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妖し少女あずき  作者: 椎名 園学


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16/39

絞首って痛みが続かないから人道的なんだよ

お待たせしました

ストックは30話程度あるので1か月以上は毎日投稿できます

同じ時間に恋愛小説「海中もくず」も投稿しているのでよろしければそちらも見てください

角を曲がって突然現れた、動かない浅田さんの顔には雨が無情に降りかかり、髪も服も濡れ、頬からはまるで涙のように水がしたたり落ちている。俺は、ただ目を薄め、そっと近づき浅田さんの頬に手伸ばした

「だめ!!」あずきの声が耳に入ったのと同じ時、草むらの中からロープが引っ掛かり体が宙へ勢いよく引き上げられる。俺の体は逆さの宙ぶらりんで木に吊り下げた

「あ、あずきー助けてくれ」

反動でぶらぶら揺れる俺をあずきはじっと見つめ、銃を向ける。

「へ?」あずきは迷わず引き金を引いた。

弾丸は見事に俺を縛る縄に当たり解け、俺は地面に真っ逆さまにたたきつけられる。

頭から落ち、頭の中で痛みの余韻が長く。仰向けで暗い雨雲のみが見える視界の端からあずきは、無顔で現れた。

「いや、嬉しいんだけど⋯もっと助け方あったでしょ⋯」

「妖術の跡があったから、浅田茉奈の首つりはおそらく妖怪の仕業⋯⋯でも、妖怪が今みたいな罠を仕掛けることはほとんど無い⋯⋯」

痛む頭をすりすりこする俺をよそ目に、あずきは浅田さんの首の縄を引きはがして、地面にゆっくり寝かせる。

「もう、死んだんだよな」

浅田さんのように、俺の顔や服に雨が染み始め、体が冷たくなってくる。顔を見るに浅田さんは体全部がが冷たいんだろう⋯

「いや、まだ確実に死んだわけでもない」

聞いた途端、無意識にぬかるんだ地面に手をつき、浅田さんを見てしまう

「浅田茉奈の体に誰かが妖力を張ったみたい。うまいことアメフラシを避けて」

「じゃあ⋯」

「けど、アメフラシが浅田茉奈の生気をもともと吸い取って動かしてたみたいだから、あめふらしが死んだ今、浅田茉奈の体は突如ほぼすべての生気がなくなった状態になって、生死をさまよっている。多分このままじゃ死ぬ。いちおう先に言っておくけど、浅田茉奈を助けたところで報酬が増える訳じゃないから、助ける気は無いよ」

あずきは仕事は済んだとでと言いたげの済ました顔で、浅田さんに近づきポケット漁り、奪われた銃を取り返す。 そのあずきの首を…音もなくだが確実に、草むらから飛び出した縄が締め付けた。

縄の締めつけは強くただでさえ必要最低限しか無さそうなあずきの細い首を一回り小さく締め付け続ける。


ヴァン!!


放たれた弾丸は首周り縄を貫通して引き剥がす。

荒くなった息でぜひぜひ酸素を吸い込み続けるあずきに、再び草むらから幾本の縄が襲う。

縄がまた首にかかるより早く、俺はあずきの体を抱き抱えその場を離れる。絶対に速度を落とさないよう強く意識しながら、少しだけ後方に視界をやる

後ろで小学生程度の背丈の、下駄を履いた子供が不吉な笑みで追いかけてきていた

「ひぃ…」

「逃げきれない。下ろして私が殺す」

本能的な恐怖で情けない声が出る俺とは反対に、あずきは冷静に囁く。だがその声はいつもよりもか細い

「そう言ってもお前…首大丈夫なのか?…」

「大丈夫締められる瞬間に妖力で守ったから」

「いやでも、喉潰れてんのか声ガラガラだぞ」

「とりあえず下ろして」

「いいけど、絶対に戦うなよ?」

「うん」

角をいくつかくねくね曲がった後、子供がいないことを確認しあずきをそっと下ろす。あずきの足が地面に着くやいなや、今度は逆にあずきが俺の体を片手で抱える。

あずきは軽々と高く跳び、民家の屋根に乗ると、今来た方向は屋根を飛び移り、飛び移る。

「ちょ、話が違う」

「君が抱えるより私がやった方が速く走れる。君一人で置いておいて、勝手に殺されても私に一銭も入らないから悪いけどこうさせてもらうよ」

「……………お…おう。わかった、ありがとう」

「ケケケケケケケケケケ」

同じ屋根の上…俺の真後ろから気味の悪い笑い声らしき声が聞こえる…

視界を極限まで広げ、微かに背後に頭を横向ける……子供は俺の真後ろに立っていた

子供は「ケケケ」と心の臓が冷えかえるような笑い声をあげながら手を伸ばし、俺の首を掴む。

温度が無くなったような冷たさが、首に伝わった刹那、あずきは瞬時に距離を詰め、子供の顔面を容赦なく殴りつけ、殴られた子供はそのまま吹きとび民家の窓を突き破っていった

「ケケケケケ。アズキ、キイテタヨリツヨイネ」

「「聞いた」ってことは、君は私を意図的に殺しに来たんだ。しかも教えた妖怪がいるということは少なくとも他にひとり以上」

「ヘェ。カシコイネ」

「いや、君が賢くないだけだよ」

子供は割れた窓から姿を出す。 子供はケラケラ笑いながらも、顔は引きつっている。子供が右手をサッと上へ高くあげると、それに対応して子供の周りにもやが現れる。もやの中から幾本の縄があずきに向かい飛び出してかた。

ヴァン!!ヴァン!!

近づく縄など気にもとめず、あずきは子供にただ狙いを定め銃弾を放つり

ひとつはかすり、ひとつは子供の上がっている右手の手のひらを撃ち抜いた。途端縄が全て幻想であったかように消えていく

「ケ…。ナメスギタ、マタアオウ、アズキ。キョウノトコロハヒトマズ……」

ヴァン!

逃げようと背を向いた子供の背をあずきの弾丸が容赦なく貫通する。倒れた子供の背中からはどばどば紫色の血が流れている

「奇襲をしかけたのは君。勝手に逃げないでね。聞かないといけないことがあるし」

汚いほふく前進で無理やり体を動かそうともがく。そんな姿を無情に3回引き金を引く。

左右の肩、左足の大腿骨頸部。床が血の池となり、それでもなお、もがき血はさらに乱雑に広まる

子供はもはや笑わず「ヒェ」と、まるで俺のような弱い声で冷えきった表情を浮かべる。

あずきはさらに銃口をしっかりと、子供の頭に突きつけ、ポケットからリボルバーを新しく取り出しわざと聞こえやすいよう耳元でハンマーを引いた。

「まず君の妖怪種は?そして君が私を殺そうとしたの?それとも誰かに命令または依頼されて私を殺そうとしたの?答えない場合、嘘をついた場合、体を打って回復させてを繰り返す」

「……………」

子供は何も言わない。あずきは呆れのため息をつきリボルバーをポケットに戻す。

「あめふらしは死んだわけだしもう帰ろうか」

「いいのか、聞かなくて?」

「この妖怪は、もう死んでいる。自殺だよ」

依頼は解決した。



「浅田さんは好きだったけどまあ死んでしまったものはしょうがないか」

「君は切り替えが早すぎると思う。妖怪の方がまだ人間的だよ」

数日の日が経ち、浅田さんのことは俺の頭から完全に消えていた。あの日の夜は流石のショックで、涙が流れそうになったものの、泣いていたって浅田さんは帰ってくることはないと考え始め、気が付けば新作アニメの方が興味がわいていた

「まあ別に特段仲良かったわけでもないしさ」

「⋯⋯まあ君いいなら、いいかな」

あずきの声がいつもの死んだような声でないことが分かった。それを分かっても、悲しみはもうわいてこない。現に今何も考えずにFPSゲームで敵の頭を撃ち抜いている



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