第二十五話 光明
生物は、外からの刺激に対して脳からの信号を介さない行動を起こす場合がある。
所謂反射という奴で、これこそが俺の探し求めていた答えだった。
そもそも相手は生きて動いている相手だ。実験のように、気絶して無抵抗な相手じゃない。噛み付かれたら振り解こうとするし、反撃だってする。だがこの当たり前のような反撃が、実は重要だったのだ。
相手が反撃すれば、こちらは痛みという刺激を受けて反射行動を起こす。この反射を上手く使えば、以前断念した牙が邪魔で傷口に入れないという問題を解決できるかもしれない。
だがこのままでは単なる賭けだ。上手くいけば、という事は、下手をすれば逆という事もある。刺激に反応して、歯を食いしばって牙が余計に深く刺さるかもしれない。
だからそうならないために、もう一手打つ必要がある。
それが、無意識化に命令を打ち込んでおいて、反射行動をこちらの思い通りに操作するという案だ。こうしておけば、一か八かという危ない橋を渡らずに済む。
幸い、脳の事を全て知り尽くしてやろうという試みのお陰で、俺の脳知識や操作技術もかなり向上している。今の俺なら命令信号を打ち込んでから脳を離脱しても、宿主の身体は問題なくその命令を実行するだろう。
これはイケるかもしれない。俺がほくそ笑むと、狼の顔が不器用に歪んだ。
これでお膳立ては揃った。
待ってろよゴブリン。
お前らのボスを乗っ取り、俺がお前らを支配してやる。




