選別 西園寺side
今日も今日とて会議という名のすり合わせが行われている。
その理由は、あの問題児からの提案であった。
「フェンリル突破させてあげるので希望者を募ってください」
という要請があった。
「フェンリル突破させてくれるならあやかればいいんじゃないですか?」
とアリスは気軽にいってくれるが…。
「40層より先は未知の領域なんだよ…そこを探索できるというだけでどれだけ益が生まれるか…メンバーの厳選はとても重要なのだよ」
ただ、実際向こうから色々と条件をつけられている。
「最大5名ですが、5人を希望する場合は一切の情報を取得できない状態にした上で同行してフェンリルの階層を突破するだけです」
5名MAXつまり1パーティをフェンリルを突破させる場合は、フェンリル自体の攻略情報は一切分からず、本当に41層に降りる権利だけ手に入る。
もちろんこれが一番楽な道であるのは間違いない。
41層以降を探索して大きな成果をあげてそれを展開すればもしかしたら他の人間も突破出来るようになるかもしれない。
「5名突破させてもらうのが最速ですけど、後続のメンバーが詰みませんか?」
「御名答…41階層以降のアイテムについても情報が降りてきている」
「それは?」
沙月から提出された41層以降でドロップするアイテムのリストだ。
色々なアイテム名が並んでいるが特に目を引くのがダンジョン症候群の治療薬である。
「年間それなりの人数が発症しますからね…この薬の存在は大きいと思います」
「それに加えて…これね…【若返りの霊草】…」
とんでもないものをリストにいれてくれたもんだ。
「単体では効果はないそうですが寿命を伸ばす【寿命薬】とは違って若返るとなったら世界中で欲しがる人が殺到するでしょうね…」
いつも通り隠しておいてくれればよかったのに…なぜかこの件については開示してきたのには理由があるのだろう…。
「1人だけの場合はフェンリルを討伐する攻略法も含めてその人に開示します」
これがあちらの提案内容だ。
そしてその1人とはアメリカの場合はモーガン氏を指名している。
日本の場合は、自衛隊の隊長達を集めてそこから選別するそうだ。
この要求のせいで難航していると言っても良い。
日本側はそもそもこの隊長クラスの選別というのが非常に難しい。
レベルを平均的にあげている日本の自衛隊は基本的に固定パーティではなく各個人で役割をロールしている。
なのでそれぞれ取得スキルもそれによって偏っている。
すべてのスキルを一極化してエースを作るという手法は日本はとっていない。
アメリカもそこまでの一極化はしていないと思うが…ある程度のスキルを数人に一極化してる節がある。
極論としてうちから誰を出すかで揉めに揉めているのが現状という訳だ。
当然というか当たり前なのだが、常識、良識の欠けている人間が1人でもいた場合はその時点で辞退したとみなすという注意書きがついている。
これについては5人の場合のメンバーにもそれが適応される。
相手を侮った発言を行なったり良識を欠いた行動したらその場で辞退扱いにするそうだ。
「アメリカ側はどうすると思います?」
「突破の恩恵をすぐに受けたいだろうが…この条件がネックだろうね…あっちはこっちをかなり侮っている風潮がある」
国家の上の方の人間であれば大丈夫だと思うが…日本人をダンジョン後進国として見る風潮はまだまだ根強い。
そんな人間たちに同行するだけという行為に向こうの探索者が耐えられるかどうか…。
「おかげで向こうも難航してるみたいだねぇ…本音を言えば5人選んで突破させる方を選びそうだけど」
「攻略法を知ったからといって突破出来るとは限りませんからね」
攻略法や、フェンリルの攻撃パターンを提供してくれるそうだが…それで突破できるようになるかどうかは…未知数である。
だからこそ両国とも踏ん切りがつけられずにいる。
「しかも開催場所は、アメリカの超人気ダンジョンを指定しているのは何か理由がるんですかね?」
「さぁ…これも条件らしいわね…あちらでは大騒ぎだと思うわよ」
日本は人員選別という難題を突きつけられたが、アメリカ側は、開催場所という問題を突きつけられている。
本当に次から次へと難題を突きつけてくる。
つい先日もDDDからの亡命者を保護したという連絡があり両国の引き渡し要請を拒否するという始末だった。
日本側は正直それほどメリットを感じず、デメリットの方が大きいと感じすぐに折れたのだが…アメリカ側はかなり粘ったようだ。
それでも断固とした態度は崩さなかった。
まぁアメリカ側も強くは出れない。
なんせミスリルに関する武器はまだまだあちらに握られているからである。
防具に関する製造に関してはこちらでもそれなりに当てはついた状態にある。
マジックポーションとスタミナポーションによる24時間働けます状態で職人に制作をさせまくったのだ。
しかし武器に関しては納得のいく品が出来上がらなかったのだ。
明らかに沙月から提供された武器の方が性能が高く、未だに武器は沙月の武器を使用している。
今回のあちらからの要請は、前回のDDDの亡命者の件の埋め合わせという程らしい。
「それにしても組長は何を悩んでるんです~?」
と間の抜けた質問がアリーナから飛んでくる。
アキラ(写生)に執事をさせてほんとに優雅なもんである。
「確かにメンバーの選定は自衛隊側ですよね?何をそんなに頭を悩ませていらっしゃるんです?」
「それはね…総理から送られてきたリストにとんでもないのが混ざってるからだよ」
あの総理は一体何を考えているのか…。
この女を入れて何かあったらどうするのか…。
だというのに第1候補だって…?
「まぁ高潔な人物ではあるんだが…うーん…」
「誰が混ざって…ああ、彼女ですか…」
とリストを見た氷川が呟く。
そう、その彼女だ。
「身体能力、スキルについては確かに第1候補として推すのは分かる…しかし性格がねぇ…」
「彼女の性格上間違いなく反発しますよ…」
良識を欠いた行動を取ることはない…それに関しては自信を持って言える。
「常識がなぁ…悪い意味ではないんだが…」
「はい…それが問題です」
「せっかくそれなりに仲良くしているのだから事前に聞いてみようか」
彼女を一発勝負で選別の場に出す勇気も決断力も私は持ち合わせてはいない。
「北海道の時も彼女を抑えるのは大変でしたからね」
「全くだよ…とりあえず資料映像を含めて送っておくよ…事前確認ということでね」
あくまで選別ではなく事前の確認。
これがまずいというのならそれはそれで諦めの理由となる。
ただ、それ以上に彼女であれば1人で選ばれた場合に大きな成果を挙げる気がしているのも事実ではあった。
「全く、使いにくい人材だ…」
ひたすらこきつかっている私の素直な部下達を推挙できたらどれだけ楽だったかと言って見渡す。
「絶対お断りですからね」
「断固拒否です」
「ムリデース」
と何を察したのか全員が拒絶した。
「全然素直じゃない…」
と不満を口にしながら返事を待った。
◯あとがき
新章に入るにあたって新キャラが出ます。
ご期待ください。
残念ながらパーティメンバーには入りません。




