西園寺side
人が増えたおかげでかなり余裕が出来たというのに眼の前にある仕事の山に思考が停止する。
「おかしいわね…人員が増えて仕事に余裕が出来たはずなのだけど」
とアリーナに問いかける。
「この国の人間は、隙間を嫌うみたいですね…空いた隙間は埋めないと気がすまないのでしょうか…」
容量いっぱいだった所から減らしたらさらに注ぎ込まれてしまった。
実務面の業務はあの奴隷達が担当しているのでかなり楽になったのは確かなのだが…。
「ひどい風評被害だと言いたい所ですが…実際問題起きてますからね…国民として謝罪します」
氷川が書類片手に謝罪を口にする。
「全然心の籠ってない謝罪をありがとう」
「無駄口叩いてないで早く書類の決済を卸してくださいー」
と上司に対してとんでもない口の聞き方をしている園崎。
「あなたの待ってる書類ならいまサインしたわ。今送ったから後はよろしく」
「はぁ…テイマー募集するってだけでなんでこんなにやることがあるんですか…」
「無差別に募集する訳にはいかないからでしょうね…」
無差別にテイマーを募集しても面倒見きれないので仕方ないのだが、そもそもマシーン型とビースト型はすでに実例がいるので除外。
他の種族のテイマーを探す必要がある。
「そもそもドラゴンテイマーがいたら最優先て…」
「一応、国内に2人いるはずだけど募集してくるかどうか…」
「まぁ反響に関しては抜群ですからね、どこかでひっかかるんじゃないですかね。まぁおかげで事前調査の仕事が大量に入ってますけど」
「自衛隊や、警察にテイマースキル持ちがほとんどいないのよ」
『特攻』スキルや『テイマー』スキルはハズレスキル扱いをされているのでそもそもそのスキル持ちは、レベル上げの為に前線に出される事自体が少ない。
「遠回しに採用時に弾いてますよね」
「おっとそれは言わないお約束ですよ」
と氷川が口を挟む。
ハズレスキルという世間一般の評価が就職に影響するのは問題なのだが自衛隊や警察は、戦う必要があるのでどうしてもスキルによる差別が存在している。
「それよりも私にもお手伝いさんが欲しいんですけど」
「ダメですよ!これは私のです!」
「そのスキルはズルすぎませんか?」
アリーナはアキラを『写実』スキルで実体化して側に仕えさせている。
「くぅ私もイケメン執事を侍らせたい」
「言っとくけど部外者はNGだからね」
「わかってますよ…」
無駄話をしながらも全員手は動いているのだから仕事に慣れてきたものだ。
沙月が現れるまでは日がな一日、部屋に閉じこもって氷川の報告を受ける位の仕事しかなかったというのにどうしてこうなった。
ただでさえ彼女が関わっている仕事が全体の仕事の5割、残り5割の内の2割も彼女から波及したものである。
「彼女上手いですよね」
「ええ、隠匿してる件もあるんでしょうけど結構重要な事もこっちに発表タイミングを任せてくれているもの…っていうのは建前で全部こっちにおまかせしてしてるだけっていう見方もありますけど」
そう、基本的に彼女からの報告はすべて一方通行かつこちらに任せるという一文が添えられている。
実に賢いやり方である。
「正直彼女には色々助けられてますからね…仕事量に関しては文句はありますがあまり強くは言えません」
「私達が消費してるポーションも彼女の善意による寄付ですからね」
スタミナポーションやリフレッシュポーションはまだまだ市場に出すには数が少なく今出しても需要を満たせない為、ほぼほぼ政府内で消費してしまっている。
国内でも生産出来るようになるのはいつになるか…。
一応彼女から『薬剤製作』スキルのスクロールを卸してもらい国内で適任者を探しているのだが。
「魔力値B以上ってかなり限られるのよね~」
覚えるだけなら低魔力値でも問題ないそうだが数を作ろうとするとB以上は必要というのが彼女からの言伝である。
ちなみに他にも『防具製作』スキル、『武器製作』スキル等製作系スクロールの提供がありようやく決まったというのに先日、このスキルを持ってこられてまた探している最中である。
「アメリカへも提供してるんですよね?」
「あっちはスクロールの適正者をみつけるのが難しいからって制作物の納品を最優先してるみたいよ」
「うちもそれにしましょうよ…」
「日本の需要はまだまだ高くないから今のうちに制作者を育てた方が今後の為って判断でしょ」
「探す方の身にもなって欲しいです」
「それよりもこっちの仕事が出来る人材を入れなさいよ」
アリーナから文句が飛ぶ。
「こっちの人材の方もなかなか難しいのよ…事務能力と探索者としての能力が高くある程度の自衛が出来てかつ天涯孤独が望ましいなんて」
天涯孤独は必須条件ではないのだが、スパイや各国からの工作を考えると天涯孤独であれば家族が弱みになることはない。
特に現在扱っている情報に関しては外部にもらしてはまずい情報が多すぎる為、危険度がかなり上がっている。
「そんな危険な仕事だって知ってたら受けなかったのに…」
と園崎がぼやく。
「あの時はここまで逼迫してなかったからね」
「こんな状況だって知ってたらやりたいなんて言わなかった…軟禁されてた時期が懐かしい」
「あれからそんなに経ってないでしょうが」
「あの時の待遇がどれだけしあわ…うーん幸せと言い切れないのが辛い所ね…戻りたくはないけど休みが欲しいわ」
「私も休みが欲しいです!出来れば2か月位!」
氷川は長年の付き合いからかこういった事を言わないのだが…。
「この状況で休みなんて取ったらどうなるかわかってるんじゃない?仕事は減らないわよ」
「ぐっ!?くそぅ」
「アリーナもそれ取り上げるわよ」
「鬼…」
結局今抱えてる仕事は期限が差し迫っているものは案外少ない。
なんせ彼女の案件はこちらに任せるとなっているので最悪、実行が1年後になっても問題はないのだ。
しかし、だからといってやらなければ彼女からの案件は恐ろしい勢いで増えていく一方なのだ。
後回しにして1か月後になったらそれこそ処理しきれなくなるのが目に見えている。
各自文句を言いつつも眼の前の仕事をこなしていく。
今日もこれが私達の日常である。




