第十六話 転機
ゴブリンのゴブリンによるゴブリン大虐殺の現場から離れた俺は、狼の群れには戻らずにしばし独りで考える事にした。
ゴブリンヤバい。
同種同士の殺し合いは、珍しい事ではない。ゴブリン以外にも、動物なら普通にする事だ。
問題は武器を使い、武器同士の戦闘をするという事と、
相手を騙すという知恵。
これは新しい。
そして面白い。
ぼんやりと次の寄生候補先にと考えていたが、今はっきりと決心した。
次は絶対ゴブリンだ。
さて、寄生候補が決まったところで俺は考える。
どうせ寄生するなら下っ端は厭だ。狼の時に感じたが、集団での社会的地位が低い個体に寄生すると、餌の配分が少なかったりそのくせ雑用が多かったり、上位の者にいびられたりつまらない用事を押し付けられたりと何かと面倒くさい。
だからゴブリンに寄生するとしたら、やはりボスゴブリンを狙いたい。
だがここで一つ問題がある。
俺の寄生方法は、相手に食われないといけない。経口摂取で体内へと侵入し、そして胃の中から血管へと移動。血流に乗って体内を巡って脳に到達し、そこを占拠する。ずいぶんと回りくどいし、何より受動的だ。
この受け身な方法だと、狙った獲物に食われるという保証が無く、確実性に欠ける。せっかく身体を乗っ取っても、お目当ての相手じゃなければ意味が無い。
ここはやはり、能動的な、攻めの寄生方法を考えなければ。
しかし、自分で言っておいてアレだが、『攻めの寄生方法』って矛盾してないか? そもそも食われないと相手の体内に入れないのに、自分から攻めて行ってどうするつもりだ。自分から食われに行くのか? 無理だろ。俺だったら食わないよ、自分から食われに来るような奴。怖いし。
だったら、まず寄生相手の体内に入る方法から見直さなければならないだろう。つまり、自分から食われに行くのではなく、自分から相手の体内に入る方法を考えるのだ。
そこで俺は、自分の寄生方法をもう一度見直す事にした。すると、一箇所無駄と言うか、省略できるのではないかと思われる動作がある事に気づいた。




