沙月side
完璧超人という言葉があるが、それを体現してるのがアキラさんだと思っていた。
もちろん、魔力値が低いとか虫が苦手とか弱点はあるが、そう言ったことではなく…。
なんでも自分で解決してしまうその力である。
魔力値が低いのであれば工夫でなんとかする発想力。
虫は苦手と言いつつも、虫の生態に詳しく何かあった時には倒せるように検討していたりと…。
「まさかあんな、あからさまな、スイッチがあったとは…」
もちろん以前、人を殺めた時にも同じようなトラウマが起きていた。
しかし、それは人を殺めてしまったという行為だったからだと思っていた。
女性に手を出せないという明確なトラウマスイッチがあるとは思ってもいなかった。
「模擬戦や、私達とやった時も大丈夫だったから完全に油断していましたね…いや、巧妙に隠していたというのが正解ですか」
どっかの馬鹿がこっちに喧嘩を売ってくる可能性がある状況であのトラウマはまずい…全員の戦力をUPさせ対策は万全にした。
それでもアキラさんに何かあったら意味がない。
いっそどこかに隔離…それはそれでアキラさんにダメージが入りそうだ。
「それで、こちらの条件は整いましたけど、そちらの覚悟はどうですか?」
私は、側にいた彼のトラウマの元凶であり彼の母親でもある京香に話しかける。
「そうね…全く絶対見つからないと思っていたのにまさかこんな早く見つけるなんてね」
「大変でしたけど人の手が介在している以上は、絶対にバレますよ」
アカネと協力してあの爆破テロの犯人を見つけ出していた。
「当時のセキュリティなんてザルですからね、案外楽でしたよ」
爆破テロをやったテロ組織の当時の情報を電子の海から探し出し主犯格とそれに指示を出していた人間まで突き止めた。
一切合切電子機器のやり取りをせずに計画していたのであればここまで早く見つける事は出来なかったが、そもそも声明を出すような連中だ。
探せばその手の情報を見つけるのは難しくなかった。
そもそもテロは起こしてしまった後は、情報への管理が甘くなる。
やってしまったテロの情報は隠す必要がないからだ。
本当は起きる前に防げれば一番なのだが、そこの情報管理は徹底していても起きた後は声明を出して自分たちのやったことを顕示していく。
そこまで難しい調査ではなかった。
まぁ全世界に無条件でアクセスが出来るアカネさんのスキルあってこそだが…。
やはりダンジョンが関係ない所では彼女のスキルが無敵かもしれない。
この手のスキル持ちが守っている情報は、国家機密などがほとんどなのでそれ以外にはほぼフリーアクセス状態なのだ。
小国であればこれだけで落とせるほどの力を持っている。
「ただ、残念ながら見てもらって分かる通り主犯格の男は爆破テロの中で死亡、指示役の男についてもダンジョン災害時に亡くなっています」
眼の前には、犯人としての証拠と合わせて死亡診断書も提示してある。
実際ダンジョン災害時にこの手の組織の活動拠点だったりは直撃を受けてるので、そういった意思が介在してる可能性はおおいにあった。
「この短期間でこの捜査能力は驚嘆を通り超えて神がかり過ぎて声も出ないわね」
「アカネさんの能力がないと無理でしたけどね、死亡診断書や現地調査はこちらで手配しましたが」
元内調の人間を派遣して調べてもらったのだが死亡していたのは間違いなかった。
その調査の中で一つ分かった事があった。
「ただ、犯人はわかりましたが…清水聖歌さんの霊に会わせてという条件は達成出来ないかもしれません」
「それは犯人が死亡しているからでしょ?それは仕方ないじゃない」
「いえ、そうではなく…彼女生きていませんか?」
「はぁ!?何を言っているの?」
「調査を進めていく課程で彼女の死亡時の状況も調べたのですが…死んだという根拠が見つけられませんでした」
「一体どういうこと?」
「簡単に言えば、あの時会場から治療の為に運び出された1人に彼女と同じ背格好、同じ血液型、同じ性別の人間がいたって事です」
そう、これはあくまでも推測で確実ではないのだが…。
あのアキラさんを育てた母親なのだ…正直爆破テロ如きで死ぬとは思えなかった。
「その女性は重度のやけどを負っていたそうですが、無事に回復して退院したそうです」
「それなら日本に帰って来るはずじゃない」
「記憶を失っていたそうです…記憶もなく身寄りもなかった女性は近くの教会に身を寄せたとされていました」
「しかし、そんな教会はどこにも存在しなかった。つまりここで彼女の足取りは表社会から完全に姿を消しました」
「それで…」
「どういう因果が巡ってこういう結果になったのかは不明ですが、彼女は裏社会においてアンノウンと呼ばれています」
偶然爆破テロに巻き込まれた女性が、記憶喪失で経歴が一切不明、なのに病院から退院後の足取りは一切掴めず数年後から裏社会で有名になることがあるのだろうか…。
「どうですか?妄想と片付けるには面白い話ではないですか?」
「全く笑えないのだけどね…それでそのアンノウンはどこにいるの?」
「全く持って面白い話なんですけど…うちにちょっかいをかけようとしているあのDDDって国にいるみたいです。しかもなんなら連れてきてくれるみたいです」
京香はゴクリと息を呑む。
「それで…この情報だけでは会ってくれませんか?」
そう京香に持ちかけたのだった。




