表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラサイト戦記  作者: 五月雨拳人
第一章 生きる目的と、その意味
44/140

第四十四話 ……え?

 永い間待ち侘びた再戦の時が、ようやく訪れた。

 俺はこの日のために、この時のためだけに、今まで生きてきた。

 すべてはこいつらを殺し、あの日の仇を取る。そのためだけに、この最強のドラゴンの身体を手に入れたのだ。

 ――なのに今、どうして俺は無様に地面に這いつくばっているのだろう。

 まるで悪夢を見ているようだった。

 戦いが始まった瞬間、俺はまるで見えない巨大な手に押さえつけれたかのように、身動きが取れなくなった。そのせいで全てを焼き尽くすはずの炎は、奴らにはまるで届かなかった。

 そうしている間に戦士は巨大な剣で俺の鱗を斬り裂き、ちまちまと傷をつけていく。傷自体は小さなものだが、虫に噛みつかれているようで非常に苛立つ。

 だが一番俺の神経を逆撫でしたのは、やはり奴だ。

 スレイは、ゴブリンだった頃の俺と戦った時とは比べ物にならないくらい強くなっていた。奴の剣は今まで戦った誰よりも俺の身体を深く傷つけ、その動きは目では追えないほど速い。

 尾から駆け上がって剣を突き立て、そのまま背中へと一直線に斬り込んで来る。奴の剣が俺の身体に一本の道を作り、駆け抜けた後に血がほとばしった。

 何故だ。何故奴は俺よりも強い。

 俺がこの身体を手に入れるためにした苦労よりも、奴が現在の強さを手に入れるためにした努力のほうが大きかったとでも言うのか。

 認めたくない、そんな事。

 しかし現実は非情である。俺は何もできないまま、スレイが俺の身体を斬り裂きながら頭に向かって走って来るのを見る事しかできなかった。

 斬り裂かれた傷から血が噴き出し、痛みと失血で意識が遠のく。薄れゆく意識の中で、俺は自分が負けたと思った。

 また負けるのか。

 ここまでして、それでも――

 何だか酷く疲れた。

 朦朧とした中で、俺は思う。

 もういいか。

 もう終わりにして、休もう。

 そうすれば、向こうでゴブ夫に……。

 そして遂に奴は辿り着く。

 俺の眼前で、再び言った。

『成敗』

 今度こそ、俺は死んだ。


 死んだはずだった。

 なのに、目が覚めた俺は、何故かスレイになっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ