて無い無い尽くしだ。あるものといえば、せいぜいドラゴンより強いこの身体くらいのものだ。
「ん?」
いや、これは使えるかもしれない。
「どうした、スレイ?」
「もしかしたら、援軍が頼めるかもしれないぞ」
俺がそう言うと、何故か笑いが起こった。




